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“アベノゴリン”と消費増税

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■“アベノゴリン”とは先月8日の『朝日新聞』朝刊による造語です。
それからちょうど1ヵ月、日本時間今月8日未明のブエノスアイレスIOC総会では、自ら乗り込んだ安倍さんのプレゼンが東京招致実現に大きく貢献したとされており、期せずして、“アベノゴリン”とは正鵠を射た表現となりました。
プレゼンでは1964年10月の第1回東京オリンピックについて「開会式の情景がまざまざと蘇ります。一斉に放たれた何千という鳩。紺碧の空高く5つのジェット機が描いた五輪の輪。何もかも、わずか10歳だった私の目を見張らせるものでした」(『産経新聞』13.9.8-2:16)と回想がありましたが、それは12年3月5日配信のメルマガに既に「私は小学生でしたが、ブルーインパルスが大空に描いた五輪、兄と一緒に屋根から見た事、今でも憶えています」とあった、お馴染みのエピソード。
テレビ各局のブエノスアイレスからの中継映像には安倍さんのほか、五輪担当相を新たに兼任する方針となった下村文科相や中曽根前参院議員会長、河村選対委員長などの歴代文相・文科相経験者、文教系議員の遠藤元幹事長代理や馳国対副委員長、側近の世耕官房副長官や萩生田総裁特別補佐などが映されており、小池元総務会長が「五輪は安倍政権のチーム力で勝ち取った」(『朝日新聞』13.9.8-19:14)と賞賛したとおりの態勢でまさにあったと言えます。
しばしば指摘されるように、安倍さんの祖父の岸信介元首相は、1964年10月の第1回東京オリンピックの招致が決定した59年5月当時の首相として「招致の最高顧問」を務め、安倍さんも今次の「招致委員会の評議会最高顧問」の立場にありますが(『朝日新聞』13.8.8朝刊)、岸さんが戦後巣鴨プリズンでの幽囚の3年、安倍さんが第一次内閣退陣後雌伏の5年を経ていずれも復権、ともに総裁選での決戦投票を経験していることなどと同じように、五輪に纏わっても祖父と孫の不思議な巡り合わせが示されました。
山本沖縄・北方担当相は8日のブログ記事に「やっぱり、安倍首相には運気がある」と記していますが、その感想は多くの人が改めて噛みしめたことでしょう。
安倍さんを応援して結構長くなりますが、総裁、首相への復帰という奇蹟や衆参のねじれ解消、五輪招致成功などを果たした安倍さんはやはり、信じてついて行けば間違いない本物の政治家であるという確信はいよいよ強まります。

■その“アベノゴリン”こと第2回東京五輪はアベノミクス第3の矢「成長戦略」の新たな目玉とも、第4の矢とも位置づけられて、早くも経済再生の上での好材料と期待されています。
そして、経済再生の進捗と不可分なのが、来月1日にも正式表明されるという消費増税。
それは安倍さんの経済政策観とくに財政再建への意識に照らしても、実は十分想定できた結果でしょう。

アベノミクスの3本の矢「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」とは別に、経済政策一般については「財政出動」「財政再建(財政健全化)」「成長戦略」の3つの方針を挙げられますが、そのうち安倍さんが最重要視しているのが「成長戦略」であることは、アベノミクスにおいてそれが本丸と位置づけられていることや、輸出を重視して外需の取り込みを図るTPPの推進などに明らかでしょう。
また、小泉政権で活躍して構造改革を強力に主導した竹中元総務相を産業競争力会議の中心メンバーに迎えていることや、小泉、第一次安倍両政権を経た07年度のプライマリーバランスが、当時の円安環境による旺盛な輸出やアメリカ経済の好調を背景に、近年では最もよいマイナス6兆円にまで圧縮(明治大の飯田准教授の言う「2007年モデル」)されたのが、成長戦略の成功による税収の自然増に全くよるものであったことも、その重要な証左です。
そして、成長戦略と税収増がそのように密接に連関することは、消費増税という判断について看過できない要素であったと言えます。
すなわちそれは、安倍さんが成長戦略を最重要視することは、財政再建への意識が表裏一体としてあると言ってよいに違いないからです。
97年4月の消費増税が景気に与えたマイナスの影響が検証・懸念されたように、消費増税が実際の税収増に結びつくかは別であるとしても、成長戦略と財政再建の相関についてと、安倍さんの「財政再建への意識」については確認されねばなりません。
また、安倍さんは民主党政権期の消費増税法案の扱いに関連して「社会保障費の確保」に常に言及しており、それも財政再建と同じように、税率引き上げの判断の背景の一つとなったと考えられます。

さて、財政出動と財政再建そして成長戦略の距離感は、それぞれの財政規律との関係性によって測ることができ、それに近い順に、財政再建→成長戦略→財政出動と並べられるのは、明らかでしょう。
そしてそれらと財政規律との関係性を考えたとき、財政再建と成長戦略はそれを意識するという同類項で括れるのであり、それを損なう財政出動とは相互に峻別されることも明らかでしょう。
それは先に述べたように構造改革による成長戦略を追求した結果の「2007年モデル」(=財政の改善)や、成長戦略を最重要視する安倍さんが消費増税を判断したことに繋がりますが、それでは財政出動およびその性質からそれと同質的と言える金融緩和と、それらとは峻別される成長戦略とを混然と「三本の矢」とするアベノミクスは、どのように理解できるでしょうか。
前述の通り、第二次安倍政権によるアベノミクスの本丸は明らかに外需を意識した成長戦略なのであり、その点日本経済の中心は内需であるとの言説はアベノミクス論においてそもそも意味をなさないのは自明ですが、その成長戦略を阻むのが長く続くデフレなのであり、金融緩和と財政出動とは、成長戦略の実現可能な環境を整備するためのデフレ対策という対症療法に過ぎないのが浮かび上がってくるでしょう。
すなわち、アベノミクスについてのバラマキや放漫財政との批判や、それを単純なケインズ経済学と解するのは、アベノミクスの本質を見据えたものではないとすべきなのであり、また、安倍さんが元来いわゆる「小さな政府」志向で09年総選挙の際の民主党マニフェストをバラマキと痛烈に非難したことと、今のアベノミクスが、あらゆる点で矛盾するものでないことを理解できるでしょう。

しかし、その一方では金融緩和や財政出動の影響で、財政再建の必要性はアベノミクスの副作用的に高まっていることは事実とせざるを得ません。
すなわちアベノミクスには金融緩和と財政出動の存在によって、また先に検討したような安倍さんの意識とも連関して、財政再建を導くことが潜在的本質的にビルトインされていたと言ってよいのでしょう。
ところで一口に「財政出動」と言ってもそれは「財政再建」への意識の有無によって2つに細分できると言ってよいでしょう。
そしてそれについて好対照をなすのは、麻生副総理兼財務相と生活の党の小沢代表の経済政策ではないでしょうか。
すなわち麻生さんは首相当時の09年3月に定額給付金政策を主導し、小沢氏は09年の民主党マニフェストにおいて事業仕分けによる財源捻出を建前に子ども手当てなどのいわゆるバラマキ4Kを標榜したように、両者はともに経済政策として財政出動を重視するものの、財政再建に関して麻生さんが現在財務相としてそれを進めるのに対し、小沢氏は民主党時代に菅、野田両政権の増税志向に強く反発、09年マニフェストへの回帰を訴えて党を割っていることは両者の最も端的な相違です。
財政出動の穴埋めとしての財政再建を意識するのが言わば「真摯」であるとすれば、小沢氏の「財政再建への意識なきバラマキ」はいかにも小沢氏らしい選挙至上主義によるものかと思われますが、それが行き詰まっていることは明らかであり、財政出動や金融緩和の後には財政再建に取り組まねばならないことを直視しないのは「欺瞞」だと弾じざるを得ません。
その点、「事業仕分けによる財源捻出」も後述の「国債神話」も、同じまやかしであると言っていいのでしょう。
麻生さんは09年2月には財務相に、財政再建を重視して民主党の菅第二次改造内閣では無所属議員の立場で経済財政担当相として入閣する与謝野元官房長官を起用していますが、その際に麻生さんの見据えた税制論議こそ、民主党政権下で小沢氏が最高実力者であった鳩山内閣期には沈静したものの菅内閣期に具体的に浮上して今に至る消費増税の源流であると位置づけられます。
その点、麻生さんが現在税率引き上げの必要性を訴えていることは必然的なのであり、その経緯は今の税制論議について巨視的な視点を与えるものとなるでしょう。

さて、反増税と国際感覚のない大量の通貨供給・国債発行を同時に唱えてばかりいる「国債神話」が無責任かつ不誠実でもはや世界で通用しないことは、党で財政出動を主導する勢力と税率引き上げを主張する勢力が重なっていることに照らしても明らかだと言えます。
安倍さんは6月にまさに国際舞台であるG8直後にベルファストで会見して「経済再生と財政健全化の両立が必要だとし…消費税率の引き上げに関しては「国の信認を確保するためにも引き上げが決まっているものだ」」(ロイター、13.6.19-7:51)と発言していますが、それに示されたのは国際感覚と責任のある政治家によるリアリスティックな政治判断にほかならなかったでしょう。
ここで「国の信認」とは国債の大量発行などによる財政規律の悪化への懸念であるのは自明ですが、安倍さんは続けて「経済は生き物なので4、5、6月の数字をみて総合的に判断したいが、基本的には財政健全化に向けてしっかりと歩みを進めていきたい」と述べており、そこには、既に指摘した「安倍さんの財政再建への意識」と、ひいては「国債神話」に偏重しない姿勢が端的に表れています(9日発表の「4、5、6月」期の実質GDP改訂値は年率3.8%増と、速報値の2.6%から上方修正され、甘利経済再生担当相はそれを引き上げの「好材料」と指摘)。
元来消費増税に否定的であった竹中さんも8月31日の『朝まで生テレビ!』内で「政治のリアリズム」を説いて税率引き上げを容認する立場をとっていましたが、財政状況について、もはや近視眼的に日本一国の問題では済まない現実が直視されねばならないのでしょう。
また、党内で税調の野田元自治相や額賀元財務相といった長老重鎮が環境整備に当たっていることを看過できないのも、「政治のリアリズム」に含めてよいでしょう。

安倍さんが来年4月の消費税率引き上げの意向を固めたことで、自民党の経済政策はアベノミクス=成長戦略とデフレ対策としての財政出動に加えて財政再建が目指されることになって、全方位的になりました。
しかしそれは以前にも指摘したように、昨年7~9月にかけての党内の動きに既に兆していたと言うべきでしょう。
すなわち7月に二階総務会長代行が国土強靱化計画を発表、8月に当時総裁であった谷垣法相が消費増税法案の成立への協力を決定、9月に安倍さんが新成長戦略勉強会を勢力基盤の一つとして総裁に復帰していますが、それぞれ財政出動、財政再建、成長戦略を象徴するそれらが相次いで起こったことは、今の全方位的経済政策の素地であったと位置づけてよいのでしょう。

今回の税率引き上げの要諦は、それが元来は消費増税に慎重で成長戦略を重視する安倍さんによって判断された、という点にあるはずです。
すなわち、消費増税ありきであった民主党政権と元来が経済成長を追求してきた安倍さんとでは、財政再建と両立されねばならない成長戦略への取り組み方が違ってくるのは必然だからです。
消費増税への第二次安倍政権のスタンスが物語るのは、財政再建の高い必要性に直面する日本は国際感覚を持って「国債神話」を建前にした反増税論から厳に脱却すべきであることと、成長戦略を本質とするアベノミクスおよび財政健全化を意識する安倍さんの経済政策を、金融緩和と財政出動に惑わされて単純なケインズ的政策として牽強付会に曲解してはならないことに違いありません。


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今日は安倍首相の誕生日です

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今日9月21日は安倍さんの59歳の誕生日です。

おめでとうございます(*^_^*)

安倍さんが首相を務めるのは今が二度目ですが、第一次政権は2006年9月26日発足の翌07年8月27日退陣であり、9月21日を首相として迎えるのは初めてということになります。

そして安倍さん支持をブログでも掲げるようにしてからもう割と長くなるのに、そういえば、私がこういう記事を書くのも何気に今年が初めて。

もう一つのブログのお友達の方限定で自己紹介させてもらったときに載せた私の写真(お世辞でも「可愛いよ!」と誉めてくださった方ありがとうございました)、大学の友人の当時の恋人さんのバースデーパーティーにお呼ばれしたときに撮ってもらったものだったので、ちょうど誕生日つながりでこちらにも載せようかと思いましたが、一年半くらい前のだし、やめました(笑)
f(^_^;)


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消費増税の決断を全く支持します

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■今日、安倍さんが来年4月からの消費税率3%引き上げを正式に発表しました。

従前予想された結果であり、「闘う政治家」を自認する安倍さんらしい勇気ある決断を直ちに支持します。

以前も「2007年モデル」から指摘したように、安倍さんの重視する成長戦略は財政規律を関節に財政再建(財政健全化)に通じる性質があるのであり、「安倍さんの財政再建への意識」を等閑視して「税率引き上げ凍結」という甘い見通しがあったとすれば、それは余りにもナンセンスであったとせざるを得ません。
ところでその「財政再建への意識」は「国債神話への懐疑」と結び付きます。
国債神話がまさに虚しい「神話」にすぎないことは、いずれも財政規律を損なう金融緩和と財政出動を含むアベノミクスが推進される一方で、全く同時に、財政再建への取り組みを示す税率引き上げが「現実の政治」によって決定されたことで証明されました。
すなわち、金融緩和と財政出動をデフレ対策の対症療法として包含するアベノミクスは、それが財政再建への意識も持ち合わせる安倍さんによって敷かれているがゆえに、金融緩和と財政出動に対するフォローとしての財政再建を本質的に潜在させていた、としてよいのではないでしょうか。
さて、「国債神話への懐疑」は「経済財政政策についての国際感覚」とも関連します。
前記事でも挙げたように安倍さんは実は既に6月にベルファストでの会見で「経済再生と財政健全化の両立が必要だとし…消費税率の引き上げに関しては「国の信認を確保するためにも引き上げが決まっているものだ」」(ロイター、13.6.19-7:51)と述べています。
ここで安倍さんの言う「国の信認」とは、25日の『朝日新聞』朝刊にある「消費増税を延期すれば、金融市場は「日本政府には財政再建の意思がない。日本は借金を返さなくなるかもしれない」とみて国債を売り始め、国債価格が暴落するおそれがある」ということと直結するのは明らかでしょう。
その「おそれ」とは、日銀の黒田総裁が示したもの、つまり8月下旬に開かれた消費増税に関する集中点検会合の場で「消費税率の引き上げを先送りした場合、国債に対する信認の影響を見通すことは難しい」と述べて「予定通り消費増税を行うべきだという強い要請」をしたことを指しているのであり、安倍さんや黒田さんの「国際感覚」=「国債神話と距離を置くこと」が今次の増税の判断の背景にあることは、見て取らねばならない事実だと言えます。

記事は続けて、黒田さんが「財政再建にこだわる」ことについて「財務省出身という「出自」ばかりが理由ではない。黒田の脳裏にあるのは、半年前の就任直後に味わった「国債価格の急落」というトラウマ」(敬称略)と指摘。
それは記事によれば、今春の「国債価格の急落(長期金利は急上昇)が止まらない」局面に際して、「最後の手段」として日銀幹部から大手銀行首脳への「国債を売らないでほしい」との電話=「事実上の「圧力」」を執らざるを得なくなるまでに至ったことを指します。
金融政策の最前線において国債神話が既に通用していないことが、ここに明白でしょう。
また、黒田さんは3月に安倍さんの肝煎りで起用されましたがその際、「国際的に発信できる人がいい」(『朝日新聞』13.4.10朝刊)との評価があったことは、安倍政権の経済政策において「国際感覚」のウェートが大きいことの示唆であると言えます。
そしてそれは「日本の財政への信認が失われて、国債が売られる―という事態は最大のリスク」(既出25日『朝日新聞』)であるとの認識に至ることにほかなりません。
記事は「日銀が特におそれるのは、自分たちにコントロールできない「外部要因」で、国債価格が下落(金利は上昇)すること」であると指摘していますが、上述のように、国内で賄われている国債については日銀による銀行への「圧力」でかろうじて「コントロール」できたのであり、従って、ここで「外部要因」には、海外からの対日投資による国債買い入れが含まれると考えてよいのでしょう。

そうだとすれば、黒田日銀が「外部要因」による国債暴落を「特におそれる」ことはまた、安倍政権の意向でもあるかと考えられます。
それはなぜなら、安倍さんこそが対日投資呼び込みのトップセールスに立っているからであり、それを最も端的に示しているのが、17日に都内で開かれた米金融大手のセミナーに寄せて「明らかに今の日本は買いだ」とアピールし「今が、チャンスです」と繰り返したこと(『朝日新聞』13.9.18-00:52)、あるいは、訪米中の26日(日本時間)のニューヨーク証券取引所での講演で、「投資を喚起するための大胆な減税」や成長戦略としての「規制緩和の手を緩めない方針」を宣言した上で訴えた名言「Buy my Abenomics」(『産経新聞』13.9.26-7:55)などであると位置づけてよいのは間違いありません。
そしてそのように安倍さんが海外に対日投資を呼び掛けることの前提的環境醸成であるのが、消費税率の引き上げという財政再建に取り組む姿勢の対外的なアピールによって「国の信認」を堅持して「国債価格が下落」するのを阻止することであるのもまた、もはや明らかであるはずです。
つまり「日本国債の多くは国内で保有されているから価格暴落を心配する必要はない」との視野狭窄な言説が、本質的に海外の対日投資を重視するアベノミクス下ではそもそも意味をなさないことは明白で、安倍政権においては「国際感覚」が「国債神話」を完全に凌駕、駆逐していることが直視されねばなりません。
黒田さんも「いったん国債の信認がなくなれば、いまやっている日銀の買い入れは意味がなくなる。そうなれば2%の物価上昇目標の達成もデフレ脱却もできない」(既出25日『朝日新聞』)と語っているとされますが、それに従えば、「デフレ脱却」を唱えながら国債神話に固執するのは、致命的な矛盾以外の何物でもないということが浮き彫りになります。
そしてその矛盾を生じさせているのが、国際感覚の欠落というナンセンスぶりなのでしょう。
なお、黒田さんは実際の税率引き上げに対しては「増税時に景気が悪化する見通しであれば、追加緩和する方針を示唆」(『朝日新聞』13.9.4朝刊)しており、日銀として国債の買いオペに及ぶ可能性もありますが、それはあくまでも「景気への悪影響を和らげ…増税しやすい環境をつくる」ための当座の対症療法であり、安倍政権の一般的な経済政策とは結び付かないことは確認しておきます。

安倍さんはニューヨーク証券取引所での講演では規制緩和について「規制改革こそがすべての突破口になる。日本を米国のようにベンチャー精神のあふれる起業大国にしたい」、TPPについて「年内の交渉妥結に向けて日米でリードしなければならない。TPPをつくるのは歴史の必然だ」とそれぞれ語っていますが(『日経新聞』13.9.26-5:03)、それらに海外の対日投資の重視ということも併せた、一連のアベノミクスの本質を支持・理解できないのであれば、アベノミクスに無理して参加する必要はないのです。
今次の税率引き上げも、そのようなアベノミクスの潜在的な、しかし必然的な要素によると言えるのであり、安倍さんが党総裁に復帰してから一年を過ぎた今、生活の党の小沢代表のようにバラマキと反増税を主張して徐々に「実際の政治」から乖離してきた人が、アベノミクスというバスから降りるべき頃合いとなったということなのでしょう。

■さて、アベノミクスの本質については消費増税を透して以上のように窺えますが、規制緩和やTPP推進、海外の対日投資促進などと密接に関係するのが、安倍さん肝煎りの法人減税。
法人減税は消費増税による経済へのダメージの軽減化や、あるいは安倍さんの上記演説にある「日本を米国のようにベンチャー精神のあふれる起業大国にし」ようという成長戦略として構想されているものですが、しかし、その本質は今や、安倍さんの政権内での主導権に関わる政局的な性質を帯びていると見るべきでしょう。
それはなぜなら、将来の法人減税の先鞭とも見られている復興特別法人税の廃止について、甘利経済再生担当相や石破幹事長、官邸に今井、柳瀬両首相秘書官を輩出している経産省が推進、支持する一方、執行部の高村副総裁を含む党税調や、岩城元参院政審会長などの福島県選出議員の一部、連立与党の公明党などが否定的という状況があり、その成否は安倍さんの威信ひいては求心力に直結するものと考えられるからです。
すなわち、世論の半数が消費増税=財政再建の必要性を認めている中では、政権の体力に関わるのは巷説に言う消費増税(政府・与党とも推進)ではなくむしろ法人減税(政府と与党に温度差)を巡る問題である、と言うべきなのでしょう。
なお、麻生副総理兼財務相以下の財務省は元来法人減税に慎重ですが、しかし現状、復興分の廃止については消極的ながら協力的なのは、将来の法人減税阻止に向けた先制的譲歩であるかとも考えられ、安倍政権の経済政策の本丸たる成長戦略の柱として今後課題となる法人減税に関して、安倍さんと麻生さんが盟友関係にあるなか、官邸と財務省の関係はどう移ろっていくでしょうか。
また、TPPや法人減税の推進で安倍官邸と利害が一致している経産省は、財務省と主導権争いの関係にあるともされますが、その後ろ盾の甘利さんとともに、政権内での影響力を高めていくことになるのでしょう。
そしてその経産省のトップの茂木経産相は額賀派の将来の首相候補であると言え、経産省が重視されることは党内力学にも関連していくのかもしれません。

さて、党内における安倍さんの主導権が26日の『朝日新聞』朝刊に「安倍総裁敵なし」とある状況下、復興法人税廃止の問題では税調会長の野田元自治相が25日に「容認を示唆」し翌26日には税調で「取り扱いを野田氏に一任する方針」が決定(時事通信社、13.9.26-12:15)、高村さんも26日に廃止を前提に、デフレ脱却のため復興法人税の「廃止分が賃上げに回る」(時事通信社、13.9.26-10:44)ようにすることを経団連の米倉会長に要請しており、税調の歩み寄りは早くに兆していたと言えます。
また、福島出身で当初閣僚ながら廃止に反対する意見書(26日に木村首相補佐官に提出)に連名されていて「閣内不一致」とも取り沙汰された根本復興相と森少子化担当相が27日、「廃止そのものへの賛否は明言しなかった」ものの意見書に「了解なく名前を記載されたとして議員団側に抗議」している(時事通信社、13.9.27-13:12)のも、政府の強い意志の徹底と、与党に対する優位を暗示しているものと見てよいのでしょう。
安倍さんが税制問題で税調幹部から譲歩を引き出したことは、TPP推進で農水系議員から西川元副幹事長や江藤農水副大臣を通じて慎重派を懐柔したことと同様、巧みな党操縦とひいては官邸の主導権の確保に成功していることの証左であるとしてよいでしょう。

安倍さんの祖父の岸元首相は日米安保改定に先んじて警職法の改正に臨んでいるものの、野党および党内非主流派の反対に遭って断念、それは政権に少なからぬダメージを与えました。
岸さんはその局面を、総裁公選を前倒し、それを制することで凌いでいますが、そこで政権の体力を消費したことは『岸信介』(原彬久、岩波新書)によれば「岸の党内指導力を決定的なまでに損なってしまった」とされ、岸さんは実際その後の安保改定で、河野元農相(河野元総裁の実父)や三木元首相などによる党内の「反岸」抑え込みのための新条約調印直後の解散を断念、『岸信介と保守暗闘』(戸川猪佐武、講談社)によると「河野一郎、三木武夫は斬って捨てるべきだ」との言葉を残して改憲実現前の退陣に至っています。
「党内指導力」の観点からそれに鑑みるとき、岸さんの警職法問題に相当するのが、改憲を最大目標として共有する安倍さんの法人減税問題だと位置づけて見ていけるのかもしれません。


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副大臣・政務官人事について

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■30日、第二次安倍内閣の新たな副大臣・政務官人事が決定、発表されました。
その陣容は以下の通り。
*敬称略、括弧内は(当選回数/出身選挙区/所属派閥・グループ)の順で、「公明」は公明党、「再」は再任。

■副大臣
【復興】谷公一(4/兵庫5/二、再)、浜田晶良(参2/比例/公明)
【内閣府】後藤田正純(5/徳島3/無)、西村康稔(4/兵庫9/町、再)
【内閣府兼復興】岡田広(参3/茨城/無)
【総務】上川陽子(4/静岡1/岸)
【総務兼内閣府】関口昌一(参3/埼玉/額)
【法務】奥野信亮(3/奈良3/町)
【外務】岸信夫(1[参2]/山口2/町)、三ツ矢憲生(4/三重5/谷)
【財務】古川禎久(4/宮崎3/無)
【財務兼復興】愛知治郎(参3/宮城/無)
【文科】櫻田義孝(5/千葉8/額)、西川京子(4/比例九州/麻)
【厚労】佐藤茂樹(7/大阪3/公明)、土屋品子(5/埼玉13/無)
【農水】江藤拓(4/宮崎2/無、再)、吉川貴盛(4/北海道2/額)
【経産】松島みどり(4/東京14/町)
【経産兼内閣府】赤羽一嘉(6/兵庫2/公明)
【国交】高木毅(5/福井3/町)、野上浩太郎(参2/富山/町)
【環境】北川知克(4/大阪12/大)
【環境兼内閣府】井上信治(4/東京25/麻、再)
【防衛】武田良太(4/福岡11/無)

■政務官
【内閣府兼復興】亀岡偉民(2/福島1/町、再)、小泉進次郎(2/神奈川11/無)、福岡資麿(参1[衆1]/佐賀/額)
【総務】松本文明(2/比例東京[東京7]/町)、藤川政人(参1/愛知/麻)
【総務兼内閣府】伊藤忠彦(2/愛知8/二)
【法務】平口洋(2/広島2/額)
【外務】石原宏高(2/東京3/石)、木原誠二(2/東京20/岸)、牧野京夫(参2/静岡/額)
【財務】葉梨康弘(3/茨城3/岸)、山本博司(参2/比例/公明)
【文科】冨岡勉(2/長崎1/石)、上野通子(参1/栃木/無)
【厚労】高鳥修一(2/新潟6/町)、赤石清美(参1/比例/町)
【農水】小里泰弘(3/鹿児島4/谷)、横山信一(参1/比例/公明)
【経産】田中良生(2/埼玉15/無)
【経産兼内閣府】磯崎仁彦(参1/香川/無)
【国交】土井亨(2/宮城1/町)、中原八一(参1/新潟/二)
【国交兼復興】坂井学(2/神奈川5/無、再)
【環境】牧原秀樹(2/比例北関東[埼玉5]/無)
【環境兼内閣府】浮島智子(1[参1]/比例近畿/公明)
【防衛】木原稔(2/熊本1/額)、若宮健嗣(2/東京5/額)

■9月は安倍さんの総裁復帰から一年、当初取り沙汰された内閣改造と党役員人事が見送られたなか、副大臣・政務官人事では再任は副大臣で4人、政務官で2人のみであり、こちらの異動は大規模なものとなりました。
今回の人事では、当選5回以下の所属議員に対する希望役職の事前調査が行われ、それを石破幹事長が「とりまとめ」て菅官房長官が「最終調整する形」がとられていますが、これは安倍官邸と「党内派閥との微妙な関係」の表れでもあり(『朝日新聞』13.10.1朝刊)、すなわち党に対する「官邸の主導権」志向という、安倍官邸の性格に関わる本質的な問題が指摘できるでしょう。
安倍さんは官房長官や同副長官として小泉政権の中枢にあって、郵政民営化などの構造改革を巡って当時の小泉官邸が党内の抵抗勢力を制するのに参画しているほか、現在首相として、米国のホワイトハウスに倣って官邸の機能強化に直結する日本版NSC構想に取り組んでいるように、首相の主導権、党に対する官邸の優位を強く志向していることが鮮明ですが、今回の副大臣・政務官人事についても、党内派閥との関係において、それが示されたと言えます。
「官邸の主導権」は第二次安倍政権に特徴的なテーマであり、様々な動きを、その観点から見ることが出来るようになるのでしょう。
民主党政権において、今の生活の党の小沢代表が党で存在感を持って強い遠心力となったことは、菅、野田両内閣期の官邸の弱体化・相対化に直結しましたが、今の自民党政権では安倍さんに批判的な加藤、古賀両元幹事長といった親中リベラルの実力者が引退して不在であり、安倍さんが「党に対する官邸の優位」の確立を窺いやすい環境があるということは言ってよいのではないでしょうか。

さて、では今回の人事のうち、安倍さんの主導権が反映されていることを窺うには、上掲陣容の中で安倍さんに近い顔触れが少なくないことにまず着眼されるはずでしょう。
そしてそれは例えば、西村内閣府副大臣、岸外務副大臣、古川財務副大臣、江藤農水副大臣、亀岡内閣府政務官、高鳥厚労政務官、土井国交政務官などを挙げられるはずです。
そのうち、西村さんは旧通産省出身であり、成長戦略を重視してTPP交渉でも実務を担当しているほか「骨太の方針」の取りまとめに奔走しており、今回再任されたのも、それらの活躍が評価された結果に違いありません。
また、09年総裁選には安倍さんの支持も受けて出馬しているように保守派であり、その中では保守の理念の他に経済政策までを共有する安倍さんの直系であると言え、安倍さんが西村さんを要職に再任したことは、保守派の次世代リーダーの育成でもあったと考えられるでしょう。
出身の旧通産省の後身の経産省が官邸で影響力を高めていることは、西村さんの台頭にどう関わっていくでしょうか。
西村さんは総裁選出馬の際に町村派を退会、谷垣体制期には当時政調会長であった石破さんの下で同副会長や経産部会長を務めていて、12年総裁選の際には安倍さんと石破さんのどちらを支持するか揺れ動いた様子がブログ記事から窺われますが、現在は既に町村派にも復帰しており、保守派として安倍さんに近い位置にいて信頼を得ていると言ってよいのではないでしょうか。
なお、西村さんの岳父の吹田元自治相は安倍さんの祖父の岸元首相の選挙地盤の後継者であることから、岸さんから見て、西村さんは政治的な孫と言ってよいかもしれません。

安倍さんの実弟である岸信夫さんは今回外務副大臣とされていますが、岸さんはそれまで党政調で外交部会長を務めており(後任は保守派の城内衆院議員)、党から政府に移って、引き続き外交に当たることになったことになります。
官邸=安倍さんに近い岸さんの外務副大臣起用は、谷内内閣官房参与などをブレーンとする安倍さんの官邸主導外交への意欲の反映にほかならないでしょう。
なお、岸信介さんの実弟の佐藤元首相は第二次岸内閣に蔵相として入閣、日米新安保条約が1960年6月19日午前0時に自然承認を迎えるときには、デモ隊が包囲する首相官邸にただ一人最後まで残って岸さんとともにあった(『岸信介』原彬久、岩波新書)といいますが、岸信夫さんも佐藤さんのように兄首相を強く支えることになるのでしょう。
また、高鳥さんも政調の厚労副部会長から厚労政務官へと、岸さんと同じように同一分野で党から政府に異動しており、安倍さんの側近として、順当に起用されたということかもしれません。

農水副大臣に再任された江藤さんについては、安倍さんがTPPを強く推進していることとの関連を指摘せねばならないでしょう。
3月15日11:26配信の『産経新聞』によれば、党内の慎重論を押し切って安倍さんがTPP交渉参加を表明した背後には「2人のキーマン」すなわち、この江藤さんと西川元農水副大臣の存在があったといいます。
当初TPP反対の中心であった江藤さんは、しかしそれによれば2月25日に安倍さんから官邸へ密かに招かれて「もう新たな局面に入ったんだ」と説得され、「農水族やJAへの根回しという「密命」を受け入れた」のだとされます。
江藤さんの再任がTPPに関するそうした経緯と不可分なのは明らかだと思われますが、それは党に対する「官邸の主導権」に関するものそのものだったにほかなりません。
なおTPPについて、これまで党政調で農林部会長を務めていた小里農水政務官は慎重派ですが、3日の『朝日新聞』朝刊が報じるとおり、その後任に抜擢された斎藤健衆院議員は経産省出身で「「小泉改革」にも携わ」るなど「規制改革志向が強いとされ」、TPP推進を「手段」とする農業改革を提唱。
この「異例の起用」は農協改革を目指す官邸の菅さんの意向によるものだとされますが、それが江藤さんの農水副大臣再任と併せて、TPP推進や農業改革に官邸が主導的に取り組もうという考えを示すものにほかならないのは明らかでしょう。
それについてはまた、安倍さんや菅さんと考えの近い経産省が官邸で影響力を持っていることとの関連も指摘したいと思います。

そして「官邸の主導権」への意識は、財務副大臣に安倍さん側近の古川さんが起用されたことから、財務省に関しても見て取れるかもしれません。
安倍さんは1日、経済再生の前提たる「財政の信認」保持などのため消費増税を正式に発表、それについては財務省と利害が一致しているものの、税制に関してはむしろ法人減税に強い意欲があり、それに慎重な財務省との関係は今後、緊張感を持ったものとなっていくと考えられます。
2日の『朝日新聞』朝刊によれば、安倍さんと菅さんは復興法人税の廃止について麻生副総理兼財務相と「歩調を合わせ」て財務省の「力を減退させようと腐心」したとされ、同時に、財務省が「連携を図る」(『産経新聞』13.9.24-00:12)党税調からもまた妥協を引き出していますが、その直後に安倍さんが側近を財務省に副大臣として送り込んだことは、同省に睨みを利かせて今後の官邸の優位を図るものであったと考えてよいのでしょう。
民主党政権期に大きな力を持った財務省に対して主導的になることを安倍さんが強く意識しているのは明らかであり、古川さんの前任が、麻生さん側近で当選8回の「大物の副大臣」(『日経新聞』12.12.27-14:46)として起用された山口元首相補佐官と、麻生内閣で閣僚だった小渕元少子化担当相だったことや、そもそも首相経験者の麻生さんを副総理を兼ねて大臣に充てて重量級に布陣していること自体がその表れだと言えます。
その点、古川さんの動向から窺われるのは、財務省に安倍さんや麻生さんの官邸の影響力を及ぼそうとする路線が引き続きとられていることと、しかし副大臣が安倍さんの直接の側近に交代されたことは、「消費増税をカードに財務省と党税調を屈服させ」ようという「もくろみ」に「まずは奏功した」(既出『朝日新聞』)安倍さんが、財務省への影響力をいよいよ強めようとしているのを示唆しているかということ、の二点ではないでしょうか。

以上の各副大臣・政務官を含む上掲7人はいずれも安倍さん側近ですが、今回の人事で党内各派閥が輩出した副大臣・政務官は最大派閥の町村派が最多の11人、第二派閥の額賀派が7~8人(各議員の所属派閥については厳密にカウントできない場合があります)、第三派閥の岸田派が3~4人であり、安倍側近に数えられる7人とは決して少なくない規模であると言ってよいのではないでしょうか。
また、安倍さんの出身の町村派の動向は、安倍さんの党内勢力基盤に関わる要素の一つとして看過できませんが、それについては、1日に発表された参院役員人事に見るべきものがあります。
すなわち、議員会長と三役、それに三役の代行・代理格の計8ポストについて、町村派が三役の国対と政審を含む半数の4ポストを輩出するようになったことには、これまでとの変化として注目されるでしょう。
それについては、字数制限のため、他の副大臣・政務官と併せて次記事以降でも触れますが、上述の法人減税を始め、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使解禁(=日米安保体制の高度化)、そして15年9月予定の総裁選での再選という政策課題や政治日程を見通せば、党内や公明党、財務省などの各勢力に対する「安倍官邸の主導権」は、それらの成否に直結するものとして、また「安倍官邸の意向」を体系的に示すものとして、大いに重要な視座として意識されるはずです。


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参院幹部人事について

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■7月の参院選の後、溝手議員会長と脇幹事長の就任だけが決まっていた党の参院役員人事について、1日にその他の顔触れが明らかになりました。
*敬称略、括弧内は(当選回数/出身選挙区/所属派閥)の順で、「再」は再任。

【議員会長】溝手顕正(5/広島/岸)
【幹事長】脇雅史(3/比例/額)
【幹事長代行】吉田博美(3/長野/額)
【国対委員長】伊達忠一(3/北海道/町)
【政審会長】山谷えり子(2[衆1]/比例/町)
【幹事長代理】山本順三(2/愛媛/町)
【国対委員長代理】岡田直樹(2/石川/町)
【政審会長代理】宮澤洋一(1[衆3]/広島/岸、再)

■以上のうち、脇さんの後任となる伊達国対委員長の就任については7月31日に内定していましたが、今回正式に発表となりました。
その伊達さんは町村派の所属であり、脇さんが額賀派であることと、参院三役(幹事長、国対委員長、政審会長)はこれまで11年10月以来2年にわたって三大派閥(町村、額賀、岸田各派)が分割してきたことに鑑みて、伊達さんと同じ町村派の山谷政審会長の就任は大いに注目に値するでしょう。
参院では、11年10月に、当時執行部を率いていた中曽根前議員会長と、前年8月の議員会長選挙で谷川元幹事長を擁して敗れた町村派の一部と古賀(当時、今の岸田派)、額賀両派が人事で対立、幹事長に麻生派(=非三派)の鴻池元防災担当相を充てることや当時政審会長だった山本沖縄・北方担当相を再任することなどの人事案を通せなかった中曽根さんが妥協を余儀なくされて、幹事長に岸田派の溝手さん、政審会長に町村派の岩城元政審会長がそれぞれ起用され、それに前年から国対委員長であった額賀派の脇さんを併せて、三派がバランスを取って三役を分割する慣例が始まりました。
ところで、その10年8月の議員会長選挙で中曽根さんを支持したグループを後見したのが安倍さんであることから、安倍さんと参院政局の関わりは浅くないと言えますが、翌12年10月の参院人事で三役では政審会長に交代があって岩城さんの後任に安倍さん側近の世耕官房副長官が充てられたのは、前月9月に安倍さんが総裁に復帰したことの影響であったと考えられ、そこには、参院における安倍さんの影響力の程度の変遷を見ることができると言えます。
すなわち、10年8月には自ら会長を務める創生「日本」の会長代行である中曽根さんの他に側近の山本さんや世耕さんといった保守派がそれぞれ議員会長、政審会長、幹事長代理の地位にあったことで参院における安倍さんの存在感は高まったはずであり、それはまた、保守派が当時の菅内閣の閣僚だった仙谷元官房長官や馬淵元国交相、前原元代表の追及に成功したことの素地であったと言ってよいでしょう。
対して、11年10月には中曽根さんが参院執行部で主導権を後退させ、逆に三派が伸長していますが、三派は前月9月の党の人事で、当時総裁として派閥勢力と距離を置いた党運営をしていた谷垣法相への圧迫も強めて総務会長、政調会長、国対委員長を分割しているのであり、それが翌12年9月の総裁選で当時幹事長だった石原環境相が派閥勢力に擁立されて執行部から出馬したことの伏線だったと言える点で、一連の三派の伸長と、総裁選で安倍さんが派閥勢力と距離を置いて立候補して石原さんと争ったことは同一の流れの上で理解できるはずです。
そしてその総裁選を安倍さんが制したことは上述通り、世耕さんが政審会長として参院執行部に参画したことの背景であると言えるはずであり、それは総裁となった安倍さんが参院への影響力の確保を図ったものに違いなかったでしょう。

安倍さんは総裁復帰後、鴨下元環境相や浜田幹事長代理を党の要職に起用して石破幹事長との協調を意識しているほか、内閣には石原さんや林農水相という総裁選対立候補や、谷垣さんのような親中派、岸田外相や茂木経産相といった大派閥の会長や実力者も入閣させるなど、党内各勢力に配慮した言わば「低姿勢」の人事を行っていますが、参院に関して、上述の世耕さんの政審会長起用が側近を執行部に送り込んだものであった一方で、世耕さんは町村派所属でもあるのであり、それは三派が三役に割拠してバランスを取る慣例・枠組みに従ったものでもあったことも「低姿勢」の一環だったと言ってよいかもしれません。
第二次安倍内閣の発足で官房副長官に移った世耕さんの後任の橋本前政審会長も町村派所属であり、自民党の政権復帰後もその慣例は継続していますが、今回の人事でそれが見られなくなり、かつ、総裁派閥たる町村派出身の幹部が増えて三派のバランスが崩れたことは、TPP推進や税制問題、副大臣・政務官、党政調各部会長の人事を通じて党に対する「官邸主導」が強まる中において、注目されるはずです。
安倍官邸は、7月の議員会長選挙についても「官邸が関わることへ意欲を示」(『朝日新聞』12.7.20朝刊)しており、「官邸の主導権」を強く志向する安倍さんにとって参院もその対象であることは明らかだと言え、それが表れたのが山谷さんの起用だったと考えるべきでしょう。
参院選後に町村派が山崎議長、岸田派が議員会長に溝手さん、額賀派が幹事長に脇さんをそれぞれ輩出したことは、三派がバランスを取ったものであると見ることができますが、しかし議長は党のポストではない上に名誉職であり、伊達さんが国対委員長となって町村派が議長とは別に三役の一角を占めたことがむしろ慣例に基づいた順当な人事であったと言ってよいでしょう(7月25日8時43分配信の『産経新聞』によれば、当初国対委員長の候補だったのは岩城さんであり、町村派が国対委員長を押さえるのは既定路線だったと考えられます)。
町村派が国対委員長、額賀派が幹事長を押さえるとすれば政審会長には「慣例」に基づいて岸田派から例えば当選3回の松山前外務副大臣が充てられることも考えられたはずですが、しかし実際には、安倍さんに近い保守派として第一次内閣では首相補佐官を務めて教育再生に、党では拉致問題に当たってきた山谷さんが起用されたのはやはり、参院に対する「官邸主導」の結果だったと考えてよいのでしょう。

また、「官邸主導」という視点で見たとき、伊達さんと山谷さんに山本幹事長代理と岡田国対委員長代理を併せて、参院幹部8ポストの半数を町村派が押さえたことはどうでしょうか。
町村派は昨年の総裁選では安倍さんと町村元官房長官のそれぞれを支持するグループに割れましたが、安倍さんの当選で最大派閥かつ総裁派閥となり、派閥の中では順当に安倍さんに近い勢力であると見なすことができます。
それは先の副大臣・政務官人事でそれまでより2人多い最大の11人が起用されていることにも窺われますが、参院で町村派所属の幹部が増えたことも併せて、総裁派閥たる町村派が存在感を持っていることは安倍さんの党内勢力基盤の安定に資しているはずです。
「町村派の中堅議員」が、1日に96人を集めて開かれた石破幹事長の率いる「さわらび会」の会合について「派閥活動」であるとして「不快感をあらわに」した(『産経新聞』13.10.9-7:55)ことは、その一端を示唆していると言ってよいでしょう。
なお数字を挙げれば、参院選を挟んだ三派の参院議員はそれぞれ、町村派が20人強から30人強へ拡大した一方、額賀派が20人程度、岸田派が10人程度のままで大きく変わっておらず、そのことからは、参院幹部ポストについて、これまでは派閥の規模に関わらず三派が分割するバランスが優先されていたこと、逆に、8つの幹部ポスト中で町村派が4、額賀、岸田両派が2ずつを押さえた今回の人事では派閥の規模がポスト配分にある程度比例するようになったこと、の二点は指摘できるでしょう。

参院三役における三派のバランスという「慣例」が崩れたのは、派閥勢力が総裁権力を圧迫・相対化するという谷垣体制期に顕著だった党内力学が変化していることを思わせるものであると言え、それは安倍政権の特色たる「官邸主導」を党に対して確立しうる条件的環境であると言えます。
また、そのバランスが崩れた一方で町村派が伸長したことは、11年10月以来の「三派体制」が改まってポスト配分が派閥の規模に比例するように「正常化」したものであると同時に、その町村派が安倍さんの出身派閥であることを考えれば、それも結果的に、「官邸主導」の一助となるものでもあるかもしれません。
上述のように参院での慣例尊重や党内各勢力への配慮を「低姿勢」だとすれば、「官邸主導」の推進は政権が言わば「高姿勢」に徐々に転じていくこととなりますが、党における勢力基盤の一つである町村派を順当に重視することは、それを穏当に進めることでもあると言えるでしょうか。

10年8月の議員会長選挙は、その際に安倍さんが町村派の方針に反して中曽根さんの脱派閥的な動きを支持したのが、12年9月の総裁選で町村派の対応が割れて安倍さんが派閥勢力と距離を置いた対応をとったことの予兆であったという点で非常に重要な局面であったと言えます。
そして、その議員会長選挙で敗れた派閥勢力が巻き返した11年10月の参院役員人事で生じた「三派体制」が、安倍さんが総裁次いで首相に復帰した今年13年10月に解消されたことは、10年8月以来の参院政局が一つの区切りを迎えたことを示していると言えるでしょう。

■さて、参院に対する「官邸主導」の反映と言える山谷さんは政審会長として政調会長代理を兼ねていますが、都度指摘しているとおり安倍さんが重視していると見られる政調については、今回の人事で政調会長代理が1人増員されて5人体制とされたことに注目されます。
すなわち、衆院から専任の塩崎、棚橋、平沢各政調会長代理のほか、参院の政審から会長の山谷さんと同代理の宮澤さんが兼任の政調会長代理となっていることは、安倍さんが総裁に復帰してからの一連の「政調重視」の流れの上に位置づけられるでしょう。
政調を巡っては12年9月29日の『朝日新聞』朝刊によって、昨年9月に安倍さんが総裁に復帰した直後の人事で、石破さんとの間に角逐のあったことが知られますが、安倍さんはその際、盟友の甘利経済再生担当相を重量級の政調会長としており、政調における主導権の確保に成功していると言えます。
また、政権復帰後には側近の高市政調会長を甘利さんの後任としていますが、高市さんが例えばTPP推進で党内の慎重意見を押し切るのに尽力したのなどはしばしば「政高党低」を象徴するものとされるのであり、今の政調の体制は党に対する官邸の主導権の源泉の一つとなっていると言ってよいでしょう。
すなわち、「官邸主導」を志向する第二次安倍政権においては官邸が党に食い込んで、政調が党よりむしろ官邸に直結するライン上にあると言えるのであり、側近の高市さんや塩崎さんの存在が、その権力構造を支えているのは明らかです。
政調会長代理は、安倍さんの総裁復帰後には世耕さんのほか中谷特命担当副幹事長と衛藤首相補佐官の3人、自民党の政権復帰後には塩崎さん棚橋さん橋本さん宮澤さんの4人、そして今回の5人と増員が続いており、この政調の拡充からも、安倍さんによる政調重視を指摘できるでしょう。
今回新たに代理となった平沢さんを含めて、政調幹部には石破さんの側近が少ないことや、TPP推進で官邸と連携する西川政調副会長が新たに政調入りしたことも併せて注目したいと思います。

また、参院政審の幹部が党政調に参加していることは、一連の政局に見られたように元来独自性の強かった参院を、政調を通じて官邸の影響下に置こうとするものであると考えられるでしょうか。
なお、安倍さんの総裁復帰直後の体制では政審会長の世耕さんの兼職が政調会長代理で、政審会長代理の宮澤さんが兼ねたのは政調副会長だったのに対し、自民党の政権復帰後には政審会長の橋本さんだけでなく、同代理に留任した宮澤さんも兼職が昇格して政調会長代理となったのは、党と参院の連携が高度化したものであると言え、安倍さんが参院を重視していることの表れだったと言えるかもしれません。


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創生「日本」総会が開催されます

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+--【安倍晋三事務所より連絡です。】--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+

皆さんこんにちは!
こちらは安倍晋三事務所です。
ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘
連日多くのご声援ありがとうございます。

本日は安倍総理のテレビ番組出演のお知らせです。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
番組:『ザ・インタビュー~トップランナーの肖像~』
(BS朝日放送)

日時:11月9日(土)
   午後6時00分~

出演:安倍晋三
インタビュアー:末延吉正氏
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

末延吉正さんが「人間安倍晋三」に鋭くせまる!

皆様是非ご覧になって下さい。

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+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+(2013.10.23[Wed] 20:55)

▼安倍晋三事務所携帯版HP
http://www.s-abe.jp/

■安倍さんが会長を務める議連、創生「日本」の総会が、所属議員を集めて29日に開催されます。
それを報じる17日21:43配信の『産経新聞』によれば、創生「日本」の会員数は143人、総会開催は3月5日以来8ヵ月ぶりであるとされますが、同記事はまた、1日に勉強会「さわらび会」に96人を集めた石破幹事長に「対抗し保守系議員の結束を図る狙いがある」ことを指摘しています。

安倍さんと石破さんは昨年9月の総裁選で安全保障をテーマに合同勉強会を開いたように、集団的自衛権の行使解禁を見据えた憲法改正などの政策的な主張に一致点があるものの、総裁選では決戦投票を争った経緯があり、その後の党内では両者の協調と牽制が見られることがありました。
すなわち安倍さんの総裁復帰後に石破さんが幹事長に起用された一方、腹心の菅官房長官が同代行に充てられ、石破側近の鴨下元環境相と浜田幹事長代理がそれぞれ幹事長代理と国対委員長に、安倍さんの出身の町村派の木村首相補佐官と高木国交副大臣がそれぞれ筆頭副幹事長と国対筆頭副委員長に就いた「たすき掛け」人事は、両者のそういう関係性が端的に現れたものだったと言えるでしょう。
また、12年9月29日の『朝日新聞』朝刊によって知られるとおり、石破さんが党の政策立案に影響力を持とうと、政調会長に安倍側近ながら当選回数の少ない加藤官房副長官(当時3選)を敢えて推したのに対して、安倍さんが実力者の甘利経済再生担当相(当時9選)を充てたのは、政調を巡る主導権争いがあったことにほかなりません。
総務会長に当初名前の挙がったのが、石破さんがかつて所属していたものの退会した額賀派会長の額賀元財務相だったのは、幹事長となった石破さんを安倍さんが牽制しようとするものだったと考えられるとすれば、それが実現しなかったのは、石破さんが敬遠したためかとも考えられるでしょう。

では、そのように始まった両者の関係はその後どう推移したでしょうか。
昨年12月の総選挙に自民党が勝利、第二次安倍政権が発足すると石破さんは幹事長に留任していますが、石破さんに近い閣僚は例えば総裁選での推薦人では田村厚労相のみであり、党役員では鴨下さんと浜田さんがそれぞれの役職(幹事長代理と国対委員長)を交代して、また8選で閣僚経験もある中谷副幹事長が政調会長代理を退任して「特命担当」の待遇で筆頭副幹事長の上に列せられて幹部に留まった程度であり、山口元首相補佐官について「総務相起用を念頭に入閣を首相に求め」、党役員としては小池元総務会長を政調会長に推した(時事通信、12.12.26-23:23)のはしかし、前者については新藤総務相、後者については高市政調会長が起用されていずれも「首相側近に阻まれた」格好になっています。
ところで、そのうち山口さんは石破さんに近い一方で麻生派の所属でもあり、第二次安倍内閣発足時に財務副大臣となって麻生副総理兼財務相の下についていますが、1月31日に麻生派と事実上の石破派ともされる無派閥連絡会の会合が重なった際には当初出席予定だった後者を欠席して派閥の会合に出席、その場で麻生さんが「数が増えると割れたがるのは人間の習性なので、きちっとまとまっていかねばと思っている」(『朝日新聞』13.1.31-20:20)と発言したのは、石破さんにも近い山口さんへの強烈な牽制であったかと考えられ、そうだとすれば、麻生さんが安倍さんの後見として、石破さんが依然将来の首相候補として、ともに党内勢力を膨張させる過程で、両者の言わば「国境」付近で「衝突」が起きていることを見て取ってよいかもしれません。
さて、執行部では安倍さんと同じ長州閥の高村副総裁と河村選対委員長、町村派から細田幹事長代行、派閥会長の二階総務会長代行、安倍さんの盟友の塩崎政調会長代理といった、いずれも石破さんと距離のある幹部が起用されているのも、幹事長として党にある石破さんへの重石となっていると見られ、総裁就任から政権復帰、首相再登板を経て、石破さんに対する安倍さんの主導権は順当に確立されていると言えるのでしょう。
それに関して、国対委員長に再任されたばかりの鴨下さんが11日、体調不良により辞任したことを受けたドミノ人事は注目に値します。
すなわち、鴨下さんの後任となった佐藤国対委員長はこれまで同代理や同筆頭副委員長を歴任しているように国対経験の長いことから順当な昇格であったとして、佐藤さんの後任の小此木国対委員長代理は菅さんがかつて仕えた小此木彦三郎元通産相の後継者であり、それまで小此木さんが務めていた筆頭副幹事長を兼務するようになった萩生田総裁特別補佐が安倍さんの側近であるということは、党上層部における石破系の退潮と同時に、それを起点に安倍系がすかさず伸張したものにほかならなかったと言ってよいでしょう。

安倍さんは21日の衆院予算委員会で「「力を蓄えながら大きな中長期的な課題に備えていく」と述べ、長期政権への意欲を示し」(時事通信、13.10.21-17:26)ていますが、これは、与党から質問に立った石破さんへの答弁。
安倍さんのその言葉は、ポスト安倍への意欲があるはずの石破さんへの対抗心を暗示する宣言だったかもしれません。
石破さんはその答弁をどう聞いて、受け止めたでしょうか。

■さて、石破さんがポスト安倍の有力候補であることは事実だとして、しかし、それをどう窺うかということは慎重に考えねばならないでしょう。
自民党の総裁は1期3年、連続しては2期まで、計6年在任可能であり、12年9月に総裁となった安倍さんは現在の党則では最長で18年9月まで首相の地位にあれることになります。
改憲を「6年スパン」の課題と位置づけ、「大きな中長期的な課題に備えていく」安倍さんにとって、その上での最大の関門は15年9月の総裁選で再選を果たすことであると言えますが、それはとりもなおさず、その際の石破さんの対応が一大焦点になるということです。
昨年の総裁選では石破さんは議員票と地方票を合算する一回目の投票では地方票の圧倒的多数を得て一位になっており、もしも仮に15年9月の総裁選を安倍さんと石破さんが争えば、翌16年7月に参院選あるいは衆参同日選を控えるという日程的に、石破さんが有利になる展開はあり得るとすべきでしょう。
その点から、来年1月の党大会で「総裁選の決戦投票で投票権がなかった都道府県連にも、票を割り当てる党総裁公選規定の見直しなどが諮られる見通し」(『朝日新聞』13.10.22朝刊)であることには注目されますが、しかし総裁選を見据えて要諦となるのはむしろ、石破さんがそもそも対立候補とならない情勢を作り出すことでしょう。
安倍さんなどは、石破さんを一貫して要職に起用することでそれを目指すかと考えられますが、それが奏功して石破さんが安倍さんを支える方針をとれば、15年の総裁選では他の対立候補が現れず、無投票で安倍さんの再選が成ることさえ考えられるでしょう。

石破さんは既述の通り確かに1日にさわらび会の集まりに96人を集めており、それには党内、特に安倍さんに対するデモンストレーションという印象が不可分ですが、しかし幹事長としては例えば税制問題では安倍さん肝煎りながら党税調の反発の強い法人減税について19日に「日本は人口が減り、高齢化が進み、内需の拡大は限界がある。…企業が海外に展開するときに法人税の負担が過重であれば国際競争力がもたない」と、安倍さんの経済政策観に沿う発言をして党にあって官邸を後押しし、TPP推進についても党TPP対策委員長の西川政調副会長が内閣府や農水省と進める「重要5項目」のうちの関税撤廃候補品目の検証結果は「党内でも石破氏以外には報告しない考えを示した」(『朝日新聞』13.10.22-8:37)ように、党内で交渉に関する情報不足への不満が根強いなか、それを「幹事長マター」として抑える役を担っているのは、官邸、政権を支えるのに尽力しているのにほかなりません。
石破さんは安倍さんとの「役割分担」についてかつて「高い理想を掲げ、純粋な理論を説く総裁と、それを実現するためにはどうしたらよいかと考える実務屋の幹事長」(『朝日新聞』12.10.7朝刊「政治断簡」)と表現していますが、安倍さんが例えば靖国問題でも参拝を見送って「実務屋」ぶりを示しているなかでは、石破さんが幹事長として安倍官邸を支えている例も併せて、両者の相違は小さくなっていると言え、それは今後も協調を続けられる可能性を示唆していると言ってよいでしょう。
安倍さんの志向する「官邸主導」の確立について、党の側での石破さんのこれまでの貢献は小さくないはずです。

石破さんは麻生内閣で農水相を務めていた09年7月に与謝野元官房長官とともに首相の麻生さんに退陣を迫って失敗していますが、そうした蛮勇を再び繰り返せないとすれば、ポスト安倍を目指すのに強攻策はとらずに、安倍さんを支えることで穏健に、あるいは事実上の禅譲も期待しながら待つことになるのではないでしょうか。
そうだとすれば、さわらび会の会合も安倍さんに敵対するのに備えるような「外向き」で不穏なものではなく、将来の首相候補としての求心力を維持しようとするなど、比較的「内向き」なものだったと考えてよいかもしれません。

昨年12月に発足した第二次安倍政権にとって、最初の大きな課題は消費増税の扱いでしたが、今後「大きな中長期的な課題」となるのは安保政策であり、憲法問題でしょう。
安保政策や憲法問題については政権内で公明党が慎重姿勢であることがネックとなっていますが、7月の参院選で埼玉選挙区の公明党候補推薦問題などを通じて同党と信頼関係を築いた石破さんは、高木幹事長代理に自公関係について「友達以上と言ってもらった」(『朝日新聞』13.10.16-0:27)のだといい、公明党との調整についても石破さんに期待される部分は大きいはずです。
第一次安倍政権期に二階さんが国対委員長や総務会長として要職に起用されたのは二階さんが公明党の信頼を得ていたことが評価された結果であるとの指摘(『読売新聞』06.9.26朝刊)がありますが、安倍さんと公明党の間には政策面での相違が元来小さくないため調整役が求められる状況があり、第二次安倍政権において、その役目は石破さんに期待できるのかもしれません。
第二次安倍政権は現在、総裁選で安倍さん支持をいち早く掲げた麻生さんを副総理兼財務相として、消費増税や最優先課題とした経済再生に当たっていますが、これから「大きな中長期的な課題」としての安保政策や憲法問題に取り組む上では、政権内で石破さんの重要性が高まるように推移していくことが十分考えられます。
第二次安倍政権は後世、前期と後期に分けて把握されるようになり、「麻生さんの後見」と「石破さんとの協調」が、それぞれの特色を端的に表すものとなるかもしれません。


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アベノミクスと高橋財政

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+--【安倍晋三です。】--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+

今日で野田総理との「党首討論」から一年が過ぎました。


「あっという間のようですね。」と言う友人もいますが、私にとっては長く厳しい一年でした。
総選挙、経済政策大転換、日銀人事、TPP交渉参加、参議院選挙、オリンピック、消費税等々色々ありました。
今日発表の速報値で7-9月のGDPは1.9%の成長となり、1-3月の4.3%、4-6月、3.8%に続き順調に成長し続けています。
民主党政権時代の7-9月がマイナス3.7%であった事を考えればマイナスからプラスへと大きく変わりました。

その転換の始まりが昨年の今日11月14日でした。
景気回復の実感を全国に届ける為、これからも全力を尽くします。

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▼安倍晋三事務所携帯版HP
http://www.s-abe.jp/
*メルマガの配信元です。

■安倍さんが総裁選を制して総裁に復帰したのが昨年9月26日、その後、本文にあるとおり11月14日に当時首相であった民主党の野田最高顧問との党首討論で衆院解散が確約、12月16日に総選挙で自民党が勝利するまでわずか3ヵ月弱。
消費増税法案の成否が注目されていた昨年6月前後、9月に総裁選を控える中、安倍さんは参院での首相問責と法案廃案にまで言及して早期解散すなわち当時総裁だった谷垣法相の任期中の解散を強く求めていました。
それは、安倍さんは元来昨年9月の総裁選への出馬は見送って「谷垣首相」の次を窺う戦略であったため、谷垣さんを首相にして総裁選でも再選させることで、自らは出馬しない総裁選自体を流したかったか、ということを思わせるものではなかったでしょうか。
それが一転、出馬に踏み切ったのは菅官房長官などの熱心な働きかけがあったことのほかに、谷垣さんの総裁任期中の「近いうち」解散と総裁再選が絶望的になって総裁選を流せなくなったことで、

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「あっという間のようですね。」と言う友人もいますが、私にとっては長く厳しい一年でした。
総選挙、経済政策大転換、日銀人事、TPP交渉参加、参議院選挙、オリンピック、消費税等々色々ありました。
今日発表の速報値で7-9月のGDPは1.9%の成長となり、1-3月の4.3%、4-6月、3.8%に続き順調に成長し続けています。
民主党政権時代の7-9月がマイナス3.7%であった事を考えればマイナスからプラスへと大きく変わりました。

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■安倍さんが総裁選を制して総裁に復帰したのが昨年9月26日、その後、本文にあるとおり11月14日に当時首相であった民主党の野田最高顧問との党首討論で衆院解散が確約、12月16日に総選挙で自民党が勝利するまでわずか3ヵ月弱。
消費増税法案の成否が注目されていた昨年6月前後、9月に総裁選を控える中、安倍さんは参院での首相問責と法案廃案にまで言及して早期解散すなわち当時総裁だった谷垣法相の任期中の解散を強く求めていました。
それは、安倍さんは元来昨年9月の総裁選への出馬は見送って「谷垣首相」の次を窺う戦略であったため、谷垣さんを首相にして総裁選でも再選させることで、自らは出馬しない総裁選自体を流したかったか、ということを思わせるものではなかったでしょうか。
それが一転、出馬に踏み切ったのは菅官房長官などの熱心な働きかけがあったことのほかに、谷垣さんの総裁任期中の「近いうち」解散と総裁再選が絶望的になって総裁選を流せなくなったことで、自身は不在のまま総裁選が行われて存在感低下が決定的になるのを防ぐために出馬せざるを得なくなった、という事情があったかもしれません。
そうだとすれば、その状況から総裁に復帰して「長く厳しい一年」を迎えたことは、それさえまさに奇蹟にほかならなかったと言うべきでしょう。

■その安倍さんが首相として、持論の憲法改正や集団的自衛権の行使解禁、日本版NSC創設などよりも優先させて取り組んだのが、金融緩和、財政出動、経済成長からなるアベノミクスによる経済再生。
そのうち金融緩和と財政出動はデフレ対策すなわち成長戦略の実現可能な環境を整えるための対症療法であると位置づけられるでしょう。
そして安倍さんがかねて重視している成長戦略は経済成長による税収回復を目指すのと不可分であり、その背景にあるのは、国内外の会見で都度語られたように、財政規律やプライマリーバランス、財政再建あるいは財政健全化への意識にほかなりません。
安倍さんの目指す法人減税は「成長戦略」、10月に発表された消費増税は「財政健全化への意識」にそれぞれ関係する政策であり、それらはアベノミクスにおいて必然的な税制改正なのです。
また、消費増税は、金融緩和と財政出動が日本の財政と国債の信認に与える影響に配慮したものであることも看過できません。
上述の通り、アベノミクスにおいては「本丸」たる成長戦略に先んじる嚆矢としての金融緩和と財政出動が財政健全化に逆行するものであることから、国際社会からの対日投資(成長戦略)を重視していて財政再建に取り組むアピールをしたい安倍さんにとって、消費増税という判断は必至のものだったでしょう。
そのことや、国債の信認が失われれば国債発行に頼っている金融緩和や財政出動というデフレ対策自体が行き詰まること、そして安倍さんが保守政治家として経済政策では小さな政府志向であること(安倍さんは09年9月30日の『朝日新聞』朝刊紙上で「私の考える「保守」とは…経済政策で言えば、小さな政府で成長重視の政策をとる。そのためには構造改革にも果敢に取り組む必要がある」と語っています)からは、アベノミクスにおいては財政規律などの観点から、金融緩和と財政出動はいずれ縮小されるべきものであろうと考えられるでしょうか。

ところで、デフレ対策としての金融緩和と財政出動というリフレ政策については、大正期から昭和初期に首相や蔵相、立憲政友会総裁を歴任した高橋是清による「高橋財政」との関連がしばしば指摘されます。
高橋は通算5度にわたって蔵相を務めていますが、当時デフレが起きた昭和恐慌下の1931年12月から34年7月と同年11月から2・26事件で横死する36年2月の間にも在職、その間「高橋財政」と呼ばれる積極財政政策(31年度に14.77億円だった一般会計歳出は37年度には臨時軍事費約20億円を加算して47.43億円まで拡大)をとっています。
高橋財政では、11年12月11日の記事でも述べたように軍事費の支出が増大するとともに、予算に農村対策としての公共土木事業を中心とした時局匡救事業費を新設していますが、10月29日の『朝日新聞』朝刊紙上での東大大学院の岡崎哲二教授の指摘によれば、高橋財政は近代日本経済史上初の深刻な政府債務累積をエスカレートさせ、32年度の政府債務残高比率は58%という高水準になっていたとされます。
しかしむしろ、岡崎教授が「注目すべき」こととして挙げているのは「33年度以降、政府債務残高比率が数年間にわたって安定していたこと」であり、続けてその理由として積極財政による「緩やかなインフレが続いた」ことと、「高橋蔵相が34年度予算編成時から、財政規律を維持するために公債収入を前年度より減額する「公債漸減」方針を採り、36年度まで維持されたこと」が指摘されています。
これはすなわち、高橋が不況下でデフレへの対症療法としての積極的な財政出動(景気刺激効果)に踏み切る一方で、それによる財政の悪化を懸念して財政規律を慎重に意識していたことを示しているのにほかなりません。
そして翻って、それを現在に敷衍すれば、高橋財政のあり方は、アベノミクスにおいてデフレ対策として金融緩和と財政出動からなる景気刺激策が採られ、それが必然的に予算を大規模にして(2013年度予算が、12年度補正予算と合わせて「15ヵ月予算」となるなど)財政を圧迫する一方、財政再建への意識を背景に安倍さんが消費増税を決断したという、一連の経済財政政策に通じることが明らかであるでしょう。
また例えば、第二次安倍政権の手による13年度予算では、民主党政権下の過去3年間続いた、公債金が税収を上回るという異常事態(12年度は税収42.3兆円に対して公債金44.2兆円)を解消し、税収が公債金を上回るように正常化(税収43.1兆円、公債金42.9兆円)されていることにも、財政規律という観点から、公債漸減方針を旨とする高橋財政との共通性を見出してよいでしょう。
なお、財政や国債の信認を意識することは、日本の財政政策に対して国際感覚を持つことであると言えますが、その点、高橋が蔵相として財政規律の観点から公債漸減方針を採ったのは、その30年ほど前の日露戦争の際、日銀副総裁だった彼が「日本帝国政府特派財務委員」の肩書きで「戦争中および戦争直後に外国の金融市場で日本公債を発行する仕事を、ほとんどひとりできりまわしていた」(中山治一『帝国主義の開幕』河出書房新社)というように国際金融市場で奔走した経験があることと無関係ではなかったかもしれません。

高橋が暗殺された2・26事件を受けて退陣した岡田啓介内閣の後継となった広田弘毅内閣の蔵相、馬場〓一は岡崎教授の指摘によれば公債漸減方針の「流れを変え、再び公債発行の増加にかじを切っ」ています。
すなわち、「私は実は赤字公債をそんなに恐れない」と豪語した馬場は「公債漸減方針を明確に放棄し」、「32~36年度に8億~9億円だった新規国債発行額は、37年度に一挙に22・6億円に増加し」ていますが、岡崎教授はそのような「政策転換の背景」には「公債発行で軍事費を含む財政支出を賄っても、中長期的には市場の拡大を通じて経済成長をもたらし、税の自然増収につながるのだから問題ないという議論」があったことを示し、それを「今日から見れば根拠に乏しい楽観論」と評しています。
今この楽観論に裏打ちされた「馬場財政」を考えるときに想起されるのは、安倍さんや黒田日銀総裁が国際感覚を持って財政や国債の信認を維持するため財政再建への取り組みとして消費増税を決断、主張したのに反して、「日本国債は暴落しない」というまさに「根拠に乏しい楽観論」(=国債神話)に基づいて野放図な国債増刷と財政出動を主張し、同時に反増税に固執して「安倍さんに裏切られた」と嘆く人々の存在でしょう。
岡崎教授は馬場財政期には「根拠に乏しい楽観論が、多額の公債発行を継続することの正当化に一役買った」と指摘していますが、財界から「無軌道財政」と酷評されたその放漫ぶりは広田内閣退陣の要因となっているのであり、同じように財政規律に無頓着な国債神話をナンセンスにも盲信することは、日本の財政と国債の信認を損なわせてアベノミクスひいては第二次安倍内閣の足を掬おうとする反日工作と何ら変わりません。

ここに高橋財政と馬場財政を比較したとき、それらを峻別するのは「公債漸減方針」の有無であり、高橋財政の真髄はむしろ積極財政の裏の公債漸減方針にこそあったと言えますが、それは換言すれば、デフレ対策やそれを口実にした国債神話による財政出動ありきの政策すなわち財政規律を無視する主張をする上で高橋財政を引用することは高橋財政を表面的にしか見ていないことにほかならず、それは不適当かつ安直であるとしてよいでしょう。
そして、経済成長と財政再建を両立させようとするアベノミクスこそが真の意味で高橋財政の正嫡であり、逆に、国債神話=公債楽観論に立脚してデフレ対策としての国債増刷=財政出動にのみ近視眼的になり、財政規律や財政再建から目を背けることは高橋財政というよりむしろ馬場財政に通じるものなのであり、岡崎教授が指摘するとおり「希望的観測に基づいて財政再建を先送りし続ければ」、それは80年前の轍を踏むことになりかねないのです。

ところで、馬場財政が政党や財界から厳しい批判を浴びて広田内閣が総辞職すると、後継の林銑十郎内閣では蔵相に財界出身の結城豊太郎が起用されます。
11年12月11日の記事でも紹介したように、かねて馬場財政に批判的だったという結城はその修正を図り、「軍財抱合」を掲げて軍部と財界の利害を調整していますが、林内閣期には外相の佐藤尚武が対中融和外交を志向、日華貿易協会会長の児玉謙次を中心とする訪中団が送られています。
これを、中国を外需市場として位置づける言わば成長戦略の路線であるとすれば、現代では財界とともにTPP推進に注力する安倍さんの政策に近いと言えるでしょう。

昭和初期、日中戦争開戦(1937.7)までの高橋、馬場、結城各蔵相による財政の変遷は現代において、経済財政政策のあり方との関連で示唆的なのかもしれません。
そうだとすればアベノミクスとは日本経済史上で高橋財政に並ぶ体系的かつ正攻法の試みであり、それは積極的な財政出動の面よりもむしろ、公債漸減方針に通じるものとしての財政再建への取り組みが同時進行されている、という点こそが注目され、評価されるべきだと言えます。
そしてそれを実現せしめているのが、安倍さんの語るように「私の考える「保守」とは…経済政策で言えば、小さな政府で成長重視の政策をとる」ものであるということでしょう。


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安倍首相の総裁再選のための展望

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■8日、臨時国会が閉幕しました。
期間中、最も注目された特定秘密保護法の審議や反対派のデモが紛糾加熱しましたが、それも6日に成立。
安倍首相はそれを「嵐が過ぎ去った感じがした」(時事通信、13.12.7-20:16)と言い表しましたが、まずはお疲れさまでしたと申し上げたいと思います。

甘利経済再生担当相が入院加療を受けることになったのは、とても心配されたことでした。
経産相や政調会長を歴任してきた甘利さんはアベノミクスの司令塔としてTPP交渉の最前線に立ってきた安倍さんの盟友であり、第二次安倍政権には欠かせない存在。
11年6月には12年9月の先の総裁選も見据えて当時所属していた山崎派を中心に勉強会「さいこう日本」を立ち上げるも、総裁選では当時の谷垣執行部の幹事長だった石原環境相が派閥の主流派となり、甘利さんは派閥と一線を画して安倍陣営に参加、その勝利に貢献しました。
すなわち甘利さんは派閥の掌握には成功しなかったものの、盟友の安倍さんの復権とともに政治的地位をかえって高めたことになります。
安倍さんはそんな甘利さんの体調について4日夜に「大丈夫だよ」(時事通信、13.12.4-22:56)と話していますが、12日に行われた手術は無事成功、術後の経過も順調で、予定通り年明けにも公務復帰できそうであるといいます(時事通信、13.12.12-19:19)。
甘利さんの回復をお祈りしたいと思います。

■甘利さんの代理でTPP交渉の現場に臨むことになった西村内閣府副大臣は、09年の総裁選には安倍さんの支持を得て出馬しているほか、その際退会した町村派にも今や復帰しており、次世代保守派のリーダーとしての足場を固めていると言ってよいでしょう。
西村さんは保守派であると同時に旧通産省出身者らしく経済政策では成長戦略を重視していて、すなわち保守派の中でも安倍保守主義の直系的な後継者と特に位置づけられるはずです。
その岳父の吹田元自治相が安倍さんの祖父の岸元首相の選挙地盤(旧山口2区)を引き継いでいるという系譜も、それを思わせるものだと言ってよいでしょう。
第二次安倍政権では、経産省が、TPP推進や法人減税などの成長戦略、原発維持といった政策を安倍さんと共有、今井、柳瀬、山田各首相秘書官を輩出して政権内で存在感を持っていますが、それは前身の旧通産省を古巣とする西村さんの台頭の追い風になるかもしれません。
政党と官僚の関係については例えば、民主党政権の菅、野田両内閣期に消費増税が俎上に載って関連法が成立したことの背景として、今の生活の党の小沢代表が失脚して非主流派に転落したことで「政治主導」が決定的に後退、政権に対する財務省の影響力が著しく伸張した例がありますが、同じように、経産省が政権への影響力を保持しようと自民党に働きかけるようになることはあり得るのでしょう。
また、茂木経産相は党内第二派閥たる額賀派の総裁候補に今後浮上していくことになると思われますが、大派閥の実力者である茂木さんと、保守派および町村派(最大派閥)の次世代エースである西村さんが、「経産省ルート」によって結びつき、協力していくようになるという展開もあるいは考えられるでしょうか。
その場合、経産相経験者の甘利さんがそれを後見することや、その「経産省ルート」が、安倍さんが再選を目指す15年9月の総裁選で支持勢力となることも期待できるかもしれません。

年末の税制改正で、軽減税率の導入について公明党が強く要求する一方、旧大蔵省出身の野田元自治相が会長の党税調や財務省は税収減を嫌って慎重でしたが、先の特定秘密保護法案審議で関係閣僚だった菅官房長官は、法案に否定的だった公明党が一転、政府方針を支持したことの見返りとして、軽減税率導入を支持しているとされます。
安倍さんも11日に党税調に軽減税率の問題で公明党に配慮することを指示していますが、それらの対応の背景には、安倍さんや菅さんが「小さな政府」志向で消費増税にも積極的でない部分があり、つまり財務省とは一定の距離がある(9日22:02配信の時事通信の記事によると安倍さんは同日夜、セブン&アイHDの鈴木会長などの財界関係者との懇談で「(日本の)財政は…財務省が言うほど悪くない」との認識を示したとされますが、それは端的でしょう)ことが無関係ではないでしょう。
安倍さんが9月の副大臣人事で側近の古川財務副大臣を送り込んだのも、財務省への睨みを強めようとするものだったと言ってよいでしょうか。
民主党から自民党への政権交代によって、財務省の政権に対する影響力は低まったと言えますが、その分発言力を高めたのが経産省であるという構図は指摘できるはずであり、官界でのそのことの政治への影響は少なからずあるのかもしれません。
なお、官界では経産省の他に、杉田官房副長官の出身の警察庁が政権に近いことも指摘できるのでしょう。

■今月26日に発足して1年を迎える第二次安倍政権にとって、安倍さんの総裁再選がかかる15年9月までは、1年9ヵ月。
あと3ヵ月経って年度が明ければ現在の総裁任期の折り返し地点にまで至るのであり、総裁再選戦略は、既に意識され直面しているとすべき課題であるかもしれません。

12年9月の先の総裁選当時、総裁再選を窺った谷垣法相は、しかし出身の古賀派に排撃されて立候補断念に追い込まれていますが、安倍さんの出身の今の町村派は、派内に年齢などの点で他の有力総裁候補が不在であることなどから安倍さんの安定した支持基盤として見込め、また、将来の首相の有力候補ながら安倍さんとの協調を旨としている石破幹事長のグループ(さわらび会と無派閥連絡会)、茂木さんを擁する額賀派、盟友の麻生副総理が率いる麻生派、長州閥の高村副総裁や保守派の有村両院副総会長を輩出している大島派も、協力勢力として期待できるかもしれません。
10日21:25配信の『産経新聞』によると、石破さんは同日夜に約70人が集まったさわらび会の忘年会でも「みんなで来年も安倍政権を支えたい」と挨拶しているように、その路線を徹底しており、石破さんが安倍さんに協力する姿勢は「本物」であると信じてよいのでしょう。
また、年明け以降にいよいよ課題となる「集団的自衛権行使解禁のための憲法解釈変更の閣議決定」などの保守・安保政策推進には、その分野に明るい石破さんの協力は欠かせないものであり、その作業を通じて両者の信頼関係は高まっていくことになるのではないでしょうか。
安倍さんと石破さんは先の総裁選の過程で、決戦投票での2位3位連合を念頭して選挙戦中に領土問題と安全保障をテーマとする合同勉強会を開催していますが、その構図は実に1年以上を経て、具体化することになるのかもしれません。
さて、他の党内勢力では、二階派会長の二階元総務会長が秋の人事で総務会長代行を退任、4日の『朝日新聞』朝刊によると前日3日の党国土強靱化総合調査会の会合で「強靱化の予算の結果が思わしくなければ、どんな結果になるか分からん」と気勢を上げるなど執行部から距離を置き始めているようにも見えますが(安倍さんは会合前の二階さんとの面会では「「熱心な取り組み、ご苦労様でした」と短く応じるのみだった」とのこと)、派内には長州閥の河村選対委員長、保守派の中曽根前参院議員会長や衛藤首相補佐官、TPP推進で安倍さんに協力する西川政調副会長などもおり、二階派が少なくとも結束して安倍さんに敵対するということはあり得ないでしょう。
また、石原派会長の石原さんは、山崎元副総裁から引き継いだ派閥が甘利さんや林選対委員長代理、渡海元文科相、田中環境副大臣などの退会者の続出で弱体化している上に、先の総裁選で推薦人となった額賀派の茂木さんや岸田派会長の岸田外相が閣僚や党役員を歴任して自ら所属派閥独自の首相候補となり得る状況では、先の総裁選のように大派閥を糾合して安倍さんに匹敵する対抗馬に再びなる可能性は低いかもしれません。
同様に派内に根本復興相や塩崎政調会長代理、鈴木元環境相という安倍さんに近い閣僚や党役員を抱える岸田派の岸田さんも、古賀元幹事長が「宏池会政権」実現への期待を隠さないのに反して、安倍さんの総裁再選に向けて多数派工作の流れができれば、岸田派自体は党内第三派閥の勢力ながら、それに対抗することは難しいかと考えられるでしょう。
中国が尖閣諸島上空を含む形で独自に防空識別圏を設定するなどの極東・東太平洋地域の情勢に鑑みて、宏池会に伝統的なハト派・対中融和路線が時代にそぐわず安倍さんの外交政策の対抗軸、あるいは反安倍の口実たり得ないという時代状況も、岸田派が総裁選で独自路線をとりにくくするように影響するはずです。

例えば以上のように見通すことのできるだろう力学に基づく安倍さんの総裁再選戦略という政局的対応は今後、集団的自衛権の行使解禁のための解釈改憲の閣議決定などの保守政策や、アベノミクスによる経済再生・成長戦略などの政策的な取り組みと二正面的に見据えられるべき重要課題であると言わねばならないでしょう。

■ところで、更に長期的に観測するなら、18年9月に安倍さんが二期目の総裁任期を満了して首相を退任した場合の後継の最右翼には、その評価の既に堅い石破さんのほかに、茂木さんもそれに匹敵する存在であるとすべきかもしれません。
額賀派所属で大派閥系である茂木さんは、同じ大派閥の町村、岸田両派の協力を期待できるほか、町村派の次世代リーダー候補の西村さんや、同じ額賀派の新藤総務相などの保守派の一部の支持も見込めるかもしれません。
なお、新藤さんは07年8月に第一次安倍改造内閣で経産副大臣に起用されているほか、12年9月の安倍さんの総裁復帰後には党政調の経産部会長に充てられていて、こちらも経産省との繋がりを見ることができますが、むしろ例えば11年8月に稲田行革担当相や佐藤参院政審副会長とともに領土問題に関して韓国の鬱陵島を視察しようとしたように保守派として強硬的であるとすれば、安倍さんが先の総裁選で町村派とは別の枠組みで出馬に踏み切ったように、額賀派を割って保守派を糾合しようとすることもあるいはあり得るのかもしれません。
さて、大派閥の所属で、かつ政権内で存在感のある経産省を率いる茂木さんが今後いよいよ台頭していくことは必至であり、そうだとすれば、その存在が安倍さんの政権運営上で大きくなっていくのは間違いないでしょう。
安倍さんとは憲法観や安保政策を共有している石破さんは上述の通り安倍さんと協調していくことで、あるいは事実上の禅譲を期待などしつつ次に備えていくかと思われますが、その石破さんと茂木さんの間には額賀派を巡る因縁があります。
すなわち、茂木さんが非世襲・非自民(旧日本新党)で初当選したもののまもなく自民党に合流してからは大派閥に所属して今では額賀派の実力者となっている一方、石破さんは父親の石破二朗元自治相の跡を継いで自民党から初当選した後、小沢氏に従って93年に離党、97年の復党後には派閥にも復帰したものの11年9月に政調会長を退任(後任は茂木さん)した際に鴨下元環境相や小坂元参院幹事長とともに額賀派を退会していて派閥との折り合いは必ずしも良くはないとされており、両者が対照的な道を歩んでいることは指摘できるでしょう。
そうした経緯的に石破さんと茂木さんが合流する可能性は低いとすれば、両実力者の競争を利用することは安倍さんの党操縦の要諦の一つとなっていくかもしれません。

安倍さんの今の総裁任期も年度明けには早くも半分を終えるというなかにおいて、徐々に重要課題として浮上してくるはずの総裁再選戦略として、党内力学や省庁間関係の展望をポスト安倍から中長期的に逆算することは、現在の政権運営を主導するために有意義なものだと言えます。
そしてそれはまた、第二次安倍政権の現在のあり方に影響するものであることも確かでしょう。


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「見えざる矢」の行方

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+--【こんばんは安倍晋三です。】--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+

本日で丁度昨年の総選挙、「日本を取り戻す闘い」から、一年が経ちました。
ご支援いただきました皆様へあらためて御礼申し上げます。
皆様から政権をお預かりして一年、日本の景気回復に明るい兆しが見えてまいりました。


今日発表された日本銀行の所謂「日銀短観」12月の調査によると、大企業、製造業の業況判断は4半期連続で改善いたしました。
リーマンショック前の2007年12月以来の水準です。
そして嬉しいことに中小企業の業況判断は全てがプラスに転じました。
非製造業の業況判断がプラスに転化したのは1992年以来21年10か月ぶりの出来事です。
間違いなく私達の「三本の矢の政策」によって経済は良くなっています。

本日官邸にやってこられた5人の
中小・小規模企業の経営者の方々は「いい人材を確保し従業員のモチベーションを維持するために、また頑張ってくれた従業員達に報いるために、我々は2%・・3%と賃上げを必ずしていくんだ!」と高らかに宣言してくれました。

この「景気回復の波」を中小・小規模企業、そして全国津々浦々に広げていくのが私の仕事です。

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■第二次安倍政権はこれまで、アベノミクスによる経済再生を最優先課題として重点化してきましたが、それは経済再生自体が確かに喫緊であったためであるのと同時に、憲法改正などの保守政策を世論の了解をつけて進めるための中長期的な政権運営プランでもあると言えます。
それは前記事で指摘したように年度明けには安倍さんの今の総裁任期も半分を終えるというなかにおいて、15年9月の次期総裁選での安倍さんの再選戦略とも関連するでしょう。
それについて、FNNが週末(12.14、15)に行った世論調査で、
◎この1年間の安倍内閣の実績を評価するかを尋ねたところ、「評価する」が6割に達し(60.4%)、「評価しない」は3割台だった(34.7%)
◎誰が今、首相にふさわしいかを聞いたところ、「安倍首相」との回答が6割を超え(64.9%)、「別の政治家」とした人は、1割未満だった(9.7%)
というのは、大いに意を強くできるものだったと言ってよいかもしれません。
同じ世論調査では内閣支持率自体は下落して47.4%、不支持率は上昇して38.7%という数値が現れていますが、その一方で「この1年間の安倍内閣の実績を評価するか」と「誰が今、首相にふさわしいか」の質問で上記のような結果となっているのは、安倍さんの党内求心力を支えるものとなると言えるでしょう。
前記事では、安倍さんの二期目の総裁任期が満了、首相を退任することになる18年9月の「ポスト安倍」政局から逆算した見通しを15年9月の総裁再選戦略にフィードバックしたい立場から(つまり、近い未来のためにむしろ遠い未来を考える)、石破幹事長と茂木経産相をその有力候補に推定し、互いに好対照な政治キャリアを持つ両者の競争は、党操縦で主導権を握る上での一つの要諦たるだろうと指摘しましたが、防衛相経験者で安全保障や軍事に通じた石破さんと、経産相や金融担当相という経済閣僚を歴任している茂木さんが台頭していくことは、本文にあるような経済再生の成功を保守政策推進の原動力にしようとしてそれらを重視する第二次安倍政権において必然的だと言えるかもしれません。
また、保守派であると同時に旧通産省出身でTPP推進などでアベノミクスに欠かせない存在となっている西村内閣府副大臣が、そういう第二次安倍政権下で保守派の次世代リーダーとして浮上していくのも必至でしょう。

■11月16日の記事では、第一の矢「金融緩和」と第二の矢「財政出動」を、根幹たる第三の矢「成長戦略」に備えるデフレ対策=対症療法とするアベノミクスについて、昭和初期のデフレ不況(昭和恐慌)に時局匡救事業などの積極財政をもって対処した高橋是清蔵相による高橋財政との共通点を指摘しましたが、その時、その本質は金融緩和および財政出動や積極財政という「景気刺激」にあるのではなく、むしろ、その一方で確かに意識されていた「財政規律」という観点にこそあることが明らかになるでしょう。
すなわち、東大大学院の岡崎哲二教授の指摘に拠れば高橋が「財政規律を維持するために公債収入を前年度より減額する「公債漸減」方針を採」(『朝日新聞』13.10.29朝刊)ったことと、安倍さんが経済成長と財政再建の両立を目指して8%への消費増税を決断したことは、日本経済史上でも高橋財政とアベノミクスのそれらしかない体系的かつ本格的な二大経済政策の注目すべき真髄であると理解したいと思います。
政府は来年度予算案について「借金のために新たに発行する国債の額を今年度(42.9兆円)より減らす方針」(『朝日新聞』13.11.22朝刊)を既に11月下旬に固めていますが、それはまさに「公債収入を前年度より減額」しようとする公債漸減方針に通じるものにほかならないでしょう。
第一~三次小泉政権と第一次安倍政権による構造改革の成果が現れた07年度プライマリーバランスがマイナス6兆円まで圧縮改善されたことは、小泉元首相と安倍さん、中川元幹事長、竹中元総務相や大田元経済財政担当相の治績ですが、それが端的なように、安倍さんは元来財政規律や財政健全化への意識を持ち合わせていると言えるのであり、第一、第二の矢によって財政を悪化させる側面を持つアベノミクスがそういう安倍さんの手によるものである以上、それをフォローするための消費増税はアベノミクスに本質的にビルトインされていた第四の矢もしくは「見えざる矢」であったとしてよかったかもしれません。
また、そのようにアベノミクスが消費増税を本来的に包含していることには、日銀の黒田総裁が「いったん国債の信認がなくなれば、いまやっている日銀の買い入れは意味がなくなる。そうなれば2%の物価上昇目標の達成もデフレ脱却もできない」(『朝日新聞』13.9.25朝刊)と述べたように、第三の矢「成長戦略」の一環として重視されている海外の対日投資呼び込み(「Buy my Abenomics」)の前提的環境整備が財政再建であるという、国際感覚に立脚した考えも密接に関連することも明らかでしょう。

アベノミクスが金融緩和+財政出動(第一、第二の矢)と成長戦略(第三の矢)に加えて財政再建(第四の矢あるいは見えざる矢)、つまり経済政策一般の三大類型から構成されていることは、自民党が解散戦略と総裁選対応に揺れていた昨12年7~9月の党内動向とも関連したものであると見ることができるかもしれません。
すなわち昨年7月に二階元総務会長が国土強靱化計画を発表したのは財政出動、8月に当時総裁だった谷垣法相が「近いうち解散」の約束と引き替えに消費増税法案への賛成を決めたのは財政再建にそれぞれ該当し、また9月に安倍さんが「新経済成長戦略勉強会」を勢力基盤の一つとして総裁に復帰したことはまさに成長戦略を象徴するものだったのであり、それらの党内議論の積み重ねが、現在、アベノミクスが「三本の矢」+「見えざる矢」によって全方位的になっていることの背景であるのでしょう。
第二次安倍政権発足からまもない頃、ある経済官庁幹部が政権の経済政策を「無色」と言い表したことがあったといいますが、それはさしずめ、アベノミクスが赤、緑、青つまりRGBの三色光を合成すると白になるのだという「光の三原色」の原理にも似て、経済政策の三大類型を総動員することの予言であったということになるでしょうか。

■安倍さんは財務省の主張でもある消費増税を決断する一方、前記事でも紹介したように、9日夜に菅官房長官やセブン&アイHDの鈴木会長などと会食した際に「「(日本の)財政は…財務省が言うほど悪くない」との認識を示」(時事通信、13.12.9-22:05)していますが、そこには政権と財務省は財政再建という目標を共有しつつも、しかし微妙な距離感もあることが反映されているのでしょう。
それに関連しては、首相経験者で重量級閣僚の麻生副総理兼財務相や首相側近の古川財務副大臣の起用が、安倍さんが財務省への睨みを強めようとしたものであろうことや、同じく重量級閣僚の甘利経済再生担当相が例えば来春の税率引き上げ時の景気対策の規模についてなどで財務省を牽制する立場をとったことを指摘できますが、では安倍さんや菅さんなどと財務省の距離感はどのようなものであるでしょうか。
それについて示唆的なのはおそらく民主党政権であると考えられ、すなわち彼らの目標の一つであった「政治主導」が今の生活の党の小沢代表の剛腕によって曲がりなりにも最も達成された鳩山内閣期には財務省の影響力は限定的で消費増税は否定され(その背後事情は、小沢氏一流の選挙至上主義に基づいてバラマキによる財政悪化が頓着されなかったことでしょう)、逆に、歴代財務相経験者でもある菅元首相と野田最高顧問の政権で消費増税が具体的な課題となったのは、その小沢氏が失脚した間隙を財務官僚が突いたものだったとすれば、政権と財務省の距離は近年では鳩山内閣期に最も離れ、菅、野田両内閣期に最も接近したと理解できるのでしょう。
その上で、消費増税を決定しつつも財務省とは同床異夢の部分のある今の第二次安倍政権が、それらの中間に位置取れることも浮かび上がってくるでしょう。

税制改正で焦点となった軽減税率の扱いで、党税調会長で旧大蔵省出身の野田元自治相が消極的な一方、公明党税調会長の斉藤幹事長代行が積極的で自公の調整が難航した際、安倍さんは党税調に公明党への配慮を指示していますが、これは安倍さんと財務省の間に、消費増税に対する温度差があることを物語っていると言えます。
なお、野田さんが語るように軽減税率を「10%時に導入する」とされたのは「(10%に)上げる時と上げた後と両方含まれるとの見方がある」ものであり(時事通信、13.12.15-11:54)、公明党が前者、財務省が後者の立場ということになりますが、それらはいずれにしても消費税率を15年10月に8%から更に引き上げて10%とすることが前提にされた議論であり、小さな政府論者で元来は消費増税に慎重な安倍さんがそもそも10%を見送れば、税制を巡る官邸、自民党および党税調、公明党、財務省の関係性が複雑に変化することもあるかもしれません。
党税調や財務省は10%見送りに反対するかと思われますが、翌16年7月には参院選あるいは衆参同日選が行われるという政治日程的に、自民党の大勢はそれを求めることが例えば考えられるでしょうか。
また、既述のように15年9月には次期総裁選が行われるため、翌10月1日の消費税率の再引き上げの扱いはその際の大きな焦点となるに違いないでしょう。
そしてその時、安倍さんや麻生さん、菅さんなどが10%見送りを総裁再選戦略の要諦に据えることは十分考えられると言ってよいかもしれません。
今のところ、総裁二期目に保守政策を推進するために世論の支持を意識して、安倍さんは10%を見送るのではないかとも思われますが、そうだとすれば、総裁再選戦略と連関していくはずの10%への消費増税が具体的課題となってくるのにつれて、財務省との関係が緊迫していくことはあり得るのでしょう。
なお、安倍さんと政策観を共有して財務省に代わって政権内で存在感を持っている経産省は、例えば所管する自動車業界が関わる軽自動車増税について慎重姿勢を見せたことがありますが(時事通信、13.10.30-22:28)、仮に安倍さんが10%を見送ろうとする場合、経産省はそれを後援することになるのかもしれません。
それらのような展開も、安倍さんの「「景気回復の波」を…全国津々浦々に広げていくのが私の仕事です」という意気込みを今後の政治日程に照らせば、考えられるでしょうか。


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「安倍晋三の復活」

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+--【安倍晋三事務所より連絡です。】--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+

皆さんこんにちは!
こちらは安倍晋三事務所です。
ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘
連日多くのご声援ありがとうございます。

本日は安倍総理のテレビ番組出演のお知らせです。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
番組:『NHKスペシャル永田町 "権力の興亡』
(NHK総合)

日時:12月22日(日)《本日》
   午後9時00分~

出演:安倍晋三議員、野田佳彦議員他
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
安倍晋三の復活と民主党の分裂そして今日とこれからの政治を与野党のキーマンの証言から読み解く!

皆様是非ご覧になって下さい。

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■今の第二次安倍政権が発足してから、明日26日でちょうど一年。
22日に放送された『NHKスペシャル「永田町・権力の興亡」』は、消費増税政局での民主党分裂から総選挙を経て特定秘密保護法成立までを中心に検証した「証言ドキュメント」で、全体に見応えのある番組でした。
本文中「安倍晋三の復活」については安倍さん自身の告白もあり、曰く、07年9月の首相辞任から2年後、09年8月の総選挙で地元の支持を失っていれば当選してもその任期で議員を引退する覚悟であったこと、しかし選挙結果はむしろ圧勝であり、それはかえって総裁復帰に意欲的になるきっかけとなったこと、12年8月15日に翌9月の総裁選立候補の決意を固めたことなどは、メディアで語られたのは初めてであったかもしれません。
09年総選挙についてはメルマガ同年9月2日号に具体的に「圧倒的勝利」「対民主党最高得票率の64.25%、121,365票と素晴らしい票を与えて頂き…政治家冥利につきる思い」「この重い責任を果たす為、自民党を再建し、政権奪回へ向け全力をつくします」とありましたが、それから全てが始まったことからは、安倍さんが郷土の山口4区ひいては吉田松陰先生以来の長州山口県が生んだ政治家であることが改めて確認されるでしょう。

さて、「安倍晋三の復活」を振り返る上で看過できないのは、日本維新の会の橋下共同代表との関わりです。
番組では11年2月末、大阪での安倍さんおよび菅官房長官と当時は地域政党、大阪維新の会代表だった橋下氏および維新の松井幹事長の会談が一つのターニングポイント的に取り上げられました。
それはメルマガ同年2月27日号によって「教育再生民間タウンミーティングin大阪」で松井氏と対談した、前日26日のことであったのが知れますが、当時隆盛していた維新とのコネクションが、政界内外の注目を安倍さんに再び集めるのに十分だったことは、当時の報道を思い返せば明らかでしょう。
そういう安倍さんの「再浮上」戦略は菅さんの手による部分が大きいことは既によく明らかですが、番組内でも松井氏が語っていたように維新は安倍さんの合流と代表擁立まで展望していたのに対し、安倍さんは「総裁経験者が離党することはない」(『朝日新聞』12.6.9朝刊)と述べていたのであり、両者は教育再生を端緒に接近しつつ、理想の距離感には温度差があったと言えるでしょうか。
そうだとすれば、安倍さんサイドにあって、間合いの取り方を微調整しながら維新との蜜月を演出した菅さんのハンドリングは、サクセスストーリーとなった再浮上戦略の起点だったのであり、感嘆すべき手腕だったとしてよいのは間違いないでしょう。

その菅さんも関係閣僚として国会答弁に立った特定秘密保護法を巡っては、維新やみんなの党といった保守系野党が政権に協力的な姿勢を見せたことがあり、野党第一党の民主党の頭越しに、番組内でも指摘があったように、法案の修正協議という実務作業を通じて与野党の垣根を越えた枠組みが萌したことは、今後の国会運営における良い先例として、大きな収穫であったに違いありません。
その点、特定秘密保護法はそれ自体、日本版NSCの運用においてアメリカのNSCから情報を提供されるための前提という日米同盟論上重要な「大きな一歩」であるのも確かですが、マクロ的に見れば、安倍さんが「大きな中長期的な課題に備えていく」(10月21日衆院予算委での答弁、時事通信、同日17:26)上ではそれさえ「小さな一歩」であったとすべきかもしれません。
安倍さんは番組の最後で今後の国会運営について「政策ごとの連携」に言及していましたが、一連の国会審議の展開は安倍さんの意を強くさせるものだったと言えるでしょうか。

安倍さんと菅さん、それに石破幹事長は23日夜、維新の橋下、松井両氏および国会議員団の松野幹事長と会談しましたが、それについては、「「改憲パートナー」として関係を持ち直しておきたい」(『産経新聞』13.12.23-21:59)との見方の通りなのでしょう。
維新は上述の通り特定秘密保護法に関して与党との修正協議に応じ、それは安倍さんにとって明らかに今後の国会運営についてのサジェスチョンとなったものの、実際の採決自体は日程に反発して衆参両院ともで棄権しているため今回の関係修復の場が持たれたものと考えてよいのでしょうが、それはまさに、維新との間合いの微調整という、再浮上戦略以来安倍さんサイドに伝統的な対維新方針の一環であると見て大過ないのではないでしょうか。

安倍さんの引き抜き、擁立が叶わなかった維新はその後12年11月に旧太陽の党が合流、12年12月の総選挙では躍進していますが、今年5月の橋下氏の歴史認識に関する発言が批判されて失速、参院選では奮わずに橋下氏が国政への影響力を落とし、10月にはいずれも自民党出身で橋下氏の本拠地大阪選出の谷畑前総務会長代理と松浪総務会長代理の自民復党が噂され(それは石破さんと高市政調会長が一蹴)、今月17日には東国原前衆院議員が議員辞職するなど、党勢を弱めています。
その背景にあるのは、参院選敗北後まもなく松浪、東国原両氏が平沼国会議員団代表の解任を模索(『産経新聞』13.7.31-22:45)したことや、東国原氏が議員辞職に際して藤井同総務会長と園田同幹事長代理を批判したこと、また平沼氏が「維新が分裂になってもやむを得ないとの考えを示した」(『産経新聞』13.12.13-0:20)こともあるように、大阪維新系≒改革派と旧太陽系≒極右派の党内対立や相互不満が潜在的であることなのは、間違いないのでしょう。
それはひいては大阪維新と旧太陽の党の合流がそもそも無理筋で失敗だった可能性さえ思わせますが、それはまた安倍さんが維新との関係で深入りしなかった判断の正しかったことを物語ってもいるでしょうか。
安倍さんの再浮上から俯瞰すれば、維新さえその一つのステップという存在であったということかもしれません。

■党勢の回復しない維新は野党再編に活路を見出そうと橋下氏自らも党の発展的解消に言及、橋下氏が予て民主党右派の前原元代表と気脈を通じているとされるほか、松野氏が民主党で野党再編論者の代表格の細野前幹事長および結いの党の江田代表と勉強会を結成、なかでも結いとは、ほかに小沢国対委員長が両党が来春にも合流することに意欲的で、浅田政調会長も結いの柿沢政調会長と22日夜に会談して「合流を視野に入れた政策協議を事実上スタート」(『読売新聞』13.12.23-13:52)させるなど、中道系野党を全方位的に見据えていますが、その一方では橋下氏が浅田・柿沢会談の翌日というタイミングで、与党で保守勢力の安倍さんと会談しているように維新の足下が定まらないのは今後、野党再編を制限するジレンマとなっていくかと考えられます。
それに関すれば、23日の会談については自民党側に「みんなの党に続き、維新側も取り込んで野党再編の動きを分断しようとの思惑もあるとみられ」(『毎日新聞』13.12.23-23:15)るとの指摘もあります。
結いの江田氏は16年7月の参院選と同年12月予定の総選挙で「一気に政権を取りに行く」として「100人規模で新勢力の結集を目指す考えを表明」(時事通信、13.12.21-21:58)していますが、選挙イヤーの16年後半に向けた野党再編の進捗は、安倍さんが再選を目指す15年9月の次期総裁選にも影響する可能性のあるものでもあり、そうだとすれば、野党再編の分断は「政策ごとの連携」の素地を残そうとするものであると同時に、総裁再選戦略に連関していくものでもあるということなのかもしれません。

江田氏の考える野党再編は維新の分裂と不可分ですが、石原共同代表の橋下氏への信頼が厚く、両者が情意投合している状況ではその可能性は必ずしも高くないのでしょう。
平沼氏は上述の通り「分裂になってもやむを得ないとの考え」に言及しましたが、しかし同時に「党運営について「皆で仲良くする姿勢は崩さない」と発言」してもいるのには、旧太陽系議員の選挙事情が関係しているのかもしれません。
すなわち旧太陽系の現職衆院議員12人から石原、藤井両氏などもともと比例単独立候補の5人を除いた7人のうち、実に5人が選挙区では落選して「橋下人気」によって比例復活当選した議員であり、仮に極右系新党を結成して次期総選挙に臨んでも情勢を楽観できないという判断が成り立つとすれば、それが平沼氏の上記発言に合致する性質のものであることは確かでしょう。
そのように、石原氏の存在感と橋下氏への信頼感、旧太陽系議員の選挙区事情などによって維新の一体性が保たれる状況では、江田氏が「3段ロケット」として構想する野党再編の2段目、旧太陽系を除いた維新との合流の前提たる維新分裂の可能性はやはり高くないとすべきなのでしょう。
従って野党再編は結局、民主党が結いとせいぜい維新改革派の一部を吸収するという不完全な形で終わるのではないでしょうか。
安倍さんは18日、石原、平沼両氏と会談して憲法改正について協力することで一致していますが、「政策ごとの連携」のためにそのように極右派を後押しすることが維新の一体性維持に繋がるという構造があれば、安倍さんなどは野党再編の芽を早期に摘むことを戦略としているということを見て取れるのかもしれません。
実は安倍さんと石原、平沼両氏の会談は維新分裂を誘発したい結い結党と同日、また橋下、松井、松野三氏との会談は上述のように維新と結いの政調会長会談の翌日なのであり、それらの事実は、与党が野党再編の動きを巧妙に追って潰しているようにも見えるのではないでしょうか。

また、安倍さんには旧太陽系以外にも、大阪維新系の維新議員との繋がりがあることも見逃せません。
例えば山田筆頭副幹事長と中田国対委員長代理の出身の旧日本創新党は、保守再建に向けて、安倍さんの率いる創生「日本」および平沼氏の率いた旧たちあがれ日本とともに10年6月10日に「日本を救うネットワーク」(救国ネット)を構成したグループ。
山田、中田両氏はいずれも地方首長経験者であり、地方分権などを結集軸に党内では橋下氏に近いかと思われますが、安倍さんは地方分権に通じる道州制に否定的でないこともあり、その点で維新内部の安倍さんへの親和性は、保守主義以外の観点からも、潜在的にはかなり強いと言えるのかもしれません。

■17日に閣議決定された『国家安全保障戦略』において、安全保障と愛国心が関連づけられましたが、その中の「我が国と郷土を愛する心」との文言は、今の教育基本法にある「我が国と郷土を愛するとともに…」を想起させます。
7年前に安倍さんが若い首相として率いた第一次政権は一年で退陣しましたが、その間に残したものの一つが、今回安全保障と体系的に連関した今の教育基本法なのであり、それは、これまでの歩みで無駄なことは何一つなかったのだということを思わせます。
今年は、他にも保守再建や再浮上戦略などのこれまで見てきた全てが、今とこれからの成功に繋がったことを確信させた一年でした。


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安倍首相と普天間問題

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「沖縄の基地の負担軽減とさらなる振興」
仲井眞知事からのご要請に対し、政府としての考え方を直接、私からお話しました。
沖縄県民全体の思いを受け止め、日本政府として引き続き一丸となって、できることはすべて行っていきます。

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■安倍さんは25日午後、仲井真沖縄県知事と会談しました。
安倍さんの「直接」提示した「沖縄の基地の負担軽減とさらなる振興」を、25日21:38配信(26日1:42最終更新)の『毎日新聞』によれば仲井真氏は「驚くべき立派な内容」と高く評価。
同記事によると、沖縄県の要望していた「日米地位協定の追加・改定」に対して政府は「日米地位協定にない環境管理の枠組みを定める補足協定締結に向けて協議を開始」と回答したといい、それは「協定本体の改定に消極的な米側の意向を踏まえ、新たに環境条項を盛り込む「特別協定」などとなる見通し」であるとされますが、現行日米地位協定は、安倍さんの祖父の岸元首相が1960年6月に成立させた新安保条約の第6条いわゆる極東条項を補完する性質のものであると言えます。
それは具体的には第6条に関して米軍の「施設及び区域」と、「陸軍、空軍及び海軍」の日本国内での地位について規定していますが、それが新安保条約ひいては日米安保体制と密接に関連する重要なものであることは疑いないでしょう。
岸さんの評伝『岸信介』(原彬久、岩波新書)によれば第6条=極東条項は、今の日米安保体制における「アメリカの日本にたいする「貸し」」、つまり第5条にある集団的自衛権が「日本国憲法に阻まれ」てアメリカに片務的であることの「埋め合わせ」として盛り込まれて、アメリカが「その世界戦略に在日基地を利用できる」ようにしているもの。
安倍さんは憲法9条の解釈変更と条文改正によって日本の集団的自衛権を行使可能とすることを目指していますが、そういう日米安保体制の高度化において、極東条項は、当時の成立経緯は必ずしも積極的なものではなかったとしても、中国、北朝鮮問題という現代の極東情勢やアメリカが「太平洋国家」を自任するようになっていることに鑑みれば、それ自体が今や自存的なレゾンデートルを有していると言うべきでしょう。
アメリカが、その極東条項を補完する地位協定の「本体の改定に消極的」であるということは、将来あるいはあり得るかもしれない日米安保体制の動揺の予防線として、それを好まなかったかとは解せるでしょうか。
そうだとすれば、沖縄県の要望に回答するのに、日本政府がそれに呼応して今の地位協定の「改定」でなく「補足協定」あるいは「特別協定」を新たに締結するという形を取ったことは、巧妙な対応だったと言ってよいのではないでしょうか。
なお、中国はアメリカとの軍事的関係について、例えば朝鮮半島方面では北朝鮮を在韓米軍との緩衝地帯としていますが、西太平洋方面では南西諸島から台湾に至る「第一列島線」と小笠原、マリアナ、パラオ各諸島を結ぶ「第二列島線」を設けて、中国大陸と第一列島線に挟まれる東シナ海を内海的な勢力範囲とし、更に第二列島線を境界とする太平洋の東西分割を目指す姿勢なのであり、民主党政権や連立与党だった社民党がかつて在沖米軍基地を「最低でも県外」あるいは国外マリアナ諸島グアム島まで後退させようとしたのは、日本列島の真南で二つの列島線に挟まれる海域を進んで米中の緩衝地帯的にし、中国の東シナ海進出を容易にするものだったことは間違いありません。

ところで、地位協定の問題を含む沖縄県からの要望と不可分なのは、米軍普天間基地の名護市辺野古への移設問題でしょう。
基地移設には辺野古沿岸部の埋め立てが必要ですが、25日に仲井真氏が安倍さんと会談して「政府としての考え方」を伝えられると、翌26日には政府の埋め立て申請を承認する方針(27日に正式発表)であることが報道されたのであり、09年9月の民主党政権鳩山内閣が基地の県外移転を掲げて、V字滑走路の建設を決めた06年4月の日米合意を覆して以来混迷の続いた普天間問題はようやく正常化、ゼロベースに立ち返ったことになります。
民主党が普天間基地を含む在沖米軍基地の県外退去を打ち出したのは、「日米中二等辺三角形論」すなわち民主党政権下で続いた外交敗北の温床としての「日米同盟の相対化」と連動するものでもあったのであり、長く日米間の懸案であった普天間問題が親米保守政権としての第2次安倍内閣の下で正常化したことは、日米同盟論に基づく外交再生の一環であることも確かでしょう。

■そう位置づけられる普天間基地の辺野古移設実現に安倍さんは注力して、仲井真氏が埋め立て申請を承認する環境の整備に努めてきました。
沖縄県連は都度の選挙で党本部の方針に反して基地の県外移設を掲げてきましたが、11月には外相経験者で党外交再生戦略会議では議長を務める高村副総裁が、沖縄選出の党所属議員(計5人)に対して離党勧告に言及しつつ「県外」撤回と辺野古容認を説得、それが奏功して党本部と沖縄県連のねじれは解消。
また、辺野古沖埋め立てには県知事の仲井真氏の他にも名護市長の同意が必要ですが、まもなく1月19日に行われる同市長選で、基地受け入れを打ち出す保守系候補として末松前党沖縄県議と島袋前市長(06年4月の辺野古日米合意決定時の市長)の2人が出馬の意思を表すと、菅官房長官や石破幹事長、翁長前県連会長などが末松氏への一本化を調整しています。
それはその段階では不調に終わったものの、仲井真氏が安倍さんから「驚くべき立派な内容」の回答を受け取って埋め立て申請を承認する公算が高くなってきた25日、ともに防衛庁長官経験者の額賀元財務相(06年4月の辺野古日米合意決定時の長官)および中谷特命担当副幹事長と両氏の会談で島袋氏の出馬見送りと末松氏支持が決定(時事通信、13.12.25-21:58)、それにより、仲井真氏の埋め立て申請承認と併せて、辺野古反対派で再選を目指す現職の稲嶺市長と争う体制が整ったと言えるでしょう。

「沖縄の基地の負担軽減」について言えば、メルマガ12年8月19日号には「我が山口県では、岩国基地が普天間から空中給油機を12機引き受ける」とありますが、それについては9日13:25配信(同日13:29最終更新)の『毎日新聞』が、岩国市の福田市長が同日、普天間配備の空中給油機KC130部隊(15機)を来年6~9月にも米軍岩国基地に先行移転させる政府方針を正式表明したことと、県もそれを容認する意向であることを報じています(安倍さんの言う「12機」が決まったのは96年12月で、その間に普天間の給油機は3機増強)。
岩国市の岩国基地や上関町の上関原発を抱える山口2区は県内で唯一自民党の盤石でなかった選挙区で、国交官僚として第1次安倍政権にも参画した山本知事がこれまで08年補選と09年総選挙で民主党の平岡元法相に敗れて落選していますが(メルマガ、12.5.12)、その山本さんは12年7月に脱原発派の飯田哲也氏を破って二井前知事の後継に転じ(メルマガ、12.7.29)、昨冬12年総選挙では安倍さんの実弟の岸外務副大臣が参院から転出して平岡氏に勝利。
11月4日9:49配信の『沖縄タイムス』は、前月30日に岸さんが岩国市役所と山口県庁を訪れて15機移転の方針を伝えたことを報じています。
福田さんも岸信介元首相の選挙地盤を継いだ吹田元自治相の秘書出身だといい、05年総選挙では自民党から立候補して平岡氏を選挙区で破って当選している保守系市長であり、地元代議士、県知事、市長が保守系で揃っていたことは、山口県が普天間問題解決という文脈で「沖縄の基地の負担軽減」に協力する環境の前提だったと言えるでしょうか。
また、「沖縄の…さらなる振興」について、20日21:31配信の『産経新聞』は、「政府は20日の平成26年度予算案に関する閣僚折衝で、沖縄振興費を仲井真弘多沖縄県知事の要望額を上回る3460億円とし…」などの「「満額回答」以上」の「誠意」を伝えていますが、それに関連して、関係閣僚である山本沖縄・北方担当相は前日19日のブログ記事に「沖縄振興担当大臣として(最後の瞬間まで)予算確保のために全力を尽くす!」と記しています。
領土問題担当相を兼ねる閣僚として18日に経団連の会合で尖閣諸島を含む領土問題に関する異例の挨拶をして話題になった山本さんは安倍側近の代表格の一人ですが、仲井真氏の埋め立て申請承認の背景には、山本さんの尽力と、安倍さんが普天間問題解決のために側近を担当閣僚に充てたのが奏功したことがあると言ってよいのでしょう。
ところで、20日の『朝日新聞』朝刊「首相動静」は、前日19日に官邸を訪れた仲井真氏に、尾身元財務相が同行していたことを伝えています。
安倍さんと同じ町村派所属で第1次安倍内閣で財務相を務め、09年総選挙で引退した尾身さんは、第1次小泉内閣では沖縄・北方担当相として入閣していたことがあり、また上記記事によれば今は沖縄科学技術大学院大学の理事であるというように沖縄問題に通じていると言えますが、24日12:05配信の『沖縄タイムス』によると尾身さんは会談終了直前に、その場の判断で安倍さんと仲井真氏の二人だけの「約5分間の密談」をセットしたのだとされ、確かに上記『朝日新聞』記事は午後5:08に「尾身氏ら出る」、その7分後に「仲井真氏出る」と伝えています。
その場で普天間問題が話し合われたかどうかについては、記者の質問に対して尾身さんがそう推察し、仲井真氏は否定してみせたというように見方に違いがありますが、安倍さんと仲井真氏が短時間とはいえ二人だけで意志疎通を持ったことは信頼関係に繋がり、25日の両者の会談後に仲井真氏が「首相が言ったことそのものが担保だ」(時事通信、13.12.25-17:13)と述べたことの背景となったかもしれません。
また、関係閣僚である岸田外相が第1次安倍改造内閣で沖縄・北方担当相に起用されていることにも、注目していいのでしょう。
安倍さんの地元山口県でそうした事情があることと、また奔走した歴代沖縄・北方担当相がいずれも安倍さんに近い立場であることは、鳩山内閣の起こした普天間問題を、親米保守派の安倍さんが巡り合わせとして解決すべくして解決したかとさえ思わさずにはいません。

■17日に閣議決定された『国家安全保障戦略』には、第1次安倍内閣の制定した今の教基法の「我が国と郷土を愛するとともに…」を想起させる「我が国と郷土を愛する心」との文言が盛り込まれ、ここに安全保障と愛国心が関連づけられましたが、それは1957年5月に当時の第1次岸内閣が閣議決定した『国防の基本方針』において「民生を安定し、愛国心を高揚」とあるのに通じて、岸さんと安倍さんに共通して流れる国防・安全保障観を如実に見て取れるでしょう。
ところで、国防・安全保障と教育の連関はより遡って、1890(明治23)年3月に山県有朋の提唱した「外交政略論」において、「利益線ヲ保護スルノ外政ニ対シ、必要欠ク可ラサルモノハ第一兵備、第二教育是ナリ」とあるのを、早いものとして挙げられるでしょうか。
山県は「我邦利益線ノ焦点ハ実ニ朝鮮ニ在リ」と指摘し、当時シベリア鉄道やカナダ鉄道の敷設が進んで、互いに世界の覇権を争ったロシアが「馬ニ黒龍江ニ飲」ひ、イギリスが「東洋ニ達スル」という情勢に危機感を持って、それに備える上で「兵備」と「教育」を重要課題であると力説しています。
山県は後年、安倍さんが慕う伊藤博文の政治的なライバルとなっていますが、両者ともに若い頃には松下村塾で学んだ吉田松陰先生の門下生。
安倍、岸、山県三首相が教育と安全保障、国防あるいは兵備を不可分なものとして政治に臨む国家観は、吉田松陰先生以来の「長州の系譜」であると言えるのでしょう。


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2014年党内外情勢について

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+--【安倍晋三です。】--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+

今年も今日で終わり。
昨日出席した大納会、今年最高値でした。
来年も三本の矢を射込んで行きます。
皆さん良いお年を。

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+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+(2013.12.31[Tue] 11:02)


+--【明けましておめでとうございます】--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+

皆さま新年明けましておめでとうございます。


只今皇居へ参内して参りました。
本年が皆さまにとって素晴らしい年となります様お祈り申し上げます。
今年も邦家の為全力を尽くします。

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+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+(2014.01.01[Wed] 11:55)

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■明けましておめでとうございます。
第2次安倍内閣の下で迎える2回目の年明けとなりました。
12年総選挙と昨13年参院選が自民党の勝利に終わり、また次の選挙は衆院の解散がなければ実に2年半後、16年7月の参院選あるいは衆参同日選という安定した政治日程の中で、今年はアベノミクスによる経済再生を継続加速させながら、いわゆる「安倍カラー」と呼ばれる保守的な政策も見据えていく、という一年になっていくのでしょう。

国政選挙が当面見通されない一方、1月19日には沖縄県名護市長選、2月9日には東京都知事選と重要地方選が続きます。
名護市長選に関しては、仲井真県知事が米軍普天間基地の移設先となっている同市辺野古の埋め立てを先月27日に承認、それに反対している現職の稲嶺市長への対立保守系候補として、末松前沖縄県議が移設容認を掲げて出馬しますが、それに至るまでは高村副総裁や額賀元財務相、中谷特命担当副幹事長といった外相や防衛庁長官経験者の実力者が調整に奔走した経緯もあり、全党的に取り組んだ普天間問題のいよいよ最終段階となった市長選は、必ず越えねばならないハードルでしょう。
沖縄の基地負担軽減と振興策について、前記事でも述べたように、安倍さん周辺には前者に協力する山口県岩国市の関係者や、後者に取り組む歴代沖縄・北方担当相の存在があるのであり、その属人的な要素は、反米政権として日米同盟を相対化しようとした鳩山内閣により混迷した普天間問題を、親米保守派の安倍さんが解決すべくして解決していることを物語っているようです。
そして、岸元首相の築いた今の日米安保体制を、孫の安倍さんが建て直したということももちろん言えるでしょう。

東京都知事選については、かつて党参院議員だった新党改革の舛添前代表が有力候補。
舛添さんは第1次安倍改造内閣で厚労相として初入閣、09年9月の下野後10年4月に離党していますが、その際安倍さんは「国民的人気があり、能力もある政治家が自民党から去って行く事は残念」「日本の為に恩讐を越えて連携して行く事を模索するべき」(メルマガ、10.4.23)と述べています。
安倍さんは当初、側近で東京11区選出の下村文科相に都知事選出馬を打診したとされ、9月にブエノスアイレスで勝ち取った20年オリンピックに中心的に関わる都知事との気脈を重視していることが窺われますが、上記のように評価された舛添さんも、それに十分適うと言えるのかもしれません。
舛添さんは離党に際して党から除名処分を受けており、自民党では「除名となった者で復党を許した例は一度もない」(『朝日新聞』13.10.27朝刊)とされますが、地方議会は元来国会のような政党政治とは違うため、舛添さんが党籍を有していなくても、それを支援するのに支障はないと言えるでしょうか。
都議会では長く都議会自民党と距離のある超然的な知事が続いており、知名度が高くて無党派層にまで独自の支持基盤を見込める舛添さんもそういうタイプであろうと思われますが、1日の『朝日新聞』朝刊によれば、党都連はその舛添さんが党の世論調査でトップとなると「「人気投票で決めない」と姿勢を転じ」させたとされます。
すなわち候補者選定を巡って党本部と都連が齟齬することも考えられますが、オリンピックに備えて国と都の連携を円滑にするには、党は必勝できる候補を支援せねばならず、そうだとすれば、都連が妥協して舛添さんが推されるようになるのかもしれません。
なお、海江田代表をはじめ長妻幹事長代行や松原国対委員長が東京選出の民主党も上出『朝日新聞』によれば「候補者6条件…に該当する人としては舛添氏だけ」という状況だとされますが、今の政党支持率に鑑みて、舛添さんが民主党の支援を求めて自民党と対決するとは考えにくいため、民主党は自民党と相乗りするか、対決路線をとってそれを嫌えば別候補に流れるかということになるのでしょう。

さて、16年7月まで国政選挙の当面予定されない一方、年度明けには安倍さんの今の総裁任期も折り返し地点を過ぎて、15年9月には次期総裁選が行われるのであり、6月以降と言われる内閣改造や党、参院役員人事などの党内政局では、それも意識されるのかもしれません。
その場合、人事は12年12月の政権発足以来実に1年7ヵ月ぶりということになるため、異動が大幅になることが予想されますが、最大の焦点は石破幹事長の処遇になるでしょう。
安倍カラー政策で考えを共有する部分のある石破さんは例えば、集団的自衛権の問題で関係閣僚になる外相の候補となり得るはずですが、安保政策通の石破さんと今のリベラル系の岸田外相の印象の差は右傾化批判を招く可能性があることなどからは、外相起用は見送って他に総務相などの重要閣僚に充てるなどが考えられるでしょうか。
また、石破さんは選挙調整作業で批判を受けることがありましたが、その後任には、安倍さんと同じ長州閥の河村選対委員長や、総裁派閥町村派出身の細田幹事長代行などいずれも選挙通で調整型の長老が、安倍カラー政策を巡る党内や公明党との調整という観点からも、有力かもしれません。
他に注目されるのは、党四役のうち他の二つに当たる野田総務会長と高市政調会長の処遇、盟友の塩崎政調会長代理の再入閣、保守派で側近の加藤、世耕両官房副長官と次世代リーダー候補の西村内閣府副大臣や柴山前総務副大臣、参院で実力者の脇幹事長や長老の岩城元政審会長、農水系議員ながら安倍さんのTPP推進に協力する西川政調副会長や江藤農水副大臣、五輪メダリストの橋本前参院政審会長、反復興増税やアベノミクスにおける金融緩和などの経済政策で繋がる山本元経産副大臣、ベテランながら閣僚経験のない逢沢元国対委員長や宮路両院副総会長などの初入閣や党役員起用でしょうか。

■野党サイドはどうでしょうか。
昨12年12月18日には「触媒」として民主党と日本維新の会を巻き込んだ野党再編を目指す結いの党が結成、江田代表は今年末には「100人規模」(『産経新聞』13.12.10-14:29)の勢力結集を目指しているとされます。
江田氏は超党派勉強会「既得権益を打破する会」を通じて民主党の細野前幹事長や維新の松野国会議員団幹事長と連携しており、これから焦点になるのは、結い結党を第一、維新分裂を第二、民主党分裂を第三とする「三段ロケット」構想のうちの第二「維新分裂」なのでしょう。
主には大阪維新系の改革派と旧太陽系の極右派に大別される維新のうち、野党再編の対象となっているのは前者のみですが、12月25日の記事でも指摘したように、党や国会議員団の枢要ポストを押さえる後者の石原共同代表や平沼国会議員団代表が党の一体性を重視し、またその中には中山元国交相や三木衆院議員などのように比例復活当選で選挙地盤の強固でない議員が少なくないことから、極右系新党が次期総選挙までによほど勢いのある新機軸となることが見通される場合などを除き、リベラル系の野党再編にはもちろん、党分裂にも慎重になることが考えられるでしょうか。
すなわち、保守勢力によって維新が一体的であることは、リベラル勢力による野党再編を阻み、不完全に終わらせることに繋がると言えるかと思われますが、では保守派の安倍さんは野党再編にどう対応しているでしょうか。
安倍さんは結いが維新分裂を含む野党再編を目指して結党した同日、12月18日に石原、平沼両氏と会談、22日に維新の浅田政調会長と結いの柿沢政調会長が会談すると翌23日には菅官房長官や石破さんとともに維新の橋下共同代表、松井幹事長また松野氏の三者と会合を持っているのであり、それは安倍カラーを念頭に「政策ごとの連携」の地均しであると同時に、維新を政権に引き付けて、その分裂ひいてはリベラル系の野党再編を阻止しようとしているということかもしれません。
結いの分派元のみんなの党で安倍さんと気脈を通じる渡辺代表が、みんなの党で比例当選した結い議員13人の議員辞職を求め、国会会派離脱を渋っているのも、野党再編を鈍らせる性質のものとして、与党に好都合であることは間違いないでしょう。

また、民主党で海江田氏の勢力基盤が弱体であることも、江田氏の考える野党再編にはマイナスであるかもしれません。
安倍さんが首相復帰を実現したなか、民主党では岡田、野田両最高顧問、前原元代表、安住元財務相、枝野元幹事長、玄葉前外相など代表経験者を含む実力者が非主流派グループを形成しているほか、12月15日の『朝日新聞』朝刊によれば細野氏が前原氏の下を離れて自身のグループを4月にも「自誓会」として派閥化、民主党を割らずに「維新やみんなの一部を吸収する」という「「大きくなる再編」論」をとる考えだとされますが、海江田氏の勢力が弱くてそれら実力者たちがポスト海江田を窺いやすいだろう状況は、彼らが内向的に党に留まって江田氏の構想に呼応しないことに繋がるのでしょう。
また、高木代表代行や神本副代表、大畠幹事長、郡司参院議員会長、赤松元農水相などの旧社会党、労組系議員は主流派である上に維新の極右派と同様、野党再編の対象外となっているため分派的な行動をとるとは考えづらいと言えます。
以上のように民主党も一体性が維持される方向性にあるのだとすれば、「三段ロケット」は第二段に続き第三段も見通しが厳しいとすべきなのかもしれません。
その結果、野党再編は「みんなの一部」としての結いとあるいは維新のごく一部が民主党に合流するという、江田氏の「三段ロケット」より細野氏の「大きくなる再編論」に近い形で進む可能性の方が高いと考えられますが、それは決して大きなうねりにはならず、しかもそれを民主党で主導するのが細野氏であるとさえ限らないのでしょう。
上出『朝日新聞』記事は、前原、細野両氏の間に軋轢が生じて、双方のグループに参加していた辻元幹事長代理や小川前副幹事長、泉前国対副委員長が細野グループから離脱したことを伝えていますが、前原氏などが復権を目指して細野氏を牽制抑圧するとすれば、細野氏は党を出ないとする今の方針を転換するか否かの決断を迫られるようになるのかもしれません。

自民党は、民主党、維新、結いによる野党再編を容易に許さないものと考えられますが、その各勢力に対しては自民党の安倍さんや菅さんが維新を懐柔(維新分裂の阻止)、両者の盟友の渡辺さんが結いを圧迫し(触媒の無力化)、民主党では皮肉にも海江田氏の存在が、野党再編を挫こうとする政権に好都合(民主党分裂の阻止)な要諦になっているということでしょうか。
今の野党の枠組みを基本的には崩さない「大きくなる再編論」は、その名に反して「三段ロケット」よりインパクトが小さく思えますが、野党再編が自民党やみんなの党の干渉と民主党の内向的な姿勢で「三段ロケット」でなくスケールの小さな「大きくなる再編論」に終始するのなら、その対野党工作は16年の衆参各選挙も見据えて、政権の一種の危機管理、リスク軽減策ということであると解せるのかもしれません。


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野党再編について

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+--【安倍晋三です】--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+

本日伊勢神宮を参拝いたしました。
神社の清々しい凛とした空気の中で身の引き締まる思いでした。
日本の平和と繁栄を願うと共に天皇皇后両陛下の御健康と皇室の弥栄を心よりお祈り致しました。

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■6日の伊勢神宮参拝の報告です。
報道によると、この参拝には地元三重4区選出の田村厚労相をはじめ、甘利経済再生担当相、岸田外相、下村文科相、石原環境相、林農水相などが同行。
12年9月の総裁選では、参院比例区選出で神道政治連盟に支持される有村両院副総会長が推薦人となっていますが、保守派の安倍さんと日本古来の穏健な信仰としての神道が親和的であるということは言えるのでしょう。

安倍さんは5日朝には昭恵夫人とともに地元下関市で、1185年に壇ノ浦に沈んだ安徳天皇を祀る赤間神宮にも参拝しています。
安倍さんの地元下関の赤間神宮境内には安徳天皇の外戚の平氏一門のうち壇ノ浦で入水した中納言教盛、権中納言知盛、参議経盛、権右中将資盛、権右少将有盛、能登守教経らを供養する「七盛塚」が建立されていますが、ぜひ訪れたい場所です。
壇ノ浦では他に資盛、有盛兄弟の従兄弟の播磨守行盛も入水したとされますが、こちらは祀られないものでしょうか。

■4日、民主党の前原元代表が野党再編について「来年の統一地方選までに自民、公明両党に代わる政権の受け皿を作ることは難しいとの認識を示した」(『産経新聞』13.1.4-18:09)ことが報じられました。
それはあるいは、前日3日14:06配信の時事通信の記事で、海江田代表と距離のある前原氏などが「野党再編の主導権を狙」っているとされることと、夏以降の「海江田降ろし」の可能性が指摘されたのを受けて、執行部からの警戒を避けようとしたものだったと考えられるでしょうか。
上記時事通信記事によれば前原氏は維新の橋下共同代表と「接触を重ねている」のだとされ、維新の松野国会議員団幹事長および結いの党の江田代表と超党派勉強会を結成した細野前幹事長とともに、野党再編のキーマンの一人と目されています。
野田、岡田両最高顧問や安住元財務相、枝野元幹事長、玄葉前外相といった、菅、野田両内閣期に要職を歴任した実力者と連携を維持していることがその勢力基盤となり、自民党で安倍さんが総裁ついで首相に復帰したことが、代表経験者の前原氏に意を強くさせているということもあるいはあるかもしれません。
さて、「三段ロケット」の第一段として昨年12月にみんなの党を割り野党再編の「触媒」としての結いの党を立ち上げた江田氏は、第二段として「通常国会閉会後に維新と再編新党を旗揚げ」、第三段として「夏以降に民主党の一部との合流を目指す筋書き」であるとされますが、それは「15年春の統一地方選を見据え」てのことだとされているのであり、前原氏が4日に「『統一地方選までに』という政治スケジュールを切ることが、果たしていいのか」との表現をしたのは、江田氏とは「野党再編」の方法論を異にしていることを暗示していると言えるでしょうか。
昨12年12月15日の『朝日新聞』朝刊は、細野氏が野党再編について、あくまで民主党を核にしてそこに維新やみんなの党の一部を吸収しようと考えるのを「大きくなる再編論」と表していますが、それは民主党の一体性を維持することが前提されているという点で、まず自らみんなの党の一体性を否定してみせ、民主、維新両党にもそれを要求する江田氏の「三段ロケット」と大きく異質なものであることは明らかでしょう。
ほかに非主流派の安住氏も「党再建に軸足を置」(『産経新聞』13.12.15-22:07)いているといい、前原氏の再編論もそれらと同様なのであろうと類推できますが、その背景にあるのは、海江田氏の代表権力の脆弱さと、15年春の統一地方選以降の政治日程かもしれません。
海江田氏の今の代表任期は統一地方選の後、15年9月までですが、その党内基盤が強くないことは、自民党で12年9月に当時総裁だった谷垣法相が政権復帰を叶えられなくて総裁再選断念に追い込まれたように、海江田氏が代表に再選されないことを思わせるのであり、それは、前原氏などや細野氏にポスト海江田を窺いやすくさせ、「三段ロケット」に呼応せずに党に留まって「大きくなる再編論」を志向させているのでしょう。

また、自民党第2次安倍政権の好調の陰で、年内に党勢回復を実現して統一地方選での勝利に繋げることの見通しが代表交代の有無に関わらず厳しいだろうことは、ポスト海江田の有力者を萎縮させ、今夏にもあり得るとされる「海江田降ろし」が意外にも起きないことに繋がるかもしれません。
前回11年4月の統一地方選について、例えば三重県知事選では、経産省出身で自民党などの推薦した今の鈴木知事が初当選、民主党推薦の松田前津市長が僅差で落選しています。
三重は岡田氏や中川幹事長代行の地元で県北を中心に元来民主党の強い地域ですが、12年総選挙では1区でそれまで自民党の川崎元厚労相と激戦してきた中井元法相が引退したものの後継者に地盤を引き継げず、昨13年参院選では高橋前参院政審会長が落選しており、知事選でも現職の鈴木氏(15年4月には40歳)が再選を目指せばそれを破るのは困難であるとすべきかもしれません。
また、同じく11年4月に自民党推薦で三選した北海道の高橋知事も任期満了を迎えます。
北海道は自民党の町村元官房長官や伊達参院国対委員長の地元である一方、民主党の横路最高顧問や荒井元国家戦略担当相の地元であるほか、北教組など民主党の支持団体が強いですが、12年総選挙では道内全12選挙区で自民党および公明党が勝利して民主党は全敗、比例復活当選も横路、荒井両氏のみに留まって小平前国家公安委員長や鉢呂元経産相、三井前厚労相などが落選。
13年参院選では自民党の伊達さんがトップ、民主党の小川元首相補佐官が次点で当選しているもののその差は32万票と大きいのであり、近年の選挙結果からは民主党は北海道でも弱まっていると考えられ、11年知事選で民主党推薦の木村俊昭氏に130万票差で圧勝している自民党系の高橋氏(15年4月には61歳)が四選を窺えば、来春の統一地方選で民主党推薦候補がそれに勝利するのはこちらも厳しいとすべきでしょう。
11年統一地方選で行われた11の知事選のうち、民主党は北海道と三重を除く9都県で自民党との相乗りもしくは自主投票としている上、その北海道と三重では以上のように敗北しているのであり、現職の圧倒的に有利な各知事選のいずれもで楽観できないことは党内各実力者が統一地方選を海江田体制でやり過ごそうという思惑で一致するのに繋がり、その結果、民主党の一体性はなお維持されるのかもしれません。

■さて、民主党が一体的であり続けて野党再編のルートとして「三段ロケット」より「大きくなる再編論」が有力であることは、同時に維新が一体的であり続けることにも繋がるでしょう。
維新では石原共同代表を中心とする旧太陽系と、橋下氏に近い大阪維新系の路線対立が一貫して潜在的で、それは、2月9日投開票の東京都知事選に立候補した田母神元航空幕僚長を石原氏が「個人的に」支援するとする一方、党としては自主投票の方針を決めたことの背景でもあろうと言えますが、石原、橋下両氏が情意投合の間柄であることや、旧太陽系で比例単独当選以外の衆院議員7人のうち実に5人が比例復活当選であるという選挙区事情は、野党再編の対象となっていない旧太陽系議員に党の一体性を志向させるのに十分かもしれません。
石原氏が5日に「安倍政権との距離感」に関して「是々非々」と表現して「政策課題に応じて協力する考え」を述べ、例えば「集団的自衛権の行使容認について…期待感を示し」(『産経新聞』13.1.5-15:42)、平沼国会議員団代表が6日、「憲法改正や集団的自衛権の解釈変更で安倍政権と連携を目指す考えを示した」(『朝日新聞』13.1.7朝刊)ことは旧太陽系の対政権方針を端的に表していますが、野党再編によって「完全に」野党化すれば自民党とのそうした関係性は築けず、それを避けるために分党となれば次期選挙事情が危ういとすれば、旧太陽系はいよいよ党の一体性を維持しようとするでしょう。
また、安倍さんや菅官房長官が石原、平沼両氏ばかりでなく橋下氏や松井幹事長、松野氏などとも意思疎通を図っているのは、安倍カラー政策で維新やみんなの党との「政策ごとの連携」を模索するために維新分裂すなわち保守系野党の少数化を阻止しようとしているものであろうかとは従前指摘しているとおりです。

ところで、旧太陽系と逆に党分裂も視野に入れて野党再編に積極的であるのは、小沢国対委員長が挙げられるでしょう。
小沢氏は昨年12月15日に野党再編の「第2弾」として「3~4月以降」の結いと維新の「合流」と、「第3弾」としての「民主党からの合流」に言及していますが(『読売新聞』13.12.16-7:54)、結いは全議員15人のうち小野幹事長や畠中国対委員長など13人が比例当選であるため、それとの合流とはすなわち維新の解党や分裂を意味するものであり、維新や民主党の一体性を崩そうとする江田氏の「三段ロケット」構想に前向きであることを思わせます。
すなわち小沢氏は旧太陽系はもちろん、既出3日の時事通信社の記事によれば「維新解党も辞さない考え」ながら「石原氏との決別に否定的」でもあるという橋下氏以上に野党再編に積極的であると言えますが、その背景には、小沢氏の選挙区事情があるのかもしれません。
小沢氏の地盤の山梨1区は0増5減の定数削減の一環で東西に分割、それぞれ今の2区と3区に併せられることが決まっています。
維新は12年総選挙で両選挙区に候補者を立てていないため小沢氏がどちらかに転じる余地はあるだろうものの、維新は関東では支持の広がりを欠いている上、2区は無所属と自民党の議員、3区は民主、自民、みんな三党の議員が当選している激戦区であるため維新議員としてそこに割って入るのは困難であるとせざるを得ず、また比例復活当選なので「大きくなる再編論」によって民主党に復党することもそもそも不可能であることが、小沢氏が「三段ロケット」に近くて維新解党と新たな野党結成を見据えていることに影響しているのは間違いないでしょう。

維新内部にはそのように野党再編に対して両極端な考えが混在していると言えますが、維新は衆参計62人の議員のうち46人が比例当選なのであり、そうである以上、野党第一党の民主党が「大きくなる再編論」を採り、また「海江田降ろし」も自重するなど内向的で一体的である限り、民主、維新両党ともが分裂して合流するという「三段ロケット」による野党再編の見通しが開けないことに他なりません。
もちろん旧太陽系を除いたグループが党を割り、ただ結いとのみ合流して新党を結成、民主党と選挙協力することも考えられますが、各選挙区で候補者がバッティングする上、大半が比例復活当選議員ということになるその新党が選挙を凌げる見通しも厳しいとすれば、維新各議員が党の一体性を維持して次期選挙に備えようとする消極的な力学が作用する可能性が高いとすべきなのでしょう。

「三段ロケット」と「大きくなる再編論」が並存する野党再編について、前者が統一地方選を見据え、しかしその見通しが厳しければ、それは民主党が萎縮して後者に傾くことの一因となり得、そのことは更に維新をも萎縮させる、という関係性は看取できるかもしれません。
そうだとすれば、自民党が統一地方選に向けて盤石を期することは野党再編阻止の布石となると言えます。
安倍カラー政策を野党まで巻き込んで可及的多数で実現するためにも、野党再編は阻まれるべきでしょう。


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地方選展望

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■安倍政権への信認を問われる中間選挙の性質を帯びた東京都知事選が9日に迫っていますが、その翌々週23日には安倍さんのお膝元、山口県で知事選があります。
それは、1月14日に健康問題で辞任した山本前知事の後任を決める選挙で、自民党と公明党は総務省出身の村岡嗣政さんを擁立して推薦。
一方民主党は自主投票を決めて不戦敗が既に確定しており、安倍政権・自民党にとっては舛添さんの優勢が伝えられる東京に続いて山口でも勝利して、都道府県知事選の連勝も見込めるということになります。
野党陣営には15年4月の統一地方選を焦点にした野党再編の動きがありますが、今回の都知事選と16年7月の参院選のちょうど間にある統一地方選は、政権の命運にとって重大な「第二の中間選挙」と位置づけるべきでしょう。

その統一地方選に関して、与野党対決型となりうる大型選挙は1月9日の記事で指摘したように例えば北海道と三重の知事選および札幌市長選が挙げられます。
北海道では3期目の高橋知事、三重では1期目の鈴木知事がいずれも自民党推薦ですが、都道府県知事選では現職が圧倒的に有利であるため、両者が続投を目指すとすれば、自民党は北海道と三重では主導権を持つことも期待できるかもしれません。
札幌市長選について、党札連は1月16日、前回選挙に続き総務省出身の本間奈々さんを推薦候補に決めていますが、同日22:06配信の『毎日新聞』によれば市経済界の一部には秋元副市長の推薦を求める意見があったとされます。
この「混乱」により、橋本前参院政審会長が22日に札連会長を辞任、後任には橋本さんの所属派閥会長でもある党重鎮の町村元官房長官が2日、19年ぶりに再登板していますが、1月18日10:21配信の『読売新聞』によれば、本間さん擁立を主導したのが町村さん自身であるのだといい、札連は市長選に臨む体制を強化したと言えるのでしょう。
北海道においては、知事選では03年4月以来高橋さんを擁する自民党が強いものの、07年と11年の過去2回、統一地方選の中で知事選と同日に行われている札幌市長選は同年6月以来3期連続当選の現職の上田市長を推薦してきた民主党が制しているというように、自民党と民主党が知事と札幌市長を分け合う状況が続いています。
すなわち自民党にとってはその「バランス」を崩すことが北海道における悲願であろうと思えますが、本間さんを推す町村さんも「上田市政と対決してきた自民党が、(上田市長の側近である)秋元氏に乗っていいのか」(同上『読売新聞』)と強硬論を主導しているのであり、民主党が12年総選挙では道内全12選挙区で敗れるなど、元来強い北海道においても党勢を低迷させている現状は、市長選でのその連勝を止める好機であると言えます。
町村さんは札連会長就任に当たって「受けた理由はただ一つ。次の市長選で勝つため」(『読売新聞』14.2.3-10:24)と語って上田市政打倒に強い決意を示しており、15年4月の札幌市長選は統一地方選の中でも党を挙げて当たるべき総力戦となるのではないでしょうか。

■それらを含む統一地方選に先んじて、今年11月に福島と沖縄の各県知事選、15年2月には愛知県知事選も行われます。
福島の現職、佐藤知事は現在2期目、民主党の元参院議員で、06年知事選には民主党などの推薦を得て臨み、自民党推薦の森少子化担当相を破って初当選。
13年12月31日16:37配信の時事通信の記事によれば自民党は前回10年の選挙ではその支援に回ったものの、次回については「同氏が立候補する場合は対立候補を擁立すべきだとの声が強まっている」とされます。
沖縄では2期目の現職の仲井真知事が元来自民党系で普天間基地について昨年12月には名護市辺野古への移設を容認して政権と歩調を合わせているものの、1月10日に県議会が知事辞任要求決議を可決しているのに加え、高齢で体調問題もあることを考えれば3期目を目指すか不透明だと言え、また1月19日の名護市長選で自民党の推した末松前沖縄県議が敗れていることも考慮する必要があるでしょう。

愛知では、1期目の現職で1月31日8:03配信の『読売新聞』によれば「再選を目指すとみられる」という大村知事の任期満了までが残り1年。
かつて自民党の衆院議員であった大村さんは11年2月の前回知事選に「党県連の方針に反して立候補し、除名処分となった」経緯がありますが、民主党出身の地域政党「減税日本」代表で、同日に出直し市長選に臨んだ河村名古屋市長と協力関係を築き、自民党の支援した候補(今の重徳維新衆院議員)を大差で破って初当選。
地域政党「日本一愛知の会」代表でもある大村さんはその後、大阪市長で当時大阪維新の会代表だった維新の橋下共同代表や河村氏と並んで有力地方首長の代表格となり、12年2月10日の記事で述べたように、当時の石原新党構想にも積極的な姿勢を見せていました。
同年11月の衆院解散までに石原新党構想とそれら有力地方首長の間には活発な離合集散が見られ、その中から、今の維新の石原共同代表が率いた旧太陽の党と橋下さんの大阪維新が合流して日本維新の会が結成されましたが、その過程で、当初旧太陽との合流に積極的だった河村さんの減税日本が弾き出されることになりました。
12年11月21日2:30配信の『毎日新聞』によると大村さんはそれに先んじる8月に「維新との連携を視野に」中京維新の会を設立したことで河村さんとの「仲が決裂」していたものの、その頃には「2人の仲は回復基調」にあり、大村さんは河村さんとの盟友関係を重視し、石原新党構想からの「河村外し」を契機に日本維新の会の顧問を辞任。
そうした関係から来年の知事選では河村さんが大村さんを応援することが考えられますが、自民党は大村さんにどう対応することになるでしょうか。
実は13年参院選に愛知県連会長も務めた党参院の実力者、鈴木元官房副長官が出馬せずに引退したのは、12年6月11日の記事に既に記したように「知事選などで悪化した大村秀章知事や県連幹部との関係が修復できないことが背景に」(『読売新聞』12.5.30-7:19)なったとされるのであり、自民党出身であるとはいえ除名されている大村さんとの付き合い方は、都知事選で、ちょうど同じように野党時代に除名された舛添さんへの支援のあり方が議論になったのと同様、難しい点のあることが窺えるでしょう。
ところで、上記1月31日の『読売新聞』は大村さんが前日30日に官邸で菅官房長官と面会していることを伝えます。
それによれば菅さんは大村さんとは「衆院議員同期当選」で知事選でも「積極的に応援」、「今も親交が続く間柄」だとのこと。
記事はまた大村さんが「河村一辺倒からの脱却」を目指して自民党や公明党、民主党といった「主要政党との連携強化」を図っていると伝え、その大村さんにとって政権の実力者となった菅さんは「自民党との距離を縮める重要な存在」であると指摘。
県連内にはなお「大村氏への反発がくすぶ」っているとされる一方で「「知事との連携と対抗馬擁立を並行して考えないといけない」との声さえ漏れ」るようになっているというのは、大村さんは除名されているとはいえ、知事選では自民党が推すようになる展開を思わせます。
その際、支援の形式は推薦ないし支持にせよそれ未満にせよ、舛添さんの例に鑑みても党本部が乗り出すことはあまり考えられず、県連レベルのものに止まるでしょうが、菅さんの存在と舛添さんの先例が梃子になることは間違いないのでしょう。

なお、1月9日には維新の松井幹事長が河村さんに対して減税日本の合流と代表代行か副代表への就任を打診したことが報じられました。
この「名阪」野党再編の動きを伝える同日10:27配信の『産経新聞』によれば、河村さんの構想が「愛知県議会と名古屋市議会での統一会派結成」という地方政治レベルのものであったのに対して、松井さんの提案が「減税日本が日本維新に合流」するという踏み込んだ内容だったため河村さんは「地方議会での連携を優先したいとして即答を避けた」といいますが、ここで注目すべきは、河村さんが維新と接触する上で「統一地方選での連携」を模索していることでしょう。
維新は現在、大阪維新系を中心に統一地方選を見据えた野党再編の渦中にありますが、維新によって河村さんが「名阪」のそれに巻き込まれることは、菅さんを通じて党・県連とも関係修復を図る大村さんとの「県内」の盟友関係と矛盾する部分があると言えます。
すなわち、大村さんが維新顧問を辞任する意思を示したときとは逆に、今度は河村さんが維新との距離の取り方を判断せねばならなくなることも予想されますが、維新と減税の主導権争いが既に兆していることもあり、河村さんは恐らく、大村さんとの県内連携を優先することになるのではないでしょうか。
それはとりもなおさず野党再編が広がりを欠くことにほかならず、維新に責任野党たることを期していて野党再編を阻止したいであろう安倍政権にとっては好都合かと考えられますが、逆に言えば、大村さんと気脈を通じておくことが「名阪」野党再編への間接的な圧力となり得るということは指摘できるかもしれません。
今回、都知事選で除名処分を受けた舛添さんを安倍さん以下が党として支援していることは、来年の愛知県知事選で「菅人脈」の大村さんを推す恰好の伏線となることでしょう。

■維新の橋下さんは都構想の座礁を打開しようと出直し市長選に臨みますが、安倍自民党はそれにどう当たるでしょうか。
党では高村副総裁、石破幹事長、脇参院幹事長など幹部が相次いで批判、竹本元財務副大臣以下の党府連も「候補者を擁立しない方針」(時事通信、14.2.5-11:10)を示していますが、各幹部が口を揃えるように「大義名分がない」のを口実に対立候補を立てず、結果的に維新との全面対決を回避することは、安倍さんや菅さんが考える責任野党構想に合致するものだと言えるのであり、党としては「戦略的不戦敗」に落ち着くのかもしれません。

2日に投開票された岐阜市長選と9日投開票の川口市長選で「分裂選挙が相次いでい」て「地方組織が弱体化しかねないと懸念する声もある」(『産経新聞』14.2.2-10:07)とされますが、実は岐阜市は野田総務会長、川口市は新藤総務相の地盤。
岐阜では党支持で現職の細江市長が5選を決めたものの、民主党を離党した無所属の柴橋元衆院議員にわずか1507票差(惜敗率97%)まで迫られたのであり、地方選の「取りこぼしが続く」(同上)状況で党役員や閣僚の地元ですら分裂選挙となるのは小さくない課題と言わねばならないのかもしれません。

また、地方選ではないながら、徳洲会事件で離党した徳田元国交政務官の失職が「ほぼ確実」(『朝日新聞』14.1.31-14:05)とされることで、鹿児島2区では補選が行われることになります。
4月にも行われるとされるこの選挙については「消費税率の…引き上げ後、初の国政選挙となる」「“徳田色”を払拭した「クリーンな候補者」を見いだせるかどうか」(『産経新聞』13.11.24-12:00)などの指摘が既にあるとおりです。
自民党が13年参院選で18議席を得た比例区に立候補したものの20位で落選した園田元衆院議員はかつて2区を地盤にしていた「即戦力」であると言えますが、13年11月20日12:40配信の『産経新聞』は園田さんが参院選で徳洲会の支援を受けていたことを伝えており、園田さんが候補に浮上したとしても、そのことはネックになるのでしょう。
思えば、安倍さんが総裁に復帰して最初の国政選挙、つまり12年10月28日投開票で党公認の宮路両院副総会長が7選を決めて国政復帰したのも鹿児島県内、3区の補選だったのは記憶に新しいところです。
長州山口出身の安倍さんが節目ごとに試される選挙が、明治維新で長州と同盟、新政府や軍部では主導権を争った薩摩鹿児島で続くというのは、不思議な巡り合わせであると言えるでしょうか。
統一地方選まで9ヵ月となる常会閉会後には内閣改造があるものとされますが、もしもそれに党役員人事が合わせられるなら、幹事長や同代行、選対委員長には河村選対委員長や山口元首相補佐官、細田幹事長代行といった選挙通の長老やベテランが配されることも考えられるでしょう。


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政高党低の限界

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■国会では、集団的自衛権の行使を解禁しようとする解釈改憲に関する与野党の論戦が展開されていますが、13日12:59配信の時事通信社の記事によれば、前日12日、安倍さんが民主党の大串政調会長代理の質問に答えて「政府の最高責任者は私だ。政府の答弁について私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」と述べたことに、野党だけでなく与党内からも批判が上がっています。
すなわち13日の総務会では村上元行革担当相や野田元自治相、船田元経企庁長官などが批判的な考えを示し、野田総務会長がそれらを「首相に伝える」としたとされますが、これは憲法論という個別の政策論=各論というよりむしろ、第2次安倍政権の発足以来続く「政高党低」とも呼ばれる政府・官邸と与党の関係性に対する不満が表れたものだと、総論として受け止めるべき出来事だったとせねばならないのでしょう。

政府・官邸あるいは党執行部と与党の関係は変転を繰り返しており、例えば森元首相が00年4月、小渕元首相の健康問題悪化という緊急時に自身と青木、村上両元参院議員会長、亀井元建設相、野中元官房長官といった実力者の調整で首相となったともされる森政権や、07年9月に安倍さんが第1次政権でやはり健康問題により辞任した際、党内各派閥が当時幹事長だった麻生副総理を排して連携、福田元首相がそれに擁立された福田政権などは自ずと、党に比重を置いて立脚し、官邸の主導権はその分だけ相対的であったと言えます。
逆に、01年4月から06年9月まで5年5ヵ月の長期に渡り首相を務めた小泉元首相が世論の圧倒的な支持を基盤とし、同じ派閥の森さんや参院の青木さんと気脈を通じつつ一方で野中氏や今の維新の藤井国会議員団総務会長などを「抵抗勢力」として圧迫、人事でも派閥の推薦を受けない一本釣りを旨とした小泉政権では、官邸が党に対して優位であったことは明らかでしょう。
また、そういう変転は同一政権内で起きることもままあり、例えば官邸主導を志向した第1次安倍政権では07年参院選での敗北を境に、それまで菅官房長官や塩崎政調会長代理、中川元財務相、下村文科相や世耕官房副長官といった盟友や側近を要職に多く充てていたのを転換し、町村元官房長官や額賀元財務相、二階元総務会長、高村副総裁といった各派閥の会長や実力者、与謝野元官房長官などの長老を軒並み閣僚や党役員に起用したのは、政権の体力が低下して党に対する官邸の主導権が後退した結果だったことも明らかでしょう。
最近では野党時代、09年9月から12年9月にかけて谷垣法相が総裁であった時期に、09年と10年の人事では川崎元厚労相や逢沢元国対委員長といった側近、あるいは石破幹事長や小池元総務会長といった派閥と距離のある実力者を党役員に抜擢して脱派閥と総裁主導権の強化を図り、参院でも10年議員会長選挙で町村派の谷川元幹事長を破った中曽根前議員会長が山本沖縄・北方担当相や小坂元幹事長を役員に充ててそれに呼応する格好になったものの、11年には町村、古賀、額賀三派が巻き返して伸張し、谷垣さんや中曽根さんの主導権が低下。
その結果、石破さんと小池さん、逢沢さんは政調会長と総務会長、国対委員長を、参院でも山本さんと小坂さんが政審会長と幹事長を退任し、後任にはそれぞれ額賀派の茂木経産相、町村派の塩谷元総務会長、古賀派(今の岸田派)の岸田外相、町村派の岩城元参院政審会長、古賀派の溝手参院議員会長といういずれも大派閥の実力者や長老が代わったことを挙げねばなりませんが、これは、翌12年の総裁選で当時幹事長だった石原環境相が古賀、額賀両派に擁立されて執行部からの候補となり、谷垣さんが立候補断念に追い込まれたことの伏線だったのであり、安倍さんの今の総裁任期満了を16年9月に控えて、党運営に関する重大な示唆とせねばならないのでしょう。
そのように、ある組織においてトップと実力者の角逐で権力のバランスが変転することは政治史上しばしば見られるのであり、例えば11世紀初頭の日本では摂関家出身の藤原道長が三条天皇や皇太子敦明親王を圧迫して退位や廃太子に追い込み、逆に12世紀前半には、天皇家の家長として院政を敷いた白河法皇が関白藤原忠実を更迭したことが端的でしょう。
またヨーロッパなら13世紀半ばのハンガリーでアールパード家の治世末期、アンドラーシュ2世、ベーラ4世父子の時代に大貴族が台頭して以降王権が相対化し、有力諸侯が自立して王国が事実上分裂した後、14世紀に成立したフランス由来のアンジュー家のカーロイ1世、ラヨシュ1世父子が新興貴族を重用しながら地方君侯を打破して王権強化を実現したことなどを挙げてよいでしょうか。
そして翻って現代日本で、日本版NSCを創設するなど官邸主導志向の安倍さんは、上の例で言えば白河法皇やアンジュー家のハンガリー王のように主導権を確立したいタイプのトップであるということになりますが、トップの求心力の強弱は古今東西で揺り戻しの連続なのであり、俯瞰すれば、安倍さんも現代日本の首相として、そういう政治史上の最前線に立っているということなのでしょう。
その揺り戻しという模索を通して、政府・与党関係を最適化することが、政権の安定ということかもしれません。

■それに通じるものとして挙げられるのは、13年9月6日0:48配信の『産経新聞』にある「歴代首相の多くは定期的に内閣改造・党役員人事に踏み切ることで党内を掌握してきた」との指摘でしょう。
1月19日には参院の実力者である脇幹事長が「人事は組織を活性化していく上で極めて大事だ。閣僚の異動を少し考えた方が、トータルとしては力が上がっていく」(『産経新聞』14.1.19-17:59)と述べていますが、今の常会が終われば、6月末から7月中にも内閣改造と党役員人事が行われる可能性は高いでしょう。
昨年9月に副大臣・政務官人事と、石破さん側近の鴨下幹事長補佐が体調不良により国対委員長を辞任したのに伴う玉突き人事は行われたものの、12年12月末の第2次安倍内閣の発足以来、閣僚と党四役の人事はこれまで行われておらず、それが常会閉会後だとすれば、次の人事は実に1年半以上ぶりのものということになります。
ところで、今の党四役の任期は9月までであり、常会閉会後の6月末か7月中にその刷新があっても、新役員の任期は前任者の残任期間で僅か2~3ヵ月程度となるため、9月にはその顔ぶれがそのまま再任されることになると考えられるでしょうか。
すなわち、今夏にも予想される次の内閣改造と党役員人事は15年4月の統一地方選と、同年9月、安倍さんが再選を目指す次期総裁選の前では最後の主要人事となる可能性が高いと考えるべきかもしれません。
そうだとすれば安倍さんはそこで築いた体制で党内外の選挙に臨むことになるのであり、次の人事では統一地方選対応と総裁再選戦略が二大テーマとして念頭されることになるかとは、十分考えてよいでしょう。
また上述のように党内では政高党低状態が限界を迎えつつあって不満が鬱積しているのであり、そういう政府・与党関係を微調整して是正することも狙いとなると考えられますが、それは党内を意識したものという点で、総裁再選戦略と関連していくと言えるでしょう。

統一地方選については党で幹事長や同代行、選対委員長の人選に注目されますが、今の幹事長の石破さんは在任が既に1年5ヵ月、夏には1年9ヵ月ほどの長期になるため、次は退任して重要閣僚(総務相など)として入閣することが考えられるでしょうか。
保守政策を共有する石破さんは、ただちに次期総裁選に挑戦することは考えづらいものの依然将来の首相の有力候補としての存在感があるのであり、引き続き処遇していくことは政権の体力強化に繋がるでしょう。
また、安倍さんと同じ町村派出身の細田幹事長代行と長州閥の河村選対委員長はいずれも選挙通の長老であり、引き続き党の要職に就くことを期待したいと思います。
河村さんは安倍さんが首相に復帰した12年12月から今の選対委員長の地位にありますが、ホームページによればその前にも選対局長や同代理を務めているため、09年10月以来4年5ヵ月以上、選挙実務に当たっていることになり、統一地方選を来春に控えて、安倍さんと近い選挙通として、幹事長候補の最右翼であると言ってよいのではないでしょうか。
細田さんは選挙制度改革の作業に当たっているほか、麻生政権で党幹事長を務めていた際、選対委員長だった古賀元幹事長が、当時の宮崎県知事の東国原前衆院議員の総選挙への擁立工作の失敗や09年7月の東京都議選敗北で辞任したのを受けて急遽その職務を引き継いだ経験があるのであり、今回は満を持して選対委員長を任されることもあるかもしれません。
河村さんと細田さんは自民党が下野した09年総選挙の際の麻生政権で官房長官と党幹事長を務めたコンビですが、当時は当初から自民党の劣勢で敗北は既定的だったのであり、改めて両者が選挙実務に当たり、今度は然るべき状況で手腕を発揮することが期待されます。
さて、次いで幹事長代行には山口元首相補佐官が想定できるでしょうか。
当選8回ながら閣僚や党四役ないし三役に列んだ経験がなく、次の人事で処遇される候補であると考えられる山口さんは、そのホームページによれば12年10月に選対局長代理に就いていますが、当時の局長は河村さんであり、河村さんが幹事長、山口さんが同代行となってその際のコンビが再現されるのであれば、意思疎通は確実だと言ってよいかもしれません。
ところで、12年総裁選で安倍さんと石破さんが決戦投票を争って以来、党では幹事長ラインが安倍系と石破系のたすき掛けになっていますが、上述のように石破さんが幹事長を退任して入閣する可能性が高く、安倍さんに近い後任がそれに代わるとすれば、幹事長代行は安倍カラー政策で連携する石破さんを尊重するためにも石破系から起用されるべきだと考えたいところです。
ここで山口さんは麻生派に所属していると同時に、さわらび会や無派閥連絡会にも参加し12年12月の組閣では石破さんが総務相に推したように石破さんにも近いのであり、そういう立ち位置に照らしても、幹事長代行候補に挙げてよいと言えるでしょう。

現在、政高党低と称される状況を具体的に指しているとされるのは、幹事長の石破さんが無派閥や中堅・若手世代の議員からの支持が厚く、発言力のある重鎮や長老、派閥と距離があること、また総務会長の野田さんと高市政調会長もいずれも無派閥で主要閣僚の経験がなく党役員就任が初めてであることなどでしょう。
すなわち逆に言えば次の人事では党四役には派閥に基盤があって閣僚や党役員の経験のある重鎮や長老を充てることが、政高党低の是正ひいては党内の不満解消と安倍さんの総裁再選戦略に繋がるという構図がある、と考えられるでしょうか。
また、党内各派閥をはじめとする各勢力から遍く閣僚や党役員を起用することも要諦となるでしょう。
それらの観点から例えば、大島派出身の長老で副総裁の高村さんと、谷垣グループ所属で国対経験の長い佐藤国対委員長は再任、幹事長と同代行には上述のとおり二階派の河村さんと麻生派で石破さんとも近い山口さん、選対委員長には町村派で幹事長経験者の細田さん、また総務会長には額賀派会長で政調会長経験者の額賀さん、政調会長には岸田派の塩崎さんがそれぞれ起用されると考えるとすれば、それは派閥勢力との距離感や各派閥のバランスに適い、重厚感もある体制だと言えるでしょうか。
また安倍さんの側近である萩生田総裁特別補佐も13年1月以来の在任であり、例えば次は首相補佐官や文科副大臣などとして政府に入り、後任には西村内閣府副大臣が代わることも考えられるでしょうか。
西村さんは町村派所属、安倍さん側近として次世代保守派のリーダーで将来の首相候補ですが、第2次安倍内閣の発足した12年12月から既に長く現職にあり、台頭していく過程で、次は活躍の舞台を党に移す可能性が高いかもしれません。
政高党低を是正したとしても、高村さんや河村さんなどの長州閥の長老、塩崎さんなどの盟友、西村さんのような側近の協力を得て布石とすれば、安倍さんが党に対して官邸主導を確保することは依然可能でしょう。


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いくつかの党内情勢から

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■22日17時00分配信の『産経新聞』の記事以降、次の内閣改造と党役員人事に関する報道が相次ぎましたが、その一つ25日10:42配信の時事通信の記事は、「党内では官邸主導による政策決定の在り方に不満が募っていること」と「入閣待望組からは改造を急ぐよう求める声が高まりつつある」ことを指摘しています。
そのうち「政高党低」とも称される官邸主導への「不満」に関連して、21日の当ブログの記事では、13日の総務会で解釈改憲に関する安倍さんの国会答弁への批判が起こったことに触れましたが、他にも、(a)1月21日にやはり総務会で政府の「産業競争力強化に関する実行計画案」が「事前に内容の説明がなかったことに党側が反発し、「門前払い」に」されたこと(時事通信、14.1.21-17:25)や、(b)13年12月に14年度診療報酬改定について実質プラスを求めた党が「増え続ける医療費の抑制を目指す財務省」を含む政府に「圧力を強め」た(『産経新聞』13.12.18-14:21)ことも、同様の事例として挙げてよいでしょう。
そのうち(a)について、「計画案の中身への異論は党内にはな」いのだといい、総務会が反発したのは全く政府の対応つまり官邸主導や政高党低に対してであったことが明らかです。
(b)では高市政調会長が同月16日に加藤官房副長官のパーティーで「官邸とガチンコ勝負の場面」に言及して「政府側を強く牽制」、翌17日には松本国対筆頭副委員長とともに官邸を訪れて安倍さんに「直談判」していることや、政府でも田村厚労相が「党側の強い意向を受け」て麻生副総理兼財務相と折衝したことが知られますが、党のこうした姿勢は「自民党に太いパイプを持つ日本医師会など医療系の業界団体が…党に対する働き掛けを強めているからだ」とされます。
確かに、13年参院選で25万票を得て自民党から比例区で初当選した羽生田参院議員は日本医師会出身であるほか、内閣にあって党に同調した田村さんはHPによれば党政調の厚労部会長や衆院厚労委員長を、自ら薬剤師である松本さんもHPによれば党政調の厚労副部会長や衆院厚労委員長を歴任しているのであり、そのような厚労行政に通じた議員が党で影響力を発揮したことは、そうした展開の背景となったのでしょう。
また、高市さんと加藤さんはともに安倍さん側近であり、高市さんは(a)からまもない10日の国会質問での発言から政高党低を「容認するかのよう」(時事通信、14.2.10-21:10)だとされたこともありますが、しかし一方では両者は安倍さんに「厚生労働の専門家」(ダイヤモンド・オンライン「論争!日本のアジェンダ第5回」12.3.15)とも評されているのであり、(b)では党でその立場で行動したということになるでしょうか(なお診療報酬は12月20日18:55の『産経新聞』によれば「全体で0.1%引き上げ」られたものの消費増税によるコスト増で「「実質」の改定率は1.26%マイナス」で決着)。
高市さんの党での「厚生労働の専門家」としての行動については14日22:52配信の『毎日新聞』が、「医療関連法案を与党の了承後、政府が法案の一部を修正していたことが発覚」した際「「絶対看過できない」と抗議し、法案を原案通りに戻させる一幕もあった」と伝えるのも紹介できるでしょう。
そのように、安倍さん側近として政府に近いと同時に党四役の一人でもある高市さんが後者の立場をしばしば優先しているのには、政高党低に対する党内の不満が圧力として影響しているためかもしれません。

政高党低の限界が多くの分野で見られるようになってきているのは多分に人事の停滞によるものであって、必ずしも純粋に政策論によるものでないケースもあるかとも考えられるのであり、このタイミングで人事に言及したことは、それを宥める対症療法的な狙いによるものだったのでしょう。
安倍さんが28日夜に世耕官房副長官や石井副幹事長と会食して「人事について「通常国会が終わったらすぐか、臨時国会前のどちらが良いか悩んでいる」と述べ」(時事通信、同日23:42)たというのには、党を主導的に操縦しようとの意思がよく表れていると言えるでしょう。
そうだとすれば、次の人事は再三指摘しているように政高党低の是正が印象づけられる体制、具体的には派閥に立脚して閣僚や党役員を経ている重鎮が党四役に入った体制が構築されることになるのではないでしょうか。
第2次安倍政権は発足時に石破幹事長のほかに細田同代行、野田総務会長のほかに同代行として二階元総務会長、政調会長の高市さんのほかに衆院からは塩崎、棚橋両政調会長代理がそれぞれ置かれたように、無派閥の役員の下に派閥の実力者や閣僚経験者が就いて言わば分子(上)が分母(下)より小さい「真分数」のような従来とは逆転した体制が特徴でしたが、今度は実力者が順当に役員に就く「仮分数」のような構成になるのでしょう。

■さて、続いてある「入閣待望組からは改造を急ぐよう求める声が高まりつつある」との指摘については、脇参院幹事長が1月19日に「人事は組織を活性化していく上で極めて大事だ」と「閣僚の異動」に言及(『産経新聞』14.1.19-17:59)したのを例えば挙げられます。
「入閣待望組」すなわち閣僚を経ていない議員は現在、衆院5選以上が9選の逢沢元国対委員長をはじめ43人、参院3選以上が4選の世耕さんや3選の脇さんなど15人、参院では当選1回ながら衆院で5選以上している議員が衆院7選の木村元厚労副大臣、同6選の柳本元副幹事長、同5選の金子前総務会長代理の3人で、計61人。
冒頭の22日の『産経新聞』は党内に鬱積する不満の一因となっている人事のそうした「滞留」の理由として「民主党が3年3カ月にわたり与党だったこと」などを指摘していますが、未入閣議員のうち例えば8選の山口元首相補佐官は麻生さんの側近であり、先の自公政権が続いていて「麻生改造内閣」で閣僚となっていた可能性もあるとすれば(同じ麻生派所属でともに90年初当選、2歳年長の森元法相は麻生内閣で初入閣)、それは「民主党が…与党だったこと」すなわち自民党が野党となったことの影響を最も直接に受けた例だと言えるでしょうか。
また「民主党が…与党だった」間落選していた8選の宮路両院副総会長(民主党政権最末期12年11月に補選で勝利して国政復帰)と7選の坂本元国対筆頭副委員長や、逆に09年総選挙では当選して6選、野党時代に党役員を歴任したものの12年総選挙で引退した田野瀬元総務会長が入閣していないこと、先の自公政権期にも総裁候補だった谷垣法相にいずれも近く、自公政権が続いていて「谷垣内閣」があれば入閣していたとも考えられる9選の逢沢さんや7選の山本公一元総務副大臣、6選の遠藤元幹事長代理と今村副幹事長が未入閣であることも、類似のパターンでしょう(そのうち山本さんについては12年7月13日の『朝日新聞』朝刊が関係企業への国や地元愛媛県からの補助金について報じたことも影響するでしょうか)。
さらに、野党時代には古賀派として総裁派閥だった岸田派に、6選の未入閣議員の1/3に当たる4人、望月元国交副大臣、山本幸三元経産副大臣、宮腰元農水副大臣、竹本元財務副大臣が含まれることも無関係ではないでしょう。

ところで、入閣は一人一回と決まっているわけではないので潜在的な「入閣待望組」には閣僚経験者も含まれて、未入閣の61人を上回ると考えるべきかもしれません。
上述13日の総務会で首相答弁を批判したとされて党内の不満を体現した格好になった9選の村上元行革担当相と14選の野田元自治相、10選の船田元経企庁長官はいずれも閣僚経験者ですが、最後に入閣してからそれぞれ8年、14年、20年以上を経ているのであり、そのことからは、党内には言わば「再入閣待望組」とも言うべき層があることを連想・仮定できるでしょうか。
5年5ヵ月続いて一時代となった小泉長期政権の終わった06年9月を例えば一区切りとして、同時に成立した第1次安倍政権以後閣僚から遠のいている「再入閣待望組」は党内に16人(衆院議員は12人)おり、そのうち8選の中谷特命担当副幹事長や6選の棚橋さんと伊藤元金融担当相など50代の議員などは特に実質的な「入閣待望組」と見なすべき状況もあるいはあるのかもしれません。

なお、村上さんは13年11月26日の特定秘密保護法案の衆院本会議採決を退席している(『産経新聞』同日23:22)ほか、政権の原発政策にも批判的で25日の総務会では原賠機構法改正案の採決を退席(時事通信、同日13:12)していて確信的な遠心力も感じられます。
その理由は明確には不明ながら、今の大島派が高村派だった頃に派閥を退会していることから、安倍さんを支えている高村副総裁とは今は距離があるとすれば、それは一連の行動に符号するでしょう。
一方、野田さんについては13年9月末の復興特別法人税の前倒し廃止の議論で政府に歩調を合わせ、否定的だった党税調をその会長として抑えて一任を取り付けるなど政府に協力した(『産経新聞』13.9.26-11:10)ことを挙げられます。
安倍さんや甘利経済再生担当相の肝煎りの法人減税には党税調や財務省が否定的で、税調顧問の高村さんも安倍さんと同じ長州閥の党役員ながら1月29日に「今じゃないでしょ」(『日経新聞』同日11:34)と述べているように難航が予想されますが、復興法人税廃止の議論で野田さんの尽力により政府の方針が通ったことは今後の税制論議における政府と党の関係について大きな示唆となったはずであり、野田さんの手腕と協力を必要とする局面がまた訪れる可能性は高いとすべきでしょう。
また、船田さんは1月28日に党の改憲推進本部長に同代行から昇格していますが、前任で衆院の憲審会長を兼ねていた保利元政調会長は退任の理由として「中立性を保つため」としていたのであり(『日経新聞』同日19:18)、党の役職にある船田さんの発言にも、憲法論議において政府や党、国会を区別しようと意識した政策論としての側面があったと考えるのが自然であるかもしれません。
従って、13日の総務会で憲法問題ではたまたま同調した村上さん、野田さん、船田さんをその発言一つによって同列に位置づけるのはおそらく不適切なのであり、安倍さんとの距離感はむしろ三者三様であると考えるべきなのでしょう。

■安倍さんや菅官房長官が意識するのは以上のように「政高党低の是正」と「入閣待望組の処遇」であるかとは考えられるでしょうが、そのような党操縦は、都度述べているとおり15年9月の総裁再選への布石にもなるはずでしょう。
またそのように党への配慮は示されるだろう一方で安倍官邸の主導権を確保するためには「盟友や側近の起用」も必要なはずで、それらの三点が要諦になろうと言えるでしょうか。

ところで「与党内には…「政高党低」への不満も募っており、足並みの乱れも顕在化してきた」と伝える14日22:52配信の『毎日新聞』は、12日の谷垣グループの会合で谷垣さんと逢沢さんから「停滞する対中韓外交を念頭に」した「首相と距離を置く発言」があったことを伝えています。
谷垣さんは解釈改憲に関する安倍さんの上述の答弁については14日に「「首相がリーダーシップを取って…議論を進めていくことは十分あり得ることで、否定されるべきものではない」と述べ、首相を擁護し」(時事通信、同日12:08)ていますが、谷垣さんは閣僚であると同時に親中リベラルの重鎮でもあるのであり、12日のやり取りは後者、14日の発言は前者の立場でなされたものだったのでしょう。
それはすなわち中韓との外交の「停滞」は党内的には政権の不安要素であることを物語っていると言え、12日のやり取りを看過せずに党運営に敷衍すれば、次の人事においては対中韓外交も配慮されるテーマになる可能性を指摘できるでしょうか。
対中韓関係の悪化はアメリカの対日不信と日本の外交的孤立に繋がるため、その改善は安倍さんももとより模索していることであり、例えば岸田外相や中国通の高村さんを再任し、韓国通の額賀元財務相と河村選対委員長も要職に起用されれば、それは政権からの対外的なメッセージになるでしょう。
特に高村さんと河村さんは安倍さんと同じ長州閥の重鎮でもあり、外交人脈と併せて、その存在感は大きいでしょう。


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黄金カルテット

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■第2次安倍政権として初となる内閣改造と党役員人事が今夏、通常国会閉会後もしくはそれから秋の臨時国会開会までに行われるとされて、安倍さんの党操縦の成否と相俟って注目されます。
前記事ではその要諦として、安倍さんの総裁再選と連関する「政高党低の是正」「入閣待望組の処遇」「盟友や側近の起用」の三点と「外交的メッセージ」の四つが考えられるかとしましたが、それに基づけば、新たな内閣と党の顔ぶれは例えば以下のように考えることもできるでしょうか。

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《内閣》
首相:安倍晋三(町、7)
副総理兼財務相:麻生太郎(麻、11)
官房長官:菅義偉(無、6)
総務相:石破茂(無、9)☆
外相:岸田文雄(岸、7)
法相:脇雅史(参・額、3)☆★
経産相:茂木敏充(額、7)
農水相:西川公也(二、5)☆★
文科相:石原伸晃(石、8)☆
国交相:太田昭宏(公明、6)
厚労相:宮路和明(町、8)☆★
防衛相:江渡聡徳(大、5)☆★
環境相:小渕優子(額、5)☆
復興相:岩城光英(参・町、3)☆★
国家公安委員長:世耕弘成(参・町、4)☆★
経済再生担当相:甘利明(無、10)
沖縄・北方担当相:松山政司(参・岸、3)☆★
少子化担当相:橋本聖子(参・町、4)☆★
行革担当相:望月義夫(岸、6)☆★
首相補佐官:衛藤晟一(参・二、2[衆4])
首相補佐官:萩生田光一(町、3)☆
首相補佐官:礒崎陽輔(参・町、2)
官房副長官:加藤勝信(額、4)
官房副長官:中川雅治(参・町、2)☆
官房副長官:杉田和博(警察庁)

《党役員》
総裁:安倍晋三(町、7)
副総裁:高村正彦(大、11)
幹事長:河村建夫(二、8)☆
幹事長代行:山口俊一(麻、8)☆★
総務会長:額賀福志郎(額、10)☆
政調会長:塩崎恭久(岸、6[参1])☆
選対委員長:細田博之(町、8)☆
国対委員長:佐藤勉(谷、6)
総裁特別補佐:西村康稔(町、4)☆
〈参院〉
議員会長:溝手顕正(参・岸、5)
幹事長:林芳正(参・岸、4)☆
幹事長代行:吉田博美(参・額、3)★
国対委員長:伊達忠一(参・町、3)★
政審会長:山谷えり子(参・町、2[衆1])

*敬称略、括弧内は所属派閥/グループと当選回数
*☆は新たに起用、あるいは横滑りの閣僚や党役員など
*★は衆院5選・参院3選以上で未入閣の「入閣待望組」

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■一連の報道の嚆矢となった22日17時00分配信の『産経新聞』は「菅幹事長」「甘利官房長官」との観測を紹介していますが、これについてはどうでしょうか。
「菅幹事長」「甘利官房長官」という体制は、当ブログでも安倍さんの総裁復帰により第2次安倍政権発足が現実的になったのを受けて考えられたこととして12年10月23日の記事で既に載せており、それは第2次安倍政権を中長期的に検討するとき、なおあり得ると思われますが、今夏すなわち短期的にはまだ時機ではないと考えるべきなのかもしれません。
菅官房長官は日本維新の会やみんなの党との気脈を持って、特定秘密保護法や国民投票法改正といった「安倍カラー政策」に見られるような、第2次安倍政権に特徴的な「責任野党」構想を主導しているほか、政権発足直後から一連の日本郵政幹部人事を監督して郵政民営化への反動阻止に努めるなど官邸にあって辣腕を振るっていますが、日本版NSC創設(13年12月)のような安倍さんの志向する官邸機能強化の動きを着実に前進させるには、その中核となる官房長官の異動はまだあるべきではないと言えるでしょうか。
また、甘利経済再生担当相は例えば特命として経済再生の他にTPP担当を帯びているようにアベノミクスの司令塔としての役割があって、4月1日の消費税率8%への引き上げの反動を最大限低減させねばならないという課題があり、その後第2四半期の景況が10%増税(15年10月)の是非の判断(今年末)材料となる状況では、これも今夏というタイミングでは異動されるべきではないとの判断はあり得るはずでしょう。

ところで成長戦略で安倍さんがTPPとともに重視している法人減税についても甘利さんは積極的ですが、それに関連して、2月1日の時事通信の記事は安倍さんが「議長を務める経済財政諮問会議を舞台に検討を進め、6月に方針を示す考え」「政府税制調査会には2月に議論を始めるよう指示」ということとともに、それに否定的な意見も強い党税調が「政府主導で法人税論議が進みかねないと危機感を抱き、例年秋に始める税制論議を大幅に前倒しする」ことを伝えています。
ここにはもはや今の党内に明らかな「政高党低の限界」を見て取れますが、この法人減税に関する政府方針の示されるのが「6月」で、それから秋・年末に向けて議論されるという日程も、甘利さんが留任し政府にあって強力な旗振り役となるべきことを考えさせます。
党税調でそれぞれ会長と小委員長代理の野田元自治相と宮澤参院政審会長代理がともに旧大蔵省出身であるのと符合するように財務省も法人減税に慎重ですが、上の時事通信の記事は、その財務省を率いる麻生副総理兼財務相は「首相との全面対決を避けたい意向とみられる」と伝えています。
すなわち、麻生さんは「党税調幹部と足並みをそろえて慎重論を唱えてきた」ものの「首相の指示を受け、スタンスを微妙に修正し始め」て、1月28日の会見では「財政への悪影響」とともに「それなりのメリット」にも言及した、というのがそれですが、消費増税、法人減税ともでスタンスが正反対の安倍さんとは元来距離のある財務省にとって、安倍さんの盟友にして首相経験者である麻生さんが副総理を兼ねて臨んでいることは強力なプレッシャーとなっていることは間違いないでしょう。
また本田内閣官房参与が10%増税について1月15日に「判断を先送りすることもあり得るとの認識を示した」(ロイター、14.1.16-12:03)ように、それが全く既定路線ではない状況では、元来消費増税に慎重な安倍さんが仮にそれを「先送りする」場合、財務省を抑えるのには麻生さんの存在感と手腕は不可欠です。
安倍さんは、消費増税を実現させるなど民主党政権に大きな影響力を及ぼしてきた財務省を抑えることに首相復帰直後から腐心していると言え、超重量級閣僚としての麻生さんのほかに副大臣には麻生さん側近の山口元首相補佐官と麻生内閣で入閣していた小渕元少子化担当相という8選のベテランと閣僚経験者を充て、小泉政権の首相秘書官として「構造改革を支えた」(『PRESIDENT』09.8.31)元財務次官の丹呉内閣官房参与を官邸に起用、政権発足まもなく焦点となった日銀総裁人事では財務省の推す武藤元副総裁を早くから排していたとされますが、13年9月30日に「麻生人脈」の両副大臣から交代した古川財務副大臣が安倍さんの側近であることも、翌10月1日に8%増税が決定して財務省が「勝利」するのと同時というタイミングで安倍さんが財務省に踏み込み、釘を指したものだったかもしれません(もう一人の愛知財務副大臣も参院3選のベテラン)。
そのように、例えば法人減税問題で、安倍さん甘利さん菅さんは積極的、財務省を率いる麻生さんは否定的というのが原則的な構図だとしても、しかし麻生さんは組織的には財務省にあっても属人的には安倍官邸と連携していて近いのであり、政権に亀裂が生じるということはあり得ないでしょう。
安倍首相、麻生副総理兼財務相、菅官房長官、甘利経済再生担当相という政権中枢の「黄金カルテット」は、安倍さんが首相でいる限り、ポストの異動は一部あったとしても、一体的にあることが望まれ、また実際にそうなることでしょう。

■麻生さんはもちろん、菅さんと甘利さんも今夏はまだそれぞれ現職に留任するのが相応しいとして、では第2次安倍政権を中長期的に検討したときに考えられる「菅幹事長」「甘利官房長官」という体制はいつあり得るかと言えば、その可能性が一番高いのは15年秋すなわち安倍さんが今の総裁任期を満了して総裁選で再選された時であるとすべきでしょうか。
第2次安倍政権は、12年9月に総裁に、同年12月に首相に復帰した安倍さんが総裁にあれる18年9月まで、最長で5年9ヵ月(残り4年半)続くことになりますが、菅さん甘利さんともに政権を通じて要職にあることが期待されます。
菅さんがいずれ幹事長に異動するとしてそれが今夏だった場合、21日の記事で指摘したように任期は今の石破幹事長の残任期間である9月までの僅か2~3ヵ月となるため、9月の定例人事でも再任されて2期目も務めることになるのは確実でしょう。
ところで、1期1年の幹事長に同一人物が長期に就く例はあまりなく、01年4月に発足した小泉政権以降の13年間で幹事長はのべ11人、最も長く務めたのは山崎元副総裁で3期2年5ヵ月、次いで武部元幹事長と石原環境相が2期2年、今の石破さんが2期1年9~10ヵ月(常会閉会後まで在任した場合)で、他は1年以下。
それに鑑みれば、菅さんが仮に今夏幹事長に転じた場合、山崎さんのように3期(2年2~3ヵ月)務めても16年9月、異例に4期(3年2~3ヵ月)務めても17年9月には退任する公算で、今の党則的に第2次安倍政権の「限度」である18年9月には1~2年満たないことになります。
もちろんその後副総裁に昇格したり、内閣に復帰することも考えられますが、政権の支柱として党内外ににらみを利かすためには、党においては副総裁に「棚上げ」されるより幹事長にあった方が好都合でしょう。
また、内閣でなら特定の省庁に拠る一閣僚より官邸にある官房長官が最も適うとすべきですが、一旦閣外に去って再び官房長官に復帰するのは不自然だとすれば、今の官房長官ポストに「限界」までめいっぱい配し、それを迎えたときに幹事長に異動するのが、安倍さんにとっては菅さんという「強いカード」の最も合理的な切り方だと言えるでしょうか。
そして、その「限界」と重なるのが、政権の折り返し地点となる次期総裁選の行われる15年9月というタイミングで、すなわち菅さんは官房長官をそれまで2年9ヵ月在任して幹事長に転じ、それを3期3年務める、という見通しは十分成り立つと考えられるでしょう。
安倍さんは次期総裁選で再選(無投票の可能性も高いでしょう)されるものと思いますが、その場合直ちに内閣改造と党役員人事に踏み切るはずであり、「菅幹事長」「甘利官房長官」の体制はその時誕生することになるのではないでしょうか。

麻生政権で党選対副委員長を務めた菅さんは既出22日の『産経新聞』によれば「幹事長として、国政選挙を仕切りたい気持ちが強い」とされるとされますが、16年7月には参院選あるいは衆参同日選があるのであり、その10ヵ月前の15年9月というのは、菅さんが「選挙を仕切」るべく幹事長に就任するタイミングとして相応しいと言えるでしょう。
第2次安倍政権下の官邸では、民主党政権期の財務省に代わって、TPP推進や法人減税などの経済政策、原発維持などのエネルギー政策を共有する経産省が存在感を持ち、今井、柳瀬両首相秘書官を輩出、山田首相秘書官も総務省から経産省に出向していることが知られ、長谷川首相補佐官もOBですが、第1次安倍内閣で経産相を務めていて財界とも近い甘利さんは、それら政権中枢の「経産省ルート」の最大の後ろ盾であるかもしれません。
なお、党内第二派閥の額賀派の実力者として将来の首相候補の茂木経産相や、旧通産省出身の安倍さん側近で次世代保守派のリーダーとしてやはり将来の首相候補の西村内閣府副大臣も政権内で経産省ルートに連なると言えるでしょう。
官邸に存在感を持つ経産省と関わりのある甘利さんは、官邸を取り仕切る官房長官には、菅さんに匹敵する適任者であると言えるでしょうか。
それらの点からも、長期政権運営の上では人事が不可避の中で、安倍首相、麻生副総理兼財務相、「菅幹事長」、「甘利官房長官」という体制が例えば15年9月あるいは今夏など将来的に満を持して築かれたとしても、「黄金カルテット」によるそれの今と同じような実力と安定は、既に確約されて疑いないでしょう。


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それぞれの理由

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■前記事では安倍首相、麻生副総理兼財務相、菅官房長官、甘利経済再生担当相の4人からなる「黄金カルテット」について、第2次安倍政権の中枢として、通常国会閉会から臨時国会開会までの間に行われるとされる内閣改造と党役員人事でも今回はまだ異動のあるべきでないかと指摘しましたが、では他の閣僚や党役員ポストについてはどうでしょうか。
第2次安倍政権の長期政権となることを念頭に、前記事では安倍さんが再選を目指す15年9月の総裁選を見据えて「政高党低の是正」「入閣待望組の処遇」「盟友や側近の起用」の3つと、対米関係の悪化や日本の国際的孤立を招く対中韓関係を意識した「外交的メッセージ」の4点を重視されるだろうものとして挙げましたが、それには更に、後述するように「集団的自衛権シフト」が加えられるようになることもあるかもしれません。

党内の不満の対象になって既にその限界に達している政高党低を印象づけているのは、具体的には党四役の3人までが無派閥で、そのうち石破幹事長が古巣の額賀派を始めとする派閥勢力と距離があり、また野田総務会長と高市政調会長がともに主要閣僚を経ておらず四役ないし三役を務めるのが初めてであることなどでしょう。
それを踏まえれば、次の人事では重要閣僚や党役員を経ていて派閥に基盤のある重鎮や長老が党四役に連なるようになることは考えられるはずですが、前記事では幹事長に河村選対委員長、総務会長に額賀元財務相、政調会長に塩崎政調会長代理、選対委員長に細田幹事長代行をそれぞれ仮定しました。

河村さんは二階派所属、安倍さんと同じ長州閥で麻生内閣では官房長官を務めているほか、文科相や同副大臣を経ている文教系議員として教育再生を掲げる安倍さんや麻生さんに近いですが、統一地方選を来年4月に控えて、党で選対関係の役職を歴任してきた河村さんはそれを差配する幹事長に満を持して相応しいに違いありません。
ところで、出身派閥会長の二階元総務会長は親中リベラルの重鎮で13年11月に総務会長代行を退任してから執行部を離れており、国土強靱化の公共事業を求めて「強靱化の予算の結果が思わしくなければ、どんな結果になるか分からん」(『朝日新聞』13.12.4朝刊)と述べるなど、公共事業バラマキに否定的な安倍さんにプレッシャーを掛けるなど距離を感じられるのであり、それを抑えることを期して二階派にあって安倍さんと親しい河村さんが党役員に起用されることは考えられるでしょう。
現体制には二階派からの閣僚はいませんが、次の人事では、農水副大臣経験者で党TPP対策委員長としてTPP推進で党内をまとめて安倍さんを支えるのに尽力し、また第1次安倍政権期07年8月には勉強会「構造改革フォーラム」を率いて前月の参院選に敗れた安倍さんを激励に官邸を訪れたこともある西川政調副会長が農水相候補であるとすべきでしょう。

額賀さんは茂木経産相や新藤総務相、田村厚労相を輩出する党内第二派閥の額賀派の会長で、第1次安倍改造内閣で当時の津島派の実力者として財務相に起用されたほか、これまで政調会長や防衛庁長官を歴任している実力者で、その四役入りが叶えば、それには政高党低の是正を強く印象づける効果があるでしょう。
また、それにより、閣僚や党役員を歴任して首相候補となっている茂木さんを独自の首相候補とする額賀派(第二派閥)を、主流派の町村派(最大派閥)や麻生派(第四派閥)と併せて引き付けることができれば、それが総裁再選への大きなステップとなるのは間違いないのであり、前記事で茂木さん、脇さん、小渕元少子化担当相の3人と多めの入閣を考えたのも故のないことではありません。
額賀さんは実は第2次安倍政権発足に当たって、当時いち早く幹事長留任の決まっていた石破さんが鴨下幹事長補佐や小坂元参院幹事長といった側近とともに派閥を退会した経緯から額賀派と距離があり、それを牽制するためか、総務会長就任が取り沙汰されたことがありますが(時事通信、12.12.20-0:20)、閣僚経験者のベテランを中心になる総務会が紛糾することの多い近況に照らして、それを抑えるために重鎮の額賀さんを改めて総務会長に擬することは可能でしょう。

政調会長候補とした塩崎さんは岸田派所属、安倍さんと衆院初当選同期の盟友で第1次安倍内閣の官房長官を務め、第2次安倍政権の発足に伴って政調会長代理に起用されていますが、07年8月29日の『朝日新聞』朝刊によれば、実は安倍さんは早く第1次政権期07年8月の内閣改造・党役員人事で官房長官を退任した塩崎さんの政調会長代理への異動を構想。
しかしそれは前月の参院選敗北から間もなくて安倍さんの主導権が後退していたためか党の「拒否」にあって叶わず、実際には、当時安倍さんへの批判的な発言の目立っていた渡海元文科相が就任したのであり、12年12月に再び首相となった安倍さんが塩崎さんを政調会長代理としたのは5年4ヵ月越しの構想の実現だったことになります。
上の『朝日新聞』朝刊によれば塩崎さんは自身は官房長官を退任した当時の人事で、閣僚だった大田元経済財政担当相とみんなの党の渡辺代表の「留任を首相に進言」して容れられていますが、大田さんは現在規制改革会議や政府税調の幹部として安倍さん肝煎りの法人減税の旗振り役の一人となり、渡辺さんは23日の党大会で「保守政党」たることを宣言した「責任野党」みんなの党を率いて安倍さんを支える姿勢を鮮明にしていて、ともに安倍さんに政策的に近いのであり、塩崎さんも成長重視の経済政策や行革、保守政策、原発再稼働というエネルギー政策を安倍さんと共有していることが明らかで、党の政策論議を取り仕切る政調会長に相応しいと言えます。
「政高党低の是正」を印象づけるべく今は無派閥議員の多い党四役を派閥勢力に開放するとして、同時に安倍さんの主導権を確保しようとすればそれは政調会長ポストを巡ることになると考えられますが、党内左派の系譜の岸田派にあってしかし安倍さんに近い塩崎さんは、「派閥への配慮」と「党に対する主導権」を両立できる存在として、それに有力だと言えるでしょうか。
岸田派については前会長の古賀元幹事長の政権に対する批判的な発言が目立ちますが、閣僚や党役員を歴任して将来の首相候補となっている今の会長の岸田外相を再任して内閣に留め、第三派閥の岸田派を総裁選で安倍さん支持に糾合することが図られる可能性は高いでしょう。
また現在の岸田派出身の閣僚は岸田さんの他に林農水相、小野寺防衛相、根本復興相の4人、町村派と並んで最多で、次の人事では減ることも考えられますが、2人以上減る(半減)のは穏当でないとすれば、前記事に載せたように再任の岸田さんのほかに、「行革担当相」の望月元国交副大臣と「沖縄・北方担当相」の松山総務会長代理をそれぞれ想定するという形で3閣僚を輩出することとしたのも、そこに所以があります。

外交では日中、日韓関係が地域の不安定要因になり、日本の「右傾化」が米欧の不信を招いている現状がありますが、次の人事は、外国からは政権の対外的な方針や性質を物語るものとして注目されるはずで、政権もそれを国際社会からの懸念や警戒を緩和するためのアナウンスの機会とすることを意識するかもしれません。
その点、岸田さんは保守政権における党内左派の系譜の直系である外相として、対外的な印象でも安倍さんなどとバランスをなしているのであり、やはり交代されるべきではないと言えるでしょう。
党内には対中韓外交について左派の重鎮の谷垣法相やその側近でベテランの逢沢元国対委員長などからの批判がありますが、額賀さんや河村さんは韓国通であり、中国通の高村副総裁と併せて党上層部に揃えば、それは「外交的メッセージ」として党内やメディアからも評価されることになるでしょう。
政調会長ポストについても、それが安倍さんとは保守主義の部分でより共通する高市さんから、成長戦略や行革を共有する色合いの塩崎さんに代わるなら、それも外交問題を意識した人事の一環に位置づけられるでしょうか。

前記事ではいわゆる「入閣待望組」の閣僚を18人中9人想定しましたが、09年の下野や第2次安倍政権の方針で内閣改造と党役員人事の先送りが続いていることは党内の不安定要素となっており、「入閣待望組」を多数起用することは、党への配慮を印象づける措置となると言えるでしょうか。
例えば前記事で「厚労相」の宮路両院副総会長と「農水相」の西川さんはそれぞれの省の元副大臣、「防衛相」の江渡前同副大臣も第1次、第2次両安倍内閣の防衛副大臣、「行革担当相」の望月さんは党行革推進本部長、「沖縄・北方担当相」の松山さんは今の山本大臣と同じく外務副大臣経験者、「復興相」の岩城元参院政審会長は今の根本さんと同じ福島出身ですが、待望組を処遇する場合にもキャリアと対応したポストに充てられることになるのでしょう。
同じく待望組に数えられる山口元首相補佐官は幹事長代行に仮定しましたが、安倍さんが総裁に復帰して以降、幹事長ラインは安倍系と石破系が互い違いに任じられていて、次の人事でもそれが踏襲されるとして、幹事長に安倍さんと近い河村さんを想定するなら、麻生派所属の一方で石破さんに近い山口さんがその候補となるのは確かでしょう。

■次の人事は、安倍さん肝煎りの集団的自衛権の議論と大きく関連していく可能性もあるかもしれません。
安倍さんは集団的自衛権を行使可能とする解釈改憲の閣議決定を6月22日までの今国会中に行う構えですが、11日7:59配信の『産経新聞』は特に参院でそれに慎重な意見が強い「雰囲気」などから、党内に「「通常国会での行使容認は難しい状況になりつつある」との認識」があることや「政府高官の一人は通常国会後の閣議決定のタイミングを模索し始めた」ことを伝えています。
閣議決定が今国会中なら、それは人事の「前」ですが、もし今国会中に実現せずに臨時国会にずれ込む(閉会中になされる可能性は低いでしょうか)などならばそれは人事の「後」ということになります。
政府は日米集団的自衛権が双務化されればそれを年内に改定されるガイドラインに反映させる方針で、それが叶えば安倍さんの最重要視する日米関係上の画期的成果となるはずであり、できるならそうしたいとすれば、「人事→閣議決定」の順序になった場合、党内をまとめ、抑えるための「集団的自衛権シフト」の構築が、人事の主眼となるケースもあり得るのかもしれません。

安倍さんは2月28日夜にいずれも参院議員で側近の世耕官房副長官、ともに額賀派の吉田参院幹事長代行および石井副幹事長と会食していますが、集団的自衛権に慎重な発言を重ねている脇さんや、11日7:55の『産経新聞』がその「背後に…影がちらつく」とする青木元参院議員会長は参院額賀派出身の実力者であり、安倍さんや世耕さんが吉田さんや石井さんと気脈を通じることには、参院の慎重派に対抗する狙いがあったかもしれません。
参院の慎重派を懐柔して「集団的自衛権シフト」を敷くには、入閣待望組に数えられる脇さんの入閣や、現在3人の参院からの閣僚を前記事では5人としたように「参院枠」を拡大することが考えられるでしょうか。
また、慎重意見を受けて集団的自衛権問題を党内で議論する場として総裁直属の組織を新設することが決まっていますが、8日の『朝日新聞』朝刊はそのトップについて安倍さんは高村さんを「念頭」していることを伝えています。
長州閥の重鎮で安倍さんと親しく、大島派の前会長であり、外相や防衛相を歴任した高村さんは「「必要最小限度の行使は憲法の解釈変更で認められる」との考えで、首相の主張に理解がある」とされるほか、党では外交再生会議の議長を務めていて、安倍さんが集団的自衛権という外交・安保関連の新組織のトップに考えたとしても、怪しむに足りません。
ところで、閣議決定の後には自衛隊法の改正が必要であるため党総務会でも議論はなされるはずですが、防衛庁長官を二度務めている額賀さんを総務会長に想定するのや、高村さんと同じ大島派で安保政策通の江渡さんを防衛相に仮定するのは「集団的自衛権シフト」にも適うと言えるでしょうか。


(R)

花言葉は「栄光」

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+--【安倍晋三です。】--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+

今日は久しぶりにゆっくりと、資料等読んだり、小説を読み耽りながら過ごしました。
午前中は公邸。


良いお天気に誘われ庭に出たら、春の開花の先頭ランナーのジンチョウゲ(沈丁花)が咲き始めていました。
子供の頃、祖父の家の庭で兄達と花の蜜を吸った記憶がその香りとともに甦って来ました。

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■集団的自衛権を行使可能とする憲法解釈変更の閣議決定について、党内で慎重意見が相次ぐようになっています。
額賀派や岸田派、大島派が派閥単位で、また参院も独自に勉強会を開くというほか、17日の総務懇談会や、近く設置される総裁直属の新組織が議論の場となるとされますが、それらがどういう性質のもので、安倍さんとの距離感や集団的自衛権へのスタンスがどうであるかは、それぞれ異なるはずでしょう。

総裁直属の新組織の設置について、8日の『朝日新聞』朝刊は、6日に安倍さん自身が石破幹事長などと「協議した際に伝えた」と報じていて、官邸や執行部の主導的な動きであることは明らかでしょう。
そのトップには石破さんが就くことが15日に決定していますが、ところで、新組織の設置は高村副総裁の発案であることが既に明らかになっています。
すなわち11日7:59配信の『産経新聞』は、石破さんが「今国会中の閣議決定に影響を与える可能性がある」ことから「新機関設置自体に消極的だった」ところ、7日の役員会で高村さんが「設置を指示したため、首を縦に振るしかなかった」との経緯を伝えています。
同記事はまた、新組織で「公明党との関係を重視する議員や反安倍勢力から反対論が巻き起こ」ることや「時間稼ぎ」の動きのあることを「予想」していますが、それは安倍さんの目指す「今国会中の閣議決定に影響を与える可能性」であり、石破さんが「消極的」であった理由であるでしょう。
では、にも関わらず高村さんが新組織設置を首唱したのはどういう真意であるでしょうか。
高村さんは「閣議決定前に党内で改めて議論する必要があるとの認識を示した」(『産経新聞』14.3.7-12:43)という一方、「組織のトップを誰にするか」についていち早く「首相の念頭に…あるとみられる」「首相の主張に理解がある」(上出『朝日新聞』)などとされていて解釈変更に賛成であることが明らかであり、党への配慮の必要性を重視しているということなのでしょう。
それについて前者は、出身の大島派の前会長として党領袖の一人であり、また党内各派閥や公明党と気脈を通じているという立場、後者は長州閥の重鎮で安倍さんがかつて首相として窮地だった第1次安倍改造内閣でも入閣、外相や防衛相、党外交再生戦略会議議長といった外交・安保関連の要職を歴任しているというキャリアにそれぞれ即したものであると言えるでしょうか。
その点、前者からは高村さんが新組織設置で慎重な議論を主導したことは大島前副総裁が公明党の漆原国対委員長と近いのに符合するということ、後者からは20日に高村さんを講師に招いて行われる予定だという大島派の勉強会が種々の会合の中でも官邸・政府に近い動きだということも指摘できるでしょう。
高村さんの判断があくまで安倍さんを支える立場からなされていることはやはり明らかですが、しかしその「安全運転」の副作用によって閣議決定への「到着」が遅れる可能性も一方では付きまとうとすれば、前記事でも紹介したように、解釈変更について「政府高官の一人は通常国会後の閣議決定のタイミングを模索し始めた」(既出11日『産経新聞』)というのも当然の成り行きだとしてよいでしょうか。

前記事で指摘したように、「通常国会後」というのはすなわち臨時国会中、それも行使解禁を年末改定のガイドラインに反映させたいとすれば、その早い段階で閣議決定を実現しようと、安倍さんや菅官房長官は考えるかもしれません。
解釈変更は国会期間中の閣議決定で行われるとすれば、その前の党内議論とその後の自衛隊法改正の審議の時間を確保するためには、あるいは今の通常国会を延長するか、秋の臨時国会を早めに始めるか、でしょうか。
いずれにせよ閣議決定のタイミングが予定より遅れるなら、内閣改造と党役員人事が先に行われることもあり得るのであり、その場合「集団的自衛権シフト」の構築がその大きなテーマになることでしょう。
その時には高村さんの再任はもとより有力であるほか、処遇のある候補に浮上するのは第二派閥額賀派の会長で防衛庁長官経験者の額賀元財務相、大島派所属で防衛副大臣や衆院安全保障委員長を歴任している江渡前防衛副大臣などであろうかということは前記事に記したとおりです。
昨年12月28日の記事で紹介したように高村さんは普天間問題で沖縄選出の党所属議員に基地の県内移設を容認させるのに硬軟用いて尽力、額賀さんは1月の名護市長選の党候補一本化作業で同じく防衛庁長官経験者の中谷特命副幹事長とともに奔走していることには注目してよいでしょう。
ところで、最も困難なのは石破さんの処遇でしょう。
安保政策通で安倍さんと同じく集団的自衛権の行使解禁を目指す石破さんはこの問題のキーマンの一人で、幹事長再任を望んでいるともされますが、これまで国政選挙や上述名護市長選での候補者調整などの作業に判を呈されたことがあるほか、党の重鎮や長老、派閥勢力と距離があり、党内の不満解消が主目的の一つとなる次の人事で幹事長に再任される可能性は低いのかもしれません。
しかし石破さんは安保政策を共有しているのに加えて依然有力な首相候補なので次期総裁選を来年9月に控えて引き続き協調していくはずであり、総務相などの重要閣僚などで入閣することになるのでしょう。

■集団的自衛権の問題で安倍さんに近い実力者や組織については以上のように見られるとして、では否定的な動きの方はどうでしょうか。
それについては脇参院幹事長が早く7日に「何をするために集団的自衛権を行使しようとするのか、具体性がやや欠ける」(既出8日『朝日新聞』)などと発言していますが、「参院自民党は行使容認自体に慎重姿勢」(既出11日『産経新聞』)だとの指摘もあり、参院のハードルは高いとせざるを得ないようです。
参院額賀派出身の脇さんは主流派・非主流派関係の変転の激しかった野党時代の参院にあって長く国対委員長を務めて存在感を発揮した実力者で、昨年10月17日の代表質問では「ただすべきことはただす」(『産経新聞』同日21:43)と宣言していますが、11日7:55の『産経新聞』は集団的自衛権の問題でその「背後に」青木元参院議員会長の「影がちらつく」ことを指摘しています。
かつて参院を率いた青木さんは森元首相とも連携して小泉政権以降の歴代政権に影響力を持ってきましたが、同じ額賀派で青木さんの下で幹事長を務めてその「直系」と目されていた今は維新の片山参院議員会長が07年参院選で落選し、自らも議員会長を辞任。
その後任には額賀派ながら参院三役を経ていない「傍系」の尾辻元参院議員会長、次いで安倍さんなどの後援を受けて額賀派を含む三大派閥の推した谷川元参院幹事長を破って選出された中曽根前参院議員会長が続き(10年8月)、青木さんの「直系」が長く主流派から外れたことは従前都度述べているとおりです。
中曽根さんの任期中にはその抜擢した役員や人事案が覆されるなど三派の巻き返しが起こり(11年10月)、その後任に三派の一角の岸田派から今の溝手参院議員会長が就いた(13年7月)ことで参院の趨勢がかつての秩序に回帰した観は強まりましたが、青木さん「直系」の脇さんの台頭はその流れに連なるものだと言えるでしょう。

ところで、脇さんを中心とする参院額賀派の吉田参院幹事長代行と石井副幹事長が、2月28日夜に安倍さん及び側近の世耕官房副長官と公邸で会食していることには、注目せねばならないでしょう。
両者について、安倍さん側近の山本沖縄・北方担当相は上述11年10月の参院役員人事の混迷からまもない同月21日のブログ記事でそれぞれ「小坂幹事長交代の流れを作った」「2度に渡って「敵方の切り込み隊長」を務めた」と記していて(しかし「2人とも「敵ながらあっぱれ」だと思った」とも記してむしろ好評もしています)、両者が三派の中心であったことが知られ、従って脇さんに近いことも窺われます。
当時は同月13日の総務会が村上元行革担当相や野田元自治相、船田元経企庁長官の首相答弁批判で紛糾したのなどを受けて安倍さん周辺が今夏の人事を示唆し始めていた頃で、28日夜の会食はそれとの関連を思わせますが、別の可能性もまたあるのかもしれません。
石破さんはそのちょうど1ヵ月前の1月28日に「憲法解釈を変更する時期に関し、今国会中にこだわらない考えを示し」(『産経新聞』同日19:55)ていますが、これはあるいは重要で、もし安倍さんも同じように既にその段階で「今国会中にこだわらない考え」も内心秘めて、例えば臨時国会中の閣議決定という日程も視野に入れていたのだとすれば、吉田さんや石井さんと接触したのには、集団的自衛権に関する参院側のスタンスを打診したり、両者と気脈を通じて参院への布石としようとの意図があったかもしれません。
安倍さんは小泉政権の幹部として、今回と同じように総務懇談会の開かれた郵政民営化の法案が参院で否決されたのに直面しているほか、上述のような情勢の変化で安倍さんと参院執行部の距離は中曽根さんが議員会長だった頃より開いているとすれば、注力する集団的自衛権の問題で参院に対する根回しを早めに図っていたとしても、決して不自然ではないでしょう。

■本文後半で岸元首相の家の庭の沈丁花の思い出が述べられていますが、それは渋谷の南平台にあった岸邸のことでしょうか。

評伝『岸信介』(原彬久、岩波新書)は、首相として取り組んだ1958年11月の警職法改正の失敗が「岸の党内指導力を決定的なまでに損なってしまっ」て非主流派の「反岸」の動きを惹起し、その後、安保改定作業で日米行政協定の「同時大幅改定」を要求して「政権首脳部の調印日程…を挫折させて岸政権打倒にもっていこうとする動き」などが続いた流れを紹介しています。
非主流派集団が形成されて政権基盤の盤石でなくなった岸さんは、新安保条約は自然成立させたものの改憲までは実現させられずに60年7月に退陣していますが、岸さんの首相として歩んだ道は今、その遺志を継ぐ安倍さんの政権運営に多くのことを示唆している教訓なのかもしれません。
岸さんは警職法改正断念の2ヵ月後、翌59年3月予定だった総裁公選を「情勢の有利な」1月に前倒し、これを制して再選されて局面を転換しています。
岸さんはそれにより党からの信任を再確認して政権を継続する体力を回復したと言えますが、安倍さんも来年15年9月には総裁任期満了を迎えて、2期目を目指す考えであるはずであり、総裁選を経て足元の与党を改めて掌握し、改憲に臨むことになるのでしょう。
政権の支持率が高く、有力な首相候補である石破さんが集団的自衛権問題で歩調を合わせているなどの現状では、次期総裁選やそれ以前に、安倍さんに代わる実力者が現れる可能性は低いため、次期総裁選を前倒すという手法が取られることはほとんど考えられませんが、安倍さんのこれまでとこれからの道が岸さんの辿った道と少なからず重なっていることはしばしば感じられるところです。
また、岸政権期に当初は「反岸=反安保改定」だった池田元首相は59年6月の人事で通産相として入閣して以降それを「引っ込め、少なくとも岸の期待を裏切らない程度に協力的になっていったという事実」も紹介されていますが、これは、現在集団的自衛権に否定的な実力者を懐柔すべく次の人事で取り込むべきことを暗示していると言えるでしょう。

ところで、沈丁花の花言葉は「栄光」だということですが、これは何かの予兆でしょうか。


(R)
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